【北海道】まん防解除で個人消費が持ち直し、見通しは経済動向・雇用動向ともにやや好転

地域シンクタンク・モニター調査

北海道では、1~3月期の地域経済がまん延防止等重点措置の発令で【やや悪化】したが、4~6月期の見通しは個人消費が持ち直して【やや好転】となっている。1~3月期の雇用動向は、各種統計の動きから【やや好転】と判断。4~6月期の雇用見通しも、4月の新規求人数が前年比プラス13.5%の大幅増となったことから、引き続き【やや好転】としている。

<経済動向>

製造業の業況判断が大幅に悪化

日本銀行札幌支店の「企業短期経済観測調査(北海道分)」(短観)によると、3月調査の業況判断(「良い」-「悪い」)はマイナス10で、前期(2021年12月調査)から8ポイント低下した。特に製造業は、マイナス11で前期から23ポイント低下と大幅に悪化している。非製造業はマイナス10で前期から5ポイントの低下。

分野別の動向をみると、サービス消費はまん延防止等重点措置の発令をうけて弱い動きとなった。観光関連では、国内来道客数が前年同期比プラス66.8%で4四半期連続の増加となり持ち直しがみられるが、外国人入国者が激減して、インバウンド需要の蒸発した状態は変わらず、厳しい状況が続いている。住宅投資をみると、新設住宅着工戸数は前年同期比マイナス13.7%で、2021年12月以降4カ月連続で前年を下回り弱含みとなっている。

こうしたことからモニターは、1~3月期の地域経済を【やや悪化】と判断した。

人の動きが活発化して足元ではマインドの改善が認められる

日銀短観での6月の先行き業況判断をみると、全産業でマイナス14と3月実績から4ポイント悪化の見通しで、慎重さがみられた。他方で、北海道財務局が公表した「法人企業景気予測調査」では、4~6月期の現状景況判断BSI(前期比「上昇」-「下降」)はプラス1.7と上昇超過に転じている。さらに「景気ウォッチャー調査(5月)」の結果をみると、現状判断DI(季節調整値)は56.8で、3カ月連続の改善となった。前月比4.1ポイントの改善は、全国を上回る状況。先行き判断DI(季節調整値)も57.6で前月から4.4ポイント改善しており、4カ月連続の改善となった。

4月の個人消費の動向をみると、乗用車新車販売(前年同月比マイナス6.8%)は供給制約から前年割れが続いているものの、その他ではスーパー(同プラス0.9%)、百貨店(同プラス13.1%)、コンビニエンスストア(同プラス3.9%)、家電大型専門店(同プラス9.3%)、ドラッグストア(同プラス2.2%)、ホームセンター(同プラス4.8%)がいずれも前年を上回り堅調に推移した。

モニターはこれらの結果から、「原材料価格等上昇への懸念の指摘も散見されるが、まん延防止等重点措置の解除による人の動きの活発化が好感され、足元ではマインドの改善が認められる」「個人消費は持ち直しの動きがみられる」などとして、4~6月期の見通しについては【やや好転】を選択した。

<雇用動向>

有効求人倍率、新規求人数ともに改善の動き

日銀短観によると、3月調査の雇用人員判断(「過剰」-「不足」)はマイナス31で、前期(12月調査)から横ばいとなっている。しかし、モニターが2月中旬から3月中旬にかけて実施した「2022年道内企業の雇用動向と新卒採用」調査によれば、道内の従業員過不足感を示す「雇用人員判断DI(過剰企業割合―不足企業割合)」はマイナス40と前年比で10ポイント低下しており、道内の人手不足感は4年ぶりに強まっている。業種別にみても、全ての業種で前年調査からDIが低下している。

労働統計をみると、有効求人倍率は1月が1.06倍(前月比プラス0.04ポイント)、2月が1.06倍(同0ポイント)、3月が1.08倍(同プラス0.02ポイント)と改善基調で推移した。新規求人数(常用)も、1月が前年同月比プラス6.9%、2月が同プラス9.3%、3月が同プラス1.9%と推移し、いずれも前年を上回った。

これらをふまえモニターは、「業種で濃淡はあるものの、人手不足感は基調として引き締まっている」「有効求人倍率と新規求人数は改善がみられる」として、1~3月期の雇用について【やや好転】と判断した。

公共工事優遇策で相次ぐ建設業の賃上げ

4~6月期の見通しについては【やや好転】と判断した。

その理由として、「日銀短観では6月(先行き)の雇用人員判断(「過剰」-「不足」)はマイナス37と、3月(マイナス31)から6ポイント低下の見通しで、人手不足感は前期に比べ強まる見通し」であることや、「4月の有効求人倍率は1.11倍で3月(1.08倍)から改善」「4月の新規求人数は前年比プラス13.5%と大幅な増加となった。特にサービス業(プラス33.6%)、製造業(プラス29.2%)、宿泊業、飲食サービス業(プラス25.0%)、建設業(プラス10.3%)は10%を超える増加」といった好材料をあげている。

また労働に関連する地域のトピックとして、道内の大手建設業で賃上げの動きが相次いでいることを報告。公共工事の入札において賃上げ企業が優遇される制度(総合評価落札方式における賃上げを実施する企業に対する加点措置)が4月から導入されたことが、その背景だという。

(調査部)