【九州】経済はロシア・ウクライナに依存する原材料の調達が今後の不安要素

地域シンクタンク・モニター調査

好調な半導体生産を背景に10~12月期、1~3月期の経済動向はいずれも「やや好転」。ただしウクライナ情勢の悪化で、ロシア・ウクライナに依存する原材料の調達が今後の不安要素になっている。雇用動向は、求人の増加が続いていることから10~12月期、1~3月期ともに「やや好転」としている。

第5波と第6波のはざまで消費が回復

九州地域のモニターは10~12月期の地域経済について、「第5波と第6波のはざまで消費関連が回復したことで、景気の回復基調が強まった」ことから判断を【やや好転】とした。

モニターが作成している九州地域景気総合指数は、10月が前月比プラス7.0%、11月が同プラス5.1%、12月が同プラス0.3%と推移した。鉱工業生産指数は「半導体・部品不足により生産調整を行っている自動車で、供給安定化が予定通りに進まない状況が続き、生産水準の回復ペースが緩慢となっている」ことから前期比マイナス2.5%と2期連続で悪化しているが、「半導体デバイス生産は高水準が続いており、鉱工業全体を支えている」状況だという。輸出額をみると、当期は2.4兆円(前年比8.9%増)と5期連続で増加。鉄鋼(同69.2%増)や化学製品(同26.7%増)など素材関連の輸出が価格上昇により伸び、半導体等電子部品(同22.4%増)も好調な状況。他方、自動車(同25.3%減)と半導体等製造装置(同15.2%減)は減少している。

九州は特にサプライチェーン維持に向けた対応が急務

1~3月期の見通しについては、「第6波の影響で1~2月は再び消費が減退するなどの影響を受けたが、過去の波と比較して経済活動への影響が限定的とみられる。3月はまん延防止等重点措置が解除され、人流や消費が拡大している。また鉱工業生産では、自動車生産の回復が進展している」として【やや好転】と判断した。

消費現場のマインドを示す景気ウォッチャー調査の現状判断(水準)DIをみると、2月は33.1で、過去の新型コロナ流行時のボトム(2020年4月:10.4、2020年8月27.7、2021年1月25.8、2021年5月28.0、2021年8月26.8)と比べて落ち込みが小さい。また2月の先行き判断DIは52.1で節目の50を上回っており、「第6波収束による回復が予期されている」という。

ただしウクライナ情勢がおよぼす影響への懸念も報告。「原油や穀物などの資源価格の高騰と同時に円安ドル高も進行しており、コストプッシュによるインフレが企業収益や家計消費を冷え込ませる懸念が高まっている」と指摘した。さらに、現時点では顕在化していないと断ったうえで、「自動車や半導体に用いられるパラジウムや希ガスはロシア・ウクライナへの依存度が高く、これらを主力産業とする九州は特に、サプライチェーン維持に向けた対応が急務となっている」との見方も示した。

有効求人倍率は4期連続で上昇、前年下回る福岡県内の春闘の回答額

雇用の実績(10~12月期)について、モニターは【やや好転】と判断。その理由について、「有効求人倍率は1.14倍で、4期連続で上昇した」ことや「新規求人数(原数値、学卒・パート除く)は前年同期比プラス11.4%と4期連続で増加した」ことなどをあげている。

1~3月期の見通しについても、「求人など雇用関連は大きく崩れてはいないとみられ、回復傾向が持続すると予測。また、人員の不足感もさらに強まっていることから、雇用環境の改善が続く」とみて【やや好転】を選択している。その理由として、「モニターがハローワークインターネットサービスより取得・作成している『就業地別有効求人件数』の月次値(各月における日次有効求人件数の最大値)の前年比をみると、九州・沖縄では全国よりも強い回復が継続している。1~3月期にかけても前年比プラス16%程度の増加が継続している」と報告している。

また労働に関連する地域のトピックとして、2022年の春闘の動向を報告。「連合福岡によれば、福岡県内の78組合の月例賃金改善(定期昇給維持含む、平均賃金方式の組合員加重平均)の要求額は7,802円で、前年を646円下回った。これまでに回答のあった9組合での回答額は5,725円(前年比1,235円減)となっている」という。

(調査部)