【中国】第5波が落ち着き企業の生産や個人消費は回復するも、半導体不足がものづくりにマイナスの影響

地域シンクタンク・モニター調査

中国地域では、10~12月期、1~3月期の経済動向および雇用動向のいずれも「横ばい」となっている。新型コロナウイルスの感染が落ち着き企業の生産や個人消費の回復もみられたが、地域のものづくりを支える半導体不足に伴う自動車工場の停止や鉄鋼大手の高炉休止が地域経済の痛手に。それでも、高校生の就職率が回復するなど、企業の採用意欲には回復の兆しもみられる。

モニターは、10~12月期の中国地域の経済動向について「第5波が落ち着き、企業の生産活動や個人消費が再び動き出した」ものの、他方で「半導体不足での工場停止や高炉の休止で地域経済を支えるものづくりに影響が大きい」ことをあげて、判断を【横ばい】とした。

その理由については、「コンビナートを抱える地域では、輸送需要の回復にともないガソリンやジェット燃料などの石油関連が増産され、国内外でのショベル系掘削機械や食品加工機械、海外向け半導体生産装置なども伸びを見せた」「感染拡大が落ち着いたことで個人消費が伸びた。外出機会が増加して小売店等への来店客数が回復し、コートやニットなどの冬物衣料が好調となったほか、おせち予約や年末・クリスマス商戦などに良い動きがみられた」といった好材料がある一方で、「半導体不足により一部の工場で夜勤を停止した自動車は低い生産水準」や「日本製鉄の瀬戸内製鉄所呉地区(広島県呉市)の高炉が昨年9月に休止した」などのマイナス面があることも報告している。

半導体不足と感染急拡大で経済が再失速する可能性も

1~3月期の見通しについては、「原材料の価格高騰や半導体不足による部品の調達難、そしてオミクロン株の感染急拡大で、小康状態だった地域経済が再び失速する可能性がある」として【横ばい】と判断。具体的には、「自動車メーカーは半導体不足の根本的解決の見込みがないことから、サプライチェーン全体で影響が長引く懸念がある」「原油高騰など原材料の調達もさらに難しくなっており、生産活動は大幅には伸びそうにない」と不安材料をあげた。そのうえで、「コロナ禍で抑制してきた投資の再開(特に自動車や半導体)が予想されるほか、(感染拡大状況にもよるが)長い自粛生活の反動による消費増、そしてウィズコロナの定着による社会経済活動の回復などが徐々に始まる期待があり、大きな停滞にはつながらない」との見方もあわせて示している。

求人・求職の動きは業種や雇用形態でバラつくも改善傾向に

10~12月期の雇用実績について、モニターは【横ばい】と判断。具体的には「全国平均よりも求人数は多く、求人倍率も一進一退を続けているが、新型コロナの感染拡大前ほどの勢いはなく、半導体不足や原材料の調達難による生産の停滞が雇用にも響いている」と説明しつつ、「とはいえ、山陽地域(岡山・広島・山口)では感染リスクの低下や求人の増加を見据えて求職者数が増えており、製造業の人手不足を補う労働者派遣の需要も高い」ことや、「緊急事態宣言等の解除で店舗の営業時間に制限がなくなり集客が回復したことや、年末年始商戦を受けて、飲食店や小売店での求人が伸びた。業種や雇用形態にバラつきはあるものの、求人と求職が少しずつ伸び始めた印象がある」といった要因もあげた。

コロナ以前の水準に戻りつつある広島県の高校生の就職率

見通し(1~3月期)についても、【横ばい】としている。その理由は「新型コロナの感染が落ち着いたことと、年末に向けて経済活動が回復したことから求人・求職がともに増えてきた」ものの、「年が明けてオミクロン株の影響や、半導体不足、原材料高騰といった要因が複雑化し、先を見通しにくい状況になっている」とした。

また高校生の就職率について、「広島県内で87%(昨年11月末時点)と、2019年度以前までの動きに戻りつつある」として、「将来に向けて企業の採用意欲は高まっている」ことも報告した。

(調査部)