【宮城】福島県沖地震からの復旧が進み個人消費も堅調

地域シンクタンク・モニター定例調査

経済動向について、4~6月期実績は、福島県沖で3月に発生した地震からの復旧が進んだことや行動制限の解除による個人消費の堅調な推移から【やや好転】となった。7~9月期の見通しは、3年ぶりの仙台七夕まつりの開催で観光需要や消費マインドに底堅さがみられたものの、物価高による節約志向もあり【横ばい】。雇用については、4~6月期実績、7~9月期見通しともに【横ばい】としている。行動制限の解除で労働需要・労働供給がともに増加しており、企業は引き続き人手不足を課題にあげている。

<経済動向>

全体的に緩やかな持ち直しの動き

モニターは4~6月期の地域経済について、「3月16日に発生した福島県沖地震(最大震度6強)による工場や交通機関の被災の復旧が進んだほか、所得・雇用環境の政策的な下支え効果や、新型コロナウイルスの感染者数の減少や行動制限の解除などで個人消費が堅調に推移し、全体としては緩やかな持ち直しの動きとなった」として【やや好転】と判断した。

判断理由を詳しくみていくと、生産面では、被災工場の生産ライン復旧のほか、一部で中食需要に対応した増産などで上振れがみられたものの、引き続き部品不足や原材料の高騰など供給制約に下押しされ、総じて弱含みの動きとなった。

個人消費は、ウクライナ情勢や円安などを背景とした食品・エネルギー価格の上昇などから節約志向がやや強まったものの、3年ぶりに行動制限のない新年度・大型連休を迎えて強制貯蓄がリベンジ消費に転換。「県民割」などの観光支援施策の効果もあり、宿泊・飲食サービスやレジャーなどの対個人サービスで需要が上向き、おおむね底堅さが残る動きとなった。

建設投資では、貸家を中心とした住宅投資が持ち直し、仙台駅前の再開発に関連したオフィスの着工など仙台市中心部では活発な動きがみられるものの、公共投資が低調で依然として慎重さがうかがえる。

通貨安や輸入コスト増で下押し圧力強まる

7~9月期の見通しについてモニターは、「引き続き強制貯蓄がリベンジ消費に向かう個人消費の底堅さや政策効果などに支えられて、全体としてみれば持ち直しに向けた動きとなる見通し」としつつも、「急速に進む通貨安やそれにともなう輸入コストの上昇などにより、企業・家計部門のいずれにも下押し圧力が強まるものとみられる」として、判断は【横ばい】を選択している。

具体的には、東北3大夏祭りの1つである仙台七夕まつりが3年ぶりに開催され、コロナ禍前を上回る延べ225万人が来場するなど、観光需要や消費マインドには底堅さもうかがえた。

しかし物価をみると、天候の影響を受けやすい生鮮食品を除いたコアCPI(仙台市、8月)の上昇率は3.4%で、消費税増税の影響を除くと40年7カ月ぶりの上昇幅となっている。モニターは「スーパーでは巣ごもり需要の落ち着きと食品出荷・輸入価格の上昇などから販売額が減少している」としたうえで、「節約志向は一層強まっていくものとみられる」とコメントしている。

<雇用動向>

コロナ禍の影響受けた業種で回復に遅れ

4~6月期の雇用をみると、有効求人倍率は1.36倍で前期から横ばいだった。新規求人数は前年同期比では10.0%増加しているが、2019年同期比では11.5%減少とコロナ禍前の水準には戻っていない。特に宿泊・飲食サービス(2019年同期比マイナス32.0%)、運輸業(同マイナス23.5%)など、コロナ禍で需要蒸発の影響を大きく受けた業種で回復が遅れている。なお、当期の「事業主都合による雇用保険の資格喪失者」は絶対数は少ないものの、前年同期比で17.2%増加している。

モニターは「労働市場は総じて、行動制限解除にともない需給がともに増加しており、おおむね横ばいの動きとなっており、雇用維持政策の効果などが表れているものとみられる」として、【横ばい】と判断した。

県内企業の4割強が経営上の課題に「人手不足」をあげる

モニターは7~9月期の見通しについても【横ばい】と予測した。

モニターが実施した調査によると、同期間の県内企業の雇用DI見通し(「過剰」-「不足」)はマイナス32で、前期から2ポイント低下と小幅な動きだった。業種別では、製造業はマイナス23で前期から2ポイント上昇したが、非製造業はマイナス36で前期から5ポイント低下となっており、業種により動きが異なっている。

同調査で「経営上の課題」を複数回答で企業に尋ねたところ、「人手不足」は42.7%となっており、コロナ禍直前(2019年12月調査、49.6%)と比べやや低下してはいるものの、なお4割を超える水準となっている。

また、宮城県経営者協会が取りまとめた県内企業122社の夏季賞与支給状況(加重平均額)をみると、前年同期比2.99%増加の64万2,000円となっており、所得環境は緩やかながら持ち直している。

(調査部)