【九州】経済は業種で明暗分かれる。次期も上海ロックダウンが生産活動に影響の見込み

地域シンクタンク・モニター調査

九州の1~3月期の経済動向は【やや好転】も、業種で明暗が分かれた。半導体は旺盛な需要を背景に高水準の生産が続いたが、自動車は部品不足で生産調整を余儀なくされた。4~6月期の経済動向は宿泊業で回復の動きがみられたものの、上海ロックダウンの影響もあり鉱工業生産指数が低下したことから【横ばい】。雇用動向は、人手不足が続いていることから1~3月期、4~6月期ともに【やや好転】としている。

<経済動向>

半導体と自動車で二極化傾向が強まる

九州地域のモニターは1~3月期の地域経済について、「新型コロナの第6波で消費関連指標の回復が一時的に鈍化したものの、3月には持ち直しの動きがあり、全体としては回復傾向を示した」ことから判断を【やや好転】とした。

モニターが作成している九州地域景気総合指数は、1月が前月比マイナス3.2%、2月が同プラス0.4%、3月が同プラス8.3%と推移した。鉱工業生産指数は前期比プラス0.8%で3期ぶりに上昇した。

モニターは業種別の動向について、「自動車関連と半導体関連の間で二極化が強まっている」と指摘。具体的には、「自動車関連では半導体・部品不足により生産調整を行っているが、供給安定化が予定通りに進まない状況が続き、生産水準の回復ペースが緩慢となっている。一方で、半導体関連は旺盛な需要により高水準が続いている」と報告している。

その他の指標をみても、輸出額が2兆2,571億円(前年比プラス7.9%)で6期連続で増加したほか、内閣府の作成する「地域別支出総合指数(原数値)」は消費が前年比プラス2.6%(全国は前年比プラス2.4%)、住宅投資が同プラス1.5%(同マイナス3.0%)、設備投資が同プラス3.7%(同プラス0.9%)、公共投資が同マイナス9.8%(同マイナス15.3%)となっており、いずれも全国と比較して好調な状況にある。

観光・飲食業で回復目立つ一方、物価高騰を懸念する声も

4~6月期の見通しについては、「ゴールデンウィークは、行動制限で低調が続いていた宿泊業などで回復の動きがみられた。一方で鉱工業生産は、自動車部品の調達難による生産調整や、中国のゼロコロナ政策による上海ロックダウンの影響などにより、回復が遅れる状態が継続している」として【横ばい】と判断した。

消費現場のマインドを示す景気ウォッチャー調査の現状判断(水準)DIをみると、4月が51.8、5月が53.3となっているほか、5月の先行き判断DIは53.8となっている。いずれも節目の50を上回っており、新型コロナの第6波が収束したことから持ち直しの動きがみられる。

特に、行動制限のないゴールデンウィークとなったことで、これまで低調だった観光・飲食業の回復が目立った。一方で、円安やロシアのウクライナ侵攻などによる物価高騰や、サプライチェーンの混乱を懸念する声が多くなっており、DIは横ばい程度の水準に留まっている。

モニター作成の宿泊稼働指数(月平均)の推移をみると、九州では前期と比べて高い水準での推移が続いており、第6波による悪影響を脱している。特に、ゴールデンウィークがあった2022年5月は前月比プラス1.8ポイントと2カ月ぶりのプラスとなった。また前年比でもプラス31.7ポイントと大幅な上昇をみせている。

鉱工業生産指数は4カ月続けて低下

4月の鉱工業生産指数(季節調整値)をみると、前月比マイナス1.3%で3カ月ぶりに低下し、前年同期比はマイナス8.4%で4カ月連続の低下となった。上海ロックダウンなど、サプライチェーンの混乱が継続していることが指数を引き下げている。特に自動車関連の生産調整による影響が大きく、「回復時期の見通しが不透明な状況」だという。

<雇用動向>

半導体工場の新設にともない求人数が増加

雇用の実績(1~3月期)について、モニターは【やや好転】と判断。その理由について、「有効求人倍率は1.22倍で、5期連続で上昇した」ことや「完全失業率(原数値)は3.0%で前年同期比マイナス0.1ポイントとなった。コロナ禍以降の失業率上昇が一服し、改善に向かっている」ことをあげている。

4~6月期の見通しについても、「人員の不足感がさらに強まっていることから、雇用環境の改善が続く」とみて【やや好転】を選択している。

その理由として、「日本銀行福岡支店による九州・沖縄『企業短期経済観測調査』(3月調査)の雇用人員判断DI(「過剰」―「不足」)は、製造業がマイナス20、非製造業がマイナス29で、2022年12月調査と比べて、製造業はマイナス2ポイント、非製造業はマイナス1ポイントとなっている」こと、次回(6月)予測で、「製造業はマイナス20、非製造業はマイナス31でともに不足するとみている」ことをあげた。外資系企業による半導体工場の新設などにともない、半導体関連の求人数が増えている点も指摘した。

(調査部)