【岩手】旅行再開やテイクアウト需要の拡大で宿泊・飲食サービスが求人増

地域シンクタンク・モニター調査

7~9月期の経済動向は、各経済指標で改善がみられたほか、景況調査の結果も改善を示していることから、【やや好転】となった。10~12月期の見通しは、個人消費は引き続き回復が見込まれるものの、生産活動が一進一退の動きになるとみて、【横ばい】としている。雇用については、7~9月期は、旅行再開やテイクアウト需要の拡大などにより、特に宿泊・飲食サービスで求人が増加していることから、【好転】と判断。10~12月期の見通しも、人手不足感が強まるとみて、【好転】の見込みとしている。

<経済動向>

売上高の景況判断がプラスに改善

7~9月期の岩手県の経済指標をみると、新設住宅着工戸数と公共工事請負額は低調となったものの、生産活動では鉱工業生産指数が143.2で前期比プラス5.7%と上昇した。小売業主要業態の販売額は6業態中4業態で前年を上回ったほか、新車登録・販売台数もプラスに転じており、モニターは全体として【やや好転】と判断した。

モニターが実施した「岩手県内企業景況調査」をみても、7~9月期の売上高BSIがプラス1.1(前期比9.7ポイント上昇)、経常利益BSIがマイナス23.7(同0.4ポイント上昇)で、ともに改善している。

生産活動は一進一退の動き

モニターが実施した同調査での、先行きの業況判断BSIはマイナス35.3(現状比4.9ポイント低下)となっている。業種別にみると、製造業は現状比5.2ポイント上昇のマイナス16.9と改善する予想となった。一方、非製造業は同9.8ポイント低下のマイナス44.2で、建設業が大幅な悪化となるほか、卸・小売業と運輸・サービス業も悪化の動きとなっている。

モニターは10~12月期の地域経済について、「個人消費は引き続き回復の動きが見込まれる」ものの、「新設住宅着工戸数や公共工事請負額は弱含みになる」とみている。また、「生産活動も一進一退の動きになる」と予想し、総合的な判断は【横ばい】とした。

<雇用動向>

新規求人倍率が2期ぶりに前期を上回る

7~9月期の雇用指標をみると、有効求人倍率は1.32倍(前期比0.01ポイント上昇)でわずかだが前期を上回っている。新規求人倍率は1.99倍(同0.09ポイント上昇)で2期ぶりに前期を上回った。

新規求人数(原数値)を業種別にみると、建設業などが沿岸部での公共工事の減少やウッドショック等の建築資材の高騰による受注減少などから、低調となった。

一方、宿泊・飲食サービス業では新型コロナの感染拡大が続いているものの、修学旅行の再開やイベント開催により一般客の利用が増加したことなどからプラスとなった。宿泊業では、帰省や観光などによる個人客の回復のほか、合宿などによる団体客の受入れを背景に求人が増加。飲食サービス業では、テイクアウト専門店などでの需要拡大や外出機会の増加による客足の回復がプラスとなった。

このように雇用統計で改善がみられるほか、業況が回復している業種もあることから、モニターは7~9月期の雇用を【好転】とした。

人手不足感はさらに強まる見通し

10~12月期の見通しについても、求人数が増加傾向にあり、有効求人倍率および新規求人倍率は前期の水準を上回るとみて【好転】とした。

モニターが実施した「岩手県内企業景況調査」の雇用人員BSIの先行き判断をみても、マイナス38.6で現状(マイナス34.1)から4.5ポイント低下しており、不足感がさらに強まる見通しとなっている。産業別にみても、製造業が現状比3.4ポイント低下のマイナス33.9、非製造業も同5.2ポイント低下のマイナス41.0で、いずれも不足感が強まるとみられる。

(調査部)