【岩手】新規求人倍率が6期連続上昇で統計開始以来初の2倍超に

地域シンクタンク・モニター調査

10~12月期の地域経済は、新型コロナの感染動向は比較的落ち着いていたものの、原油・原材料価格の高騰もあり「横ばい」となった。1~3月期の見通しはサプライチェーン混乱による影響があるとみて「やや悪化」の見通しとしている。10~12月期の雇用は新規求人倍率が2倍を超えたことなどから「やや好転」と判断された。1~3月期の雇用見通しは「横ばい」の見込みとしている。

原油・原材料価格の高騰や供給制約により持ち直しの動きはやや足踏み

岩手県の経済指標をみると、新設住宅着工戸数が前年の落ち込みの反動からプラス基調だった一方、新車登録・販売台数は部品供給不足等による生産調整の影響などで低調だったほか、公共工事請負額も弱含み傾向が続いた。また、小売業主要6業態の販売額と鉱工業生産指数は業態・業種によって増減にバラつきがあり、全体では一進一退だった。

モニターが1月に実施した「岩手県内企業景況調査」では、業況判断指数(BSI)の現状判断は「売上高」がマイナス7.0(前期比9.5ポイント上昇)、「経常利益」もマイナス17.9(同9.3ポイント上昇)で、ともに10ポイント近く改善した。ただし、「仕入価格」は原油・原材料価格の高騰などを受けてプラス61.2(同16.9ポイント上昇)と、極めて強い上昇傾向を示しており、企業収益を少なからず圧迫している。

岩手県のモニターは10~12月期の動向を、「県内の新型コロナの感染動向は比較的落ち着いた状況にあった一方、原油・原材料価格の高騰や供給制約などの下押し要因から持ち直しの動きにやや足踏み感があった」と整理して【横ばい】を選択した。

1~3月も原油価格高騰やサプライチェーンの混乱の影響が続く見通し

まん延防止等重点措置は岩手県には適用されていないものの、全国と同様に1月下旬以降は新規陽性者数が増加から高止まり傾向となり、その後は減少の兆しがみえるものの、飲食業を中心に経営環境は悪化している。また、ウクライナ情勢の影響について、「県内企業への直接的な影響は限定的ながら、従来からの原油価格高騰のほか、ロシアへの経済制裁によるサプライチェーンの混乱などが本県経済の下押し圧力となることは避けられない」という。

こうした状況を踏まえ、1~3月の見通しは、「新型コロナの感染拡大や原油価格高騰、サプライチェーンの混乱の影響」があるとみて【やや悪化】と判断した。

なお、モニターが実施した同調査では、業況判断指数の現状判断(1月時点)はマイナス26.9(前回調査比3.5ポイント上昇)と2期連続で改善した。ただし、先行きの判断はマイナス39.8(現状比12.9ポイント低下)で、調査時点ではウクライナ情勢が加味されていないものの、現状を大幅に下回る見通しとなっている。

有効求人倍率は1.26倍で5期続けてプラス

10~12月期の雇用について、モニターは「製造業では食料品のほか、自動車、半導体関連などで生産増大などにより、まとまった求人が提出された。また、新型コロナの影響で前年の求人が手控えられていた建設業や卸・小売業、宿泊業、飲食サービス業、医療・福祉など多くの業種で求人数の回復傾向がみられた」ことから【やや好転】を選んだ。

雇用指標も「有効求人倍率は1.26倍(前期比0.02ポイント上昇)で5期連続のプラス」「新規求人倍率も2.01倍(同0.08ポイント上昇)で6期連続のプラスとなった。四半期ベースで2倍台となるのは、統計開始(1963年)以来初めてのこと」だという。

人手不足感は新型コロナ前と同等まで回復

1~3月期の見通しについては、「求人数の持ち直しによって有効新規求人倍率および新規求人倍率は前期並みの水準が続く」とみて【横ばい】とした。モニターが実施した「岩手県内企業景況調査」では、1月時点の雇用人員BSIがマイナス34.8(前回調査比10.8ポイント低下)、先行きの判断もマイナス37.3(現状比2.5ポイント低下)と、新型コロナウイルスの感染拡大前と同等の強い人手不足感が示されている。

また、同調査とあわせて調べた新規採用の動向(予定含む)では、採用がある企業の割合が前年からやや持ち直したほか、前年から採用人員を増加するとした割合が伸長した。他方で、採用予定がないかあるいは採用人員の減少を回答した企業の理由をみても「応募者がいない」ことをあげる割合が上昇している。モニターは「採用活動によって必要人員を確保できていない企業や、人員の充足度に関わらず採用活動を見合わせる企業が一定数いる」と指摘する。

(調査部)