【東海】1~3月期は自動車の挽回生産の足踏みにより持ち直しの動きが一服。4~6月期は好転の見通し

地域シンクタンク・モニター調査

1~3月期の東海地域の経済は、自動車の挽回生産が足踏みとなったことなどから【横ばい】となった。4~6月期の見通しは個人消費、設備投資、輸出のいずれも改善しているとして【やや好転】となった。1~3月期の雇用および4~6月期の雇用見通しは、各種統計をもとに【やや好転】と判断している。愛知県の企業を対象にしたアンケートによれば、正社員が「不足している」企業の割合は昨年よりも増加しているが、コロナ以前の水準には達していない。

<経済動向>

百貨店、スーパーの販売額は前年同期を上回るもホームセンターは苦戦

東海財務局「法人企業統計調査」によれば、東海4県(静岡県含む)の設備投資額は2四半期連続で前年同期を上回った。業種別にみると、製造業は2四半期連続で前年同期を上回ったが、非製造業は4四半期連続で前年同期を下回った。

個人消費をみると、持ち直しの動きがみられたものの、厳しい状況が続いた。中部経済産業局管内5県(愛知県、岐阜県、三重県、富山県、石川県)の当期の百貨店販売額は、2四半期連続で前年同期を上回り、スーパー販売額も4四半期ぶりに前年同期を上回った。ドラッグストア販売額およびコンビニエンスストア販売額、家電大型専門店販売額でも前年同期を上回っている。その一方で、ホームセンター販売額は前年同期を下回っており、東海3県の当期の乗用車販売台数も、前年同期比マイナス18.1%と3期連続で前年同期を下回った。

東海地域のモニターは、1~3月期の地域経済を「まん延防止等重点措置により、外出自粛の動きが広がり、個人消費が弱含んだ。また、期待されていた自動車の挽回生産が足踏みとなったことに加え、原材料価格の高騰が企業収益を圧迫し、企業活動も弱含んだ」と指摘したうえで、「総じて、景気は持ち直しの動きが一服した」として【横ばい】と判断した。

乗用車販売のマイナスは半導体不足などが生産に影響

4~6月期を分野別にみると、個人消費は持ち直している。中部経済産業局管内5県の大型小売店販売額(4月)は、ホームセンター以外では全て前年同月比でプラスとなっている。乗用車販売台数(4月)は、前年同月比マイナス18.0%と10カ月連続で前年同月を下回っているが、これは「半導体不足やその他の部品供給制約で自動車生産が抑制されたためと考えられる」という。モニターが作成するOKB景況指数(6月期)をみても、個人消費は前期のマイナス28.6ポイントから当期はマイナス12.6ポイントに上昇している。

設備投資の見込みも、伸び率が縮小してはいるものの増加が続いている。輸出も、名古屋税関管内の4月の輸出通関額(円ベース)は前年同月を上回っている。こうしたことからモニターは、4~6月期の見通しを【やや好転】と判断した。

<雇用動向>

有効求人倍率が5期連続で上昇

雇用の実績(1~3月期)についてモニターは、「東海4県の有効求人倍率は5期連続で上昇した」「新規求人数(原数値)の前年同月比はプラスが続いた」「完全失業率(原数値)は3期連続で低下した」ことから【やや好転】と判断した。

4~6月期の判断も、「東海財務局『法人企業景気予測調査』によれば、6月末時点での従業員数判断BSIは7期連続で『不足気味』超」であることや、「4月の有効求人倍率は前月から上昇している。県別でみても、4県のいずれも上昇している」ことから【やや好転】とした。

また、労働に関連する地域のトピックとして、愛知県内企業を対象とした人手不足感のアンケート調査の結果を報告(帝国データバンク調べ)。正社員について「不足している」と回答した企業は44.3%で、前年同期より10.2ポイントの上昇となったが、コロナ禍前(2019年)の水準(49.5%)には達していない。なお、「適正」と回答した企業は43.5%(前年同期比3.2ポイント減)、「過剰」は12.2%(同7.0ポイント減)だった。非正社員については「不足」が24.8%(同8.8ポイント増)、「適正」が63.2%(同3.7ポイント減)、「不足」が12.0%(同6.2ポイント減)だった。

(調査部)