若手組織のある組合の大半が、以前に比べ活動が停滞と回答
 ――近年の若手組合員の組合活動への参画状況

ビジネス・レーバー・モニター特別調査

JILPTが調査モニターを委嘱している労働組合に対し、「近年における若手組合員の組合活動への参画状況」を特別テーマとしてアンケートを行ったところ、若手の活動組織がある企業別組合の大半が、以前より活動が活発でなくなっていると答えた。若手の活動組織の有無にかかわらず、若手組合員の組合活動への参加における課題を聞くと、組合役員になることや組合活動そのものへの興味・関心が薄れていることが上位にあがった。

調査に回答したのは、企業別組合は13組織で、すべて建設・製造業の企業の組合。また、13組合すべてがユニオンショップ協定を会社側と締結している。産別も13組織から回答を得ており、内訳は製造業の産別が7組織、非製造業の産別が6組織となっている。

<企業別組合の回答結果>

13組合中、8組合に若手組織があり、エリア・ブロック単位で設置が最多

まず、企業別組合の回答結果をもとに、「青年部」や「ユース部」、「青年協議会」などの若手・青年組織の設置状況をみていく。

若手組合員だけで活動する活動組織や活動単位(以下、若手組織)があるかを尋ねると、「ある」が8組織、「ない」が5組織で、「ある」と回答した組合がやや多かった。なお、本問では、若手組織について、組合の規約、活動方針、活動スケジュール、予算計画などの裏付けがあるものに限るとの注釈を付け、若手組合員がすべて自費で参加する散発的な懇親会やレクリエーション活動などは含まないことにしている。

若手組織があると回答した8組合に、若手組織の設置単位について聞くと(複数回答)、「エリアやブロック単位」を回答したのが6組織、「全社横断的」および「職場単位」が4組織、「その他」が1組織で、「エリアやブロック単位」の回答が最も多かった。なお、「その他」については、企業連の組織形態をとっている組合であり、企業連内の単組ごとに設置しているとの自由記述回答があった。

活動内容では、「研修会・勉強会」「ボランティア活動」がトップ

若手組織があると回答した8組合に、若手組織の活動内容としてどのようなものがあるか聞くと(複数回答)、「研修会・勉強会」および「ボランティア活動」の回答数が7で最も多く、「スポーツ活動・大会」が6組織で続き、「若手以外の組合員や役員との交流」「視察的旅行(日帰り含む)」「選挙の手伝い」「上部団体の活動への参加」がそれぞれ4組織、「懇親的旅行(日帰り含む)」が3組織、「食事会や飲み会」が1組織という結果だった。

若手組織があると回答した8組合に、近年の若手組織の活動状況の変化について聞くと(コロナの影響は除いて回答してもらった)、「以前より活発ではなくなっている」と回答したのが6組合と大半で、「以前と変わらない」が2組合、「以前より活発になっている」がゼロとなっており、労働界にとってはやや憂慮すべき状況が本回答結果から浮き彫りとなった。

近年の若手組合員の組合活動への参加について、どのような課題があるか、13組合すべてに尋ねると(複数回答)、最も回答が多かったのが「組合役員になることへの興味や関心が低い」(12組合)で、「組合活動そのものへの興味や関心が低い」(11組合)がこれに続き、そのあとは「リモートワークが増えて、役員などが若手組合員と直接に接する機会が持てない」(9組合)、「組合の会議などでの発言が少ない」(7組合)、「組合の集会(春闘集会など)への参加率が低い」(5組合)、「組合の機関会議(執行委員会、組合員総会など)への出席率が低い」および「組合の懇親の場への出席率が低い」(それぞれ4組合)、「職場で組合に相談する人の数や相談回数が少ない」(3組合)、「その他」(1組合)と続いた(図1)。なお、「その他」の自由記述は、「業務外の時間を使うことへの抵抗が強い」という内容。「特に課題はない」と答えた組合は1つもなかった。

図1:近年の若手組合員の組合活動への参加について、どのような課題があるか(複数回答)
(N=13)

画像:図1

若手の参画を促す取り組みを行っているのは13組合中9組合

13組合すべてに対し、若手組合員による組合活動への参画を促すための取り組みを行っているかどうかを尋ね、「行っている」と回答した組合に対し、その具体的な内容を自由記述してもらった。すると、9組合が「行っている」とし、4組合が「行っていない」と回答した。

記述があった具体的な内容を整理すると、大きく、「交流の促進」「研修」「コミュニケーション面での工夫」「若手主体の活動機会」に分類することができた。

「交流の促進」に向けた活動としては、「楽しく組合活動に参画してもらうことに加えて、単組間の交流を深めるために、交流会を夏時期に開催。開催場所については、受け入れ可能な事業拠点を訪問し、工場見学や近隣にある外部施設を見学」「様々なイベントに積極的に声かけを行う」「行事参加者による地道な声かけ」「近隣支部合同行事によるイベントの活性化」「若手層に絞った懇談会の開催」といった内容がみられた。

また、「年に一度、他企業連の青年婦人部との交流会を実施。開催場所は隔年で互いの事業拠点を訪問・見学し見聞を広げるとともに、交流を深める」「他業種の組合員との出会いの場を提供するため、懇親の場を開催」といった、組織外との交流の機会を設ける取り組みもみられた。

研修では、入社時や3年目に開催するなどの方法

「研修」を活用している例では、「入社3年目までの新入組合員を対象に、新入組合員研修を行っている。3年目までに計3回の研修」「組合員3年目教育を継続して実施する」「全支部横串を刺した若手リーダー研修会の継続実施」「新入組合員を対象とした少人数での活動説明」といった回答があった。

若手との「コミュニケーション面での工夫」を行っている例としては、「新入社員向けにTeamsにてチャットルームを開設し、数カ月にわたって継続的に役立ち情報を提供」「LINEを用いた情報発信」「イベント・セミナーを企画する時、年代別にアンケートを収集してターゲットを定めた内容を検討。ものによっては若手組合員向けのイベントを開催」「若い執行部からの意見収集、企画立案」といった内容がみられた。

若手が自ら手がける活動を設け、スポーツイベントを行う組合も

若手が主体の活動を展開している組合からは、「若手組合員が自ら手がける活動を設け、職場単位で役員を選任、職場単位、支部・事業所単位、全国単位それぞれにスポーツイベントなどの活動を行い、組合活動への理解促進、職場の活性化、組合役員としての人財育成を目指している」「若手企画でレクリエーションを行っている」との回答があった。

このほかでは、「各支部のリーダー集会で情報交換し、良好事例を自組織に取り入れる」ことを行っている組合や、「執行部の若返り」(現在は平均約37歳)を図っている組合があった。

<産別組合の回答結果>

若手組織の活動は研修会が中心

産別組合にも、若手組織の有無を尋ねたところ、「ある」と回答したのが4組合、「ない」が6組合、「その他」が3組合で、企業別組合の回答結果とは異なり、「ない」組合のほうが多かった。なお、「その他」では3組合すべてから自由記述に具体的な記載があり、「企画から若手が手がける活動体は中央本部にはないが、県域の協議会には活動単位がある」「専門部はないものの組織部と女性本部専従役員で対応している」「上部団体の地方協議会に参加配置している」との内容だった。

若手組織がある4産別の、若手組織の活動内容についての回答結果をみると(複数回答)、「研修会・勉強会」が4組合、「スポーツ活動・大会」が2組合、「上部団体の活動への参加」が2組合で、「若手以外の組合員や役員との交流」「視察的旅行(日帰り含む)」「懇親的旅行(日帰り含む)」「食事会や飲み会」「ボランティア活動」「選挙の手伝い」「その他」の選択肢には回答がなかった。

同じ4産別に対して近年の若手組織の活動状況について尋ねた結果をみると(コロナの影響除く)、企業別組合の調査結果とは異なる傾向となっており、4産別すべてが「以前と変わらない」と回答した。

リモート増加で若手と接触機会がもてないとの加盟組合からの報告も

近年の若手組合員の組合活動への参加について、加盟組合から聞く情報としてどのようなものがあるか聞いたところ(複数回答)、「組合役員になることへの興味や関心が低い」「組合活動そのものへの興味や関心が低い」「リモートワークが増えて、役員などが若手組合員と直接に接する機会が持てない」がそれぞれ7組合で最も多く、次いで「組合の集会への参加率が低い」(5組合)、「組合の懇親の場への出席率が低い」(3組合)、「組合の機関会議への出席率が低い」「その他」および「わからない・把握していない」(それぞれ2組合)、「職場で組合に相談する人の数や相談回数が少ない」(1組合)、「組合の会議などでの発言が少ない」(回答組合なし)の順だった(図2)。産別では、リモートワークの増加に対する懸念材料も浮上してきている様子がうかがえる。

図2:近年の若手組合員の組合活動への参加について、加盟組合から聞く情報(複数回答)
(N=13)

画像:図2

産別組合に対しても、若手組合員による組合活動への参画を促すための取り組みを行っているかどうかを尋ね、「行っている」組合には、取り組みの具体的な内容を自由記述してもらった。「行っている」と回答した組合は10組織あった。

最も多かった取り組みの種類は、「交流の促進」に関するもの。

ある産別(非製造)は「6つの地連(地方連合会)で加盟組合の交流、産別活動に参画する機会として、業種別の交流会を開催している」とし、別の産別(非製造)からは「交流集会など、女性の参加者には男性の参加者より若干、参加費を安くするなどのインセンティブを付けている」との回答があった。「若手組合員を対象とした加盟組合員同士の交流企画を定期的に実施。若手組合員の意見を産別の取り組みに反映させるため若手組合員座談会を実施している」産別組合(非製造業)もみられた。

対話活動のなかで若手とのコミュニケーションを図っている産別(製造)もあり、全組合員への対話活動のなかで、「お互いの意思疎通をはかり、何でも気軽に相談し合える関係の構築による信頼感の醸成、組織力のさらなる強化のため、すべての組合員に労働組合の活動や産別の運動を浸透することを目的に、継続した取り組みを展開している」のだという。

中央本部で若手を対象とした研修を実施

研修や勉強会を実施しているとする記述も目立った。

ある産別(非製造)は、「中央本部で若手を対象とした研修会を実施」するとともに、「今年度から組合役員もしくは組合員を対象とし、オンラインセミナーを毎月1~2回程度開催するとした」と回答。セミナーの内容は、「組合員の仕事や生活に資する内容、組合役員の組合活動に資する内容を意識し、コミュニケーションスキル、文書の書き方、情報発信・宣伝、賃金調査結果の見方、高年齢者雇用の制度設計などを取り扱う」もので、時間は1時間程度を基本に従来のセミナーよりもコンパクトにすることを意識したとしている。

別の産別(非製造)では、対象は若手組合員のみではないものの、「加盟組織の新任執行委員を対象とした勉強会を開催している」と回答。内容は、労働組合としての基礎知識の習得、自組織や加盟組織内での課題に関するディスカッションなどで、「昨期までは期初のみの開催だったが、今期は期の後半においてオンラインを活用したフォローアップの座談会を計画。活動全体を通しては、UX(ユニオントランスフォーメーション)に取り組んでおり、コロナ禍で若手を中心に浸透しているオンラインを活用して、セミナーの配信、広報誌のオンライン配信、SNSの活用を行っている」とした。また、この産別では、地方組織において、コロナ禍で実施できていなかったレク活動を徐々に再開。「組合にまだ慣れていない人も積極的に参加できる環境を醸成している」という。

また別の産別(製造)は「本部として年に一度、青年委員の代表を招致し、研修会などの取り組みを行っている(コロナ禍においては開催を見送っている)」と回答。日々の活動などについては、各地方協議会内で取り組みを進めているとした。

若手を含め多様な組合員を参画させる行動計画策定を指示

プロジェクトや行動計画を策定した産別もある。

ある産別(製造)は、2022年8月末に、産別内に男女平等プロジェクトチームを立ち上げたと回答。「男女自らが考え、その意見を産別活動、とりくみに活かすチームとして活動し、男女平等プロジェクトチームが産別の身近な組織として、情報交流やコミュニケーション活動を展開することで、組織活動に対する参画意識が高まり、組織の強化につながることを期待している」とした。

別の産別(非製造)では、「『組織強化・拡大』の着実な前進に向けた中期取組み方針」において、全加盟組合に「組織強化の推進のための行動計画」の策定を求めており、中期方針は若年組合員に特化したものではないものの、「多様な仲間の組合活動への参画」の観点から、全加盟組合に対して「行動計画」を策定するよう求めた。行動計画は、▽性別や年齢、雇用形態等に関わらず、多様な組合員が組合活動に参画しやすい環境づくりを進める▽多様な組合員が気軽に発言・意見交換できる場を設定する▽多様な組合員の興味・関心を踏まえたセミナー・研修会等を開催する▽親しみやすい広報活動を行う――などを盛り込むことにし、取り組みの進捗状況もフォローしていくという。

このほかでは、「地方本部定期大会へ青年女性委員会委員長の出席を促し、青年女性委員会の活動報告を行っている」(製造)や、「機関紙で若年層を意識した特集記事を掲載」(非製造)などの回答がみられた。

(調査部)