【岩手】祭り・イベントの再開も経済活動は物価高で一進一退の動き

地域シンクタンク・モニター定例調査

4~6月期の経済動向は、各経済指標で改善がみられたほか、景況調査の結果が大幅に改善を示していることから【やや好転】となった。7~9月期の見通しは、祭りやイベントが再開されてはいるものの、物価高の影響をふまえて【横ばい】としている。雇用については、4~6月期は雇用指標にわずかに悪化がみられるものの、業種によっては求人が増加していることから【横ばい】と判断。7~9月期の見通しは、人手不足感が強まるとみて【やや好転】の見込みとしている。

<経済動向>

生産活動に底入れの動きがみられる

4~6月期の岩手県の経済指標をみると、新設住宅着工戸数は前年を割り込んだものの、小売業主要業態の販売額は前年比プラスとなっている。また、生産活動も前期比でプラスとなり底入れの動きがみられることから、モニターは【やや好転】を選択した。

なお、モニターが実施した「岩手県内企業景況調査」では、4~6月期の売上高BSIはマイナス8.6(前期比13.2ポイント上昇)、経常利益BSIもマイナス24.1(同15.9ポイント上昇)で、ともに改善している。

消費に影落とす物価の上昇

モニターが実施した同調査の業況判断BSIの現状判断(7月時点)は、マイナス37.4(前回調査比2.1ポイント低下)で2期連続の悪化となっている。また、先行きの判断はマイナス33.3と現状から4.1ポイント改善する見通し。業種別にみると、製造業、卸・小売業、運輸・サービス業では改善が見込まれるものの、建設業は悪化が予想されている。

モニターは7~9月期の地域経済について、個人消費は「物価の上昇が消費に影を落とすとみられる」ものの、「新型コロナの陽性者数が減少傾向にあるほか、コロナ禍で開催を見合わせていた祭りやイベントの復活などの好材料もある」ことから、「一進一退の動きとなる」と予想している。また、生産活動は「持ち直しの動きが続く」とみて、総合的な判断は【横ばい】とした。

<雇用動向>

新規求人倍率が2倍割り込む

4~6月期の雇用指標をみると、有効求人倍率は1.31倍(前期比0.04ポイント低下)でわずかだが前期を下回っている。新規求人倍率は1.90倍(同0.13ポイント低下)で8期ぶりに前期を下回り、2倍を割り込んだ。

新規求人数(原数値)を産業別にみると、公務や建設業などが低調となった一方、宿泊・飲食サービス業ではコロナ禍での行動制限の緩和にともない、予約が好調な宿泊業を中心に求人が増加している。製造業では電子部品・デバイスや食料品などが増加に寄与した。また、医療・福祉でもまとまった求人があったほか、サービス業でも労働派遣需要が高まったことなどからプラスとなっている。さらに、卸・小売業や運輸・郵便業でも増加している。

このように、雇用統計は前期を下回ってはいるものの、新規求人倍率は2倍近い水準を維持していることや、業種によっては求人の増加もみられることから、モニターは4~6月期の雇用を【横ばい】とした。

人手不足感がさらに強まる見通し

7~9月期の見通しについては、「求人数の持ち直しによって、有効求人倍率および新規求人倍率は前期の水準を上回る」とみて【やや好転】とした。

モニターが実施した「岩手県内企業景況調査」の雇用人員BSIの先行きの判断をみても、マイナス36.8で現状(マイナス32.8)から4.0ポイント低下しており、不足感がさらに強まる見通しとなっている。産業別にみても、製造業が現状比3.6ポイント低下のマイナス32.7、非製造業も同4.2ポイント低下のマイナス38.7で、いずれも不足感が強まるとみられる。

(調査部)