【近畿】GW中の人流大幅増で経済は「やや好転」の見通し

地域シンクタンク・モニター調査

近畿の1~3月期の経済は、昨年の緊急事態宣言の影響で持家の住宅着工が低調となったことなどから【やや悪化】したものの、4~6月期の見通しは行動制限のないゴールデンウィークで人流が大幅に増加したことから【やや好転】の見込みとなった。雇用指標は小幅な動きにとどまっており、雇用動向は1~3月期実績、4~6月期見通しのいずれも【横ばい】としている。

<経済動向>

緊急事態宣言下で鈍った住宅展示場への客足が、今期の住宅着工に影響

1~3月期について、近畿地域の家計部門の動向をみると、大型小売店販売額は8,624億円で前年同期比プラス1.7%となり、2四半期連続で前年を上回った。対前々年同期比でみてもマイナス0.6%で、おおむねコロナ禍前の水準まで戻している。ただし、「全国の結果と比べると、関西はやや弱い動きとなった」という。

住宅市場をみると、当期の新設住宅着工戸数は3万777戸で、前年同期比プラス0.8%で2四半期ぶりに前年を上回った。利用関係別にみると、貸家(前年同期比プラス4.6%)と分譲(同プラス5.9%)は前年を上回り堅調だが、持家(同マイナス11.0%)は低調だった。その理由についてモニターは、「2021年の緊急事態宣言下で住宅展示場への客足が鈍ったことが、ここに来て持家の停滞につながっている」と分析している。

輸出動向は中国のゼロコロナ政策がポイントに

輸出の動向をみると、関西の輸出額は4兆8,678億円で、前年同期比プラス15.1%となり6四半期連続で前年を上回った。

ただし地域別にみると、米国・EU向けは堅調な動きが続いているが、中国向けは変調の兆しもみられる。中国向けは1月が前年同期比プラス2.0%、2月がプラス26.8%、3月がプラス6.1%と前年比プラスが続いているが、2月の大幅増は春節のスケジュールによる影響が大きく、これを除けばプラス幅は縮小傾向が続いている。モニターは「関西では中国とのつながりが密接であることから、中国のゼロコロナ政策の行方が大きなポイントとなる」と指摘している。

日銀短観(3月調査)によると、業況判断DIはプラス1で2期連続プラスでの推移となったものの、2020年6月調査以来7四半期ぶりの悪化となった。業種別にみても、いずれの業種も悪化している。特に宿泊・飲食サービス(マイナス53、前期比26ポイント悪化)や対個人サービス(マイナス12、同14ポイント悪化)は、まん延防止等重点措置が適用されたことから大幅に悪化している。

大阪商工会議所・関西経済連合会「第88回経営・経済動向調査」(調査期間2月14日~28日)をみても、自社業況BSIはマイナス7.0で3四半期ぶりのマイナスに転じ、前期比ではマイナス25.7ポイントと大幅悪化となった。

こうした点を勘案し、モニターは1~3月期の判断を【やや悪化】とした。

飲食・宿泊の回復が景況感の改善に寄与

4~6月期の見通しについては、【やや好転】と判断した。

モニターはその理由として、「4月の鉱工業生産動向(速報値、季節調整済)は96.9で、前月比3.3%増と2カ月ぶりに上昇した」ことや「5月の公共工事請負金額は1,552億円(前年同月比8.1%増)で3カ月連続の増加となった」こと、それに「5月の景気ウォッチャー現状判断DI(季節調整値)は52.1で、前月から1.5ポイント上昇し、3カ月連続で改善した」ことをあげた。

そのうえでモニターは、「3年ぶりに行動制限のないゴールデンウィークで人流が大幅増加したこともあり、飲食業や宿泊業など対面型サービス業の回復が景況感の改善に寄与した」とコメントしている。

<雇用動向>

雇用指標は小幅な動きにとどまる

1~3月期の雇用実績について、モニターは「雇用環境は緩やかに回復しているが、そのペースは全国に比べると緩慢」として【横ばい】と判断した。

具体的な理由としては、「有効求人倍率は1.10倍で、前期から0.03ポイント上昇」「新規求人倍率は2.12倍で前期から0.06ポイント上昇」「完全失業率(モニターによる季節調整値)は2.9%で前期から0.1ポイント低下」など、雇用指標が小幅な動きにとどまったことをあげている。

4~6月期の雇用の見通しについても「新型コロナの感染者数が落ち着いていることから行動制限の緩和、物流の活発化など徐々に経済活動が再開されつつあり、労働需給の双方に緩やかな改善傾向が見てとれる」ものの、「就業者数の増加は小幅にとどまっている」ことから判断を【横ばい】としている。

(調査部)