【宮城】福島県沖地震の影響で経済持ち直しの動きが鈍化。円安はマイナス要因のほうが大きいとの見方

地域シンクタンク・モニター調査

経済動向について、1~3月期実績は、福島県沖地震による生産・運輸設備の被災により持ち直しの動きが鈍化したことから【横ばい】となった。4~6月期の見通しは、リベンジ消費で外食や宿泊が持ち直したものの、円安の影響は輸入コスト増によるマイナス要因が輸出へのプラス要因を上回るとみて【横ばい】となった。雇用については、1~3月期実績、4~6月期見通しともに【横ばい】としている。製造業の供給制約もあり、労働需要は引き続き弱含む見通し。

<経済動向>

地震による生産・運輸設備の被災で供給制約強まる

モニターは1~3月期の経済について、「オミクロン株の急速な拡大や、原材料・エネルギーなどの資源高やサプライチェーンの停滞に加え、3月16日に発生した福島県沖の震度6強の地震による生産・運輸設備の被災など、おもに供給サイドの下押しを強く受けたことなどから持ち直しの動きが鈍化した」として【横ばい】と判断した。

判断理由を詳しくみていくと、鉱工業生産は生産用機械で半導体製造装置の大幅な増産がみられたが、輸送機械では半導体不足やサイバー攻撃などに見舞われて生産調整を強いられたほか、紙・パルプや石油製品、食料品などが地震による設備の被災で生産停止を余儀なくされるなど、供給制約が強まり弱含みの動きとなった。

需要面では、公共投資が引き続き東日本大震災の復興需要の反動で低調に推移し、住宅投資は持家に減速がみられたものの、貸家や分譲で大型物件に動きがみられるなど、持ち直しの動きとなった。

個人消費は、オミクロン株の拡大や天候不順(厳冬)、灯油・ガソリン価格の高騰の影響で外食・レジャーなどのサービス消費は低調となったが、観光支援策の県民割の効果などで宿泊需要は持ち直したほか、一部で巣ごもり消費が堅調さを維持し、総じて底堅く推移した。

そのほか、モニターが県内企業に実施した調査結果をもとに、県内企業の半数がウクライナ情勢の影響を「相応以上」に受け、その要因の3分の2が「エネルギー価格の動向」と回答していることを紹介。モニターは「続伸する資源・エネルギー価格にウクライナ危機や地震の発生、急速な通貨安の進行などから企業の景況感は大幅に下振れしている」と報告した。

円安が景気の下押し要因に

4~6月期の見通しについてモニターは、「3年ぶりに行動制限のない大型連休で、強制貯蓄の一部がリベンジ消費へと向かって外食や宿泊などのサービス消費が持ち直し、街角景気も改善した」としつつも、「消費者物価は政府のガソリン価格激変緩和策などによっても前年比2%を上回る上昇を続けており、家計にはリベンジ消費志向と節約志向が共存する状況となっており、個人消費の回復は力強さを欠く」としている。

また、「通貨は四半世紀ぶりの水準に切り下がるなど急落しており、県内経済全体では輸入コスト増加分のマイナスが輸出競争力強化のプラスを上回っているとみられ、景気の下押し要因となっている」とみて、判断は【横ばい】を選択している。

<雇用動向>

前年を上回る廃業・リストラの動き

1~3月期の雇用をみると、第1四半期の有効求人倍率は前期比0.03ポイント上昇している。ただしその要因をみると、求人数の減少を求職者数の減少が上回ったことによるもので、宿泊業・飲食サービスなどを中心に労働需要の回復は鈍い。雇用保険の被保険者数をみても、前年同期比マイナス0.7%と減少しており、特に年明け以降は事業主都合による資格喪失者(廃業・リストラ等)が前年を上回って推移している。

モニターが実施した企業動向調査では、県内企業の雇用DI(過剰-不足)はマイナス33で前年同期(マイナス26)と比較して不足感が強まっており、人手不足の建設業(マイナス37)やサービス業(マイナス33)のほか、製造業(マイナス34)でも不足超幅が大きくなっている。

こうした状況を踏まえモニターは、「事業環境の不透明感が強まっていることを背景に、新規の労働需要は持ち直しの動きに広がりを欠いたものとなっている」として、判断を【横ばい】とした。

労働需要は引き続き弱含みの見通し

4~6月期の見通しについても、【横ばい】と予測した。

同期間の県内企業の雇用DI見通し(マイナス27)は、前年同期(マイナス19)よりも不足超幅が拡大しているものの、製造業が供給制約に直面しているほか、サービス消費はコロナ前の水準をなお下回っている。さらに労働コストの問題などから、労働需要は引き続き弱含むものと考えられる。

(調査部)