若者が運動に参加しやすいよう、SNSによる積極的な発信やエンタメ要素の導入も
 ――連合が「若者とともに進める参加型運動」をスタート

連合の取り組み

連合(芳野友子会長)は、共感が得られる運動をつくっていくため、若者にも参加してもらえるような運動の構築を模索している。2022年度からは、活動の柱に「若者とともに進める参加型運動」を据え、7月には若者とのパネルディスカッションなども盛り込んだキックオフイベントを開催した。6月に中央執行委員会で確認した考え方では、若者が意見を反映しやすい環境づくりやSNSによる積極的な発信などの基盤整備と、エンターテインメント要素の導入などのイメージアップの両輪に取り組むと表明している。

けっして社会運動に関心がないわけではない若手世代

連合が2021年4月に公表した「多様な社会運動と労働組合に関する意識調査2021」(2,000人が回答、インターネット調査)によると、10代の69.5%、20代の53.8%が今後、社会運動に参加したいと回答し、若い世代はけっして社会運動に関心がないというわけではなかった。しかし、社会運動に参加したことがあるかと聞くと、参加したことがある人の割合は10代では35.5%、20代では23.8%にとどまった。しかも、この調査の社会運動の定義には、募金活動や署名運動なども含まれ、デモ行進などの「デモンストレーション型」だけの参加割合でみると、10代は3.0%、20代は2.5%と、大半が、参加経験がない状況だった。

こうした状況をふまえ、連合は、2021年9月の中央執行委員会で確認した「2022連合アクション」(運動方針にもとづく具体的な活動の柱)で、社会運動に参加意向があってもできていない10代、20代の思いを受け止める運動を推進していくことを確認。まず、10代・20代層が「解決したい社会課題は何か」を調査して選定することをステップ1とし、ステップ2として、10代・20代層に共感を得られる発信を行い、運動の参加につなげ、ステップ3として運動の結果を可視化し、社会に向けて発信する方針を打ち出した。

同アクションにもとづいて「Z世代が考える社会を良くするための社会運動調査2022」を2021年12月に実施し、2022年3月に結果を公表。また、「新しい運動スタイル」のあり方について、構成組織(加盟産別)と地方連合会の若手組合員126人との意見交換を2022年2月~4月にかけて行った。

若者からは「年の近い世代から呼びかけたほうが共感を得やすい」などの意見

「Z世代が考える社会を良くするための社会運動調査2022」(15~29歳の男女1,500人が回答)の結果では、Z世代(15~29歳)の87.0%が「関心のある社会課題がある」と回答し、若者の社会課題に対する関心は高いことを把握。さらに社会課題に関心をもったきっかけを聞くと(複数回答)、「テレビで見た」との回答が55.1%で最も高く、「ネット記事を見た」(38.0%)、「SNSで見た」(35.0%)との回答がそれぞれ3番目、4番目にあがり、テレビ、ネット、SNSが媒体ツールとして有効であることを確認した。

産別・地方連合会の若手組合員と行った意見交換では、若者に共感される工夫や、労働運動に気軽に参加できるようにすること、知識がなくても理解できるようにすることなどを求める多くの意見を得た。

連合がまとめた資料によると、若者へのアプローチ方法として、「年の近い世代から呼びかけたほうが共感を得やすい」との意見が多く、「若者にとって身近なテーマで呼びかける」「若者がやりたいことや困っていることをサポートする」ことなどが若者の共感を得るうえで重要との意見があった。また、「SNSでの発信に重点を置く必要がある」と、SNSの積極的な活用を促す声が多かった。

気軽に運動に参加できるようにするためには、「イメージ戦略」を行うことや、「#ハッシュタグ運動」のように「顔を出さず」に「気軽に参加」できるようにすること、「楽しいと思えることが肝」などの意見がみられた。知識がなくても参加できるよう、事前に「目的を伝える」ことや、「重要なことにフォーカス」して、知識がなくてもわかるようにするなどの声も聞かれた。このほかでは、「参加後の成果がわかる」ことが必要などといった意見があった。

参加型運動の基盤整備としては若者意見を反映しやすい環境やSNS発信を推奨

こうした活動をふまえ、連合は今年6月、「若者とともに進める参加型運動」を進めていくうえでの若者へのアプローチ方法などの考え方を整理し、中央執行委員会で確認した。

その内容を紹介すると、まず、「アプローチの前提となる基盤整備」について論じており、その具体策として、①若者が意見を反映しやすい環境の実現②SNSによる積極的な発信③若者に対する労働運動の理解促進④地域・学校と連携した次世代を担う若者への労働運動の理解活動――を提言した。

4つの柱それぞれについて、取り組み例を示し、「若者が意見を反映しやすい環境の実現」では、若者が企画運営に参加できる仕組みの構築や、若者に対する定期的なヒアリングの実施、若者がやりたいことや困っていることをサポートできる体制の整備をあげた。

「SNSによる積極的な発信」では、各SNSの特徴と目的をふまえた現ツールの精査と発信、#ハッシュタグ付与など検索されやすい工夫を掲げている。

「若者に対する労働運動の理解促進」では、セミナーなどを通じた理解促進や、動画などの学習機材を作成し、ホームページやSNSを使って労働運動の目的や取り組みなどを発信することを提案している。

「地域・学校と連携した次世代を担う若者への労働運動の理解活動」では、労働組合イベントへの子どもたちの参加促進や、出前講座や職場見学などによる働くことやワークルールを学ぶ機会の提供、社会貢献活動などを通じた「頼れる存在」としてのアピール、を提示している。

運動のイメージアップとして、楽しむ要素やわかりやすい言葉も必要

「若者とともに進める参加型運動」の考え方は、「アプローチの前提となる基盤整備」の次に、「労働運動のイメージアップ」について論じている。

その具体的な方法について、①運動の意義・目的の明確化と周知②参加方法の多様化と参加感の醸成③エンターテインメント要素の導入④わかりやすい言葉と学べる工夫⑤運動の経過・成果の適宜共有――の順に示した。

「運動の意義・目的の明確化と周知」からみていくと、運動の目的やどのようなかたちで行うのかが「参加者を含めて理解されないまま実施すると、意義が感じられず、労働運動全体のイメージにも影響を及ぼす」ため、「目的や意義の明確化と発信を行う」と強調。取り組み例として、目的の明確化や与える影響などをふまえた運動の見せ方の検討や、運動の目的と意義の発信・周知(SNSなどでの事前発信など)、女性や若者、外国人など多様な仲間が参画する運動の検討、を列挙している。

「参加方法の多様化と参加感の醸成」では、より多くの人に参加してもらうため、多様な参加方法による参加者数の増大や、参加方法によらない双方向コミュニケーションの実現、「インスタ映え」など、参加者からの投稿による波及効果の実現、をあげる。

「エンターテインメント要素の導入」では、主催者・参加者ともに「楽しむ」ことができる企画づくりに積極的にチャレンジするとして、「プライベートでも視聴や参加したいと思えるような取り組みの工夫」「対象となる層に応じた取り組みの検討」「エンターテインメント要素を加味した労働組合・労働運動の理解促進」を例示している。

「わかりやすい言葉と学べる工夫」では、「連合から発信される文書や言葉は、若者にとって『理解することが難しい』との声も多い」ことをかんがみ、「必要な知識が学べるような工夫(ホームページやSNSへの情報掲載)」「簡潔明瞭で要点を絞った情報提供と詳細情報のリンク」をあげている。

「運動の経過・成果の適宜共有」では、「運動の手応えや成果、経過状況などを継続的にフィードバックすることで、参加意欲の向上につなげる」と述べて、「事例などを交えた、運動継続の重要性やゴールなどの明示」「特設サイトなどへの、目的、行動、状況、結果など、一連のプロセスの掲載」「小さな成果でも動きがあればフィードバックする機会を設ける」ことを取り組み例として示した。

7月29日にはキックオフイベントを開催し、若者と討論

連合は「若者とともに進める参加型運動」をスタートするキックオフイベントを、今年7月29日に開催。社会運動をけん引する若者や、労働組合の青年メンバーを交えて、パネルディスカッションを行った。なお、今年1月には、労働運動を担う組合リーダー育成を目的として、構成組織、地方連合会から参加した若者が様々なカリキュラムから学ぶ「Rengoユースター・カレッジ」も開校し、連合内部の次世代のリーダー育成についてもテコ入れを図っている。

今後は、連合本部、構成組織、地方連合会で、いま紹介してきた「考え方」の共有に努め、好事例や先進事例を展開していく考えだ。

(調査部)