家内労働者数は約9万4,000人。約4割の委託者で1年前に比べ仕事量が減少
 ――厚生労働省が家内労働の現状を審議会で報告

スペシャルトピック

3月19日に開催された厚生労働省の労働政策審議会雇用環境・均等分科会家内労働部会で、家内労働の現状についての報告があった。家内労働者数は1973年度以降減少傾向にあり、2023年10月現在で9万4,262人。女性が約9割を占め、平均年齢は60.1歳。家内労働の委託者の約4割が、委託している仕事量が1年前に比べて「減少した」としている。

<家内労働とは>

労働基準法上の労働者に該当せず、家内労働法において基本事項を規定

家内労働とは、通常、自宅を作業場として、メーカーや問屋などの委託者から、部品や原材料の提供を受け、一人または同居の親族とともに、物品の製造や加工などを行う労働のこと。主に内職に従事する労働者であり、事業・事務所に使用されていないことから、労働基準法で規定された「労働者」には該当しない。

優位な立場になりやすい委託者から家内労働者を保護し、労働条件の向上・生活の安定に資するため、「家内労働法」が1970年に施行。同法により、家内労働手帳や工賃支払いの確保、最低工賃、安全衛生の措置などの基本的な事項が定められている。

厚生労働省は家内労働者の概況・実態を把握するため、定期的な調査として、「家内労働概況調査」と「家内労働等実態調査」を実施している。

<家内労働の実態>

3月19日の労働政策審議会雇用環境・均等分科会家内労働部会では、両調査の結果から、家内労働の最新状況が報告された。まずは、「家内労働概況調査」の結果から、家内労働者数などの家内労働の概況をみていく。なお、同調査は、全国の家内労働者数や委託者数などの業種別・類型別や、危険有害業務に従事する家内労働者の状況などを把握するために、都道府県労働局に提出された委託状況届などの情報をもとに、毎年10月時点の状況をとりまとめている。

物品の製造、加工等に従事が大半

それによると、2023年10月1日時点での、家内労働に従事する者の総数は9万8,035人と、昨年(9万8,339人)から304人(0.3%)減少した。内訳をみると、主として自宅で物品の製造、加工等に従事している「家内労働者」が9万4,262人と大半を占めており、家内労働者の同居の親族で家内労働者とともに仕事に従事している「補助者」は3,773人となっている。

家内労働法が制定された1970年度以降の家内労働者数の推移をみると、1973年度調査の184万4,400人が最も多かったものの、以降は減少し、2021年度調査で10万人を下回り、以降9万人台を推移している。

女性が9割を占め、内職的労働者が9割以上

家内労働者数を男女別にみると、男性が1万397人、女性が8万3,865人と、女性が全体の89.0%を占めている。

類型別にみると、家庭の主婦などが従事する内職的家内労働者が8万8,523人で全体の93.9%と大部分を占め、世帯主が本業として従事する専業的家内労働者が4,232人(4.5%)、農業や漁業の従事者等が本業の合間に従事する副業的家内労働者は1,507人(1.6%)となった。

業種別でみると、貴金属製造、がん具花火製造などの「その他(雑貨等)」を除くと、衣服の縫製、ニットの編立てなどの「繊維工業」が2万1,204人(22.5%)と最も多く、次いでコネクター差し、チューブ通しといった「電気機械器具製造業」が1万2,139人(12.9%)となっている。

危険有害業務に従事するのは全体の8%

危険有害業務に従事する家内労働従事者数は7,832人で、家内労働従事者数に占める割合は8.0%となっている。これを業務の種類別にみると、動力ミシンやニット編み機など「動力により駆動される機械を使用する作業」が5,677人と最も多く、危険有害業務に従事する家内労働従事者全体の72.5%を占めた。

1委託者あたりの平均家内労働者数は13.7人

2023年10月1日時点の委託者数は6,869。内訳をみると、製造・販売業者が6,515、製造・販売業者から製造、加工等を請負家内労働者に委託する請負業者が354となっている。

業種別でみると、「繊維工業」が2,311(33.6%)と最も多く、「その他(雑貨等)」を除くと、次いで「電気機械器具製造業」が752(10.9%)、「機械器具等製造業」が408(5.9%)となった。

1委託者あたりの平均家内労働者数は13.7人で、業種別にみると、「ゴム製品製造業」が22.3人と最も多く、「その他(雑貨等)」を除くと、次いで「紙・紙加工品製造業」が16.3人、「電気機械器具製造業」が16.1人など。

<委託内容の概況>

「家内労働等実態調査」は、全国の家内労働者の労働条件や委託者の委託条件などを把握するため、3年ごとに実施している。都道府県労働局を通じて、委託者と家内労働者それぞれに対して調査票を配布し、委託者調査では委託する理由や方法、工賃の決定の仕方など、家内労働者調査では属性や就業日数・時間数、工賃額、就業意識などについて尋ねている。

常時委託している家内労働者数は10~19人の割合がトップ

それによると、委託者が常時委託している家内労働者数は、「10~19人」の割合が23.5%で最も高いものの、2020年度の前回調査(26.0%)から2.5ポイント低下した。「1~4人」がこれに次いで21.1%(前回18.4%)で、「5~9人」が20.8%(同16.7%)。30人以上を常時委託している委託者の割合は21.6%(同21.8%)で、前回からあまり変化がない。

業種別にみると、「食料品製造業」や「窯業・土石製品製造業」、「木材・木製品、家具・装備品製造業」では「1~4人」の割合が最も高い(それぞれ50.0%、49.3%、45.7%)。「繊維工業」では「5~9人」の割合が26.9%で最も高く、「電子部品・デバイス製造業」では「10~19人」の割合が29.6%で最も高くなっている。

委託者が家内労働者に仕事を委託する理由をみると(2つまで回答)、「手作業であるから」が67.1%で最も高く、以下、「コストが安くてすむから」が34.1%、「仕事量が変動するから」が29.1%などと続く(図表1)。

図表1:家内労働者に仕事を委託する理由(複数回答、2つまで)
画像:図表1

(公表資料から編集部で作成)

委託者の約4割が委託している仕事量が1年前より減少

1年前の同時期と比べた、現在委託している仕事量の増減の状況をみると、「減った」が41.5%、「変わらない」が46.2%となった。

業種別にみると、「減った」割合は「情報通信機械器具製造業」(56.0%)や「機械器具等製造業」(53.7%)などで高い一方、「変わらない」割合は「繊維工業」(51.7%)や「ゴム製品製造業」(51.0%)などで高くなっている。

「減った」と回答した委託者に減少した理由を尋ねると(2つまで回答)、「製品の需要減少」が73.8%で、前回(81.5%)から7.7ポイント低下したものの最も高くなっている。次いで「家内労働者の確保困難」が23.6%で、こちらは前回(12.1%)から11.5ポイント上昇した。

今後1年間の委託する仕事量の見込みについては、「変わらない」が53.0%、「増やしたい」が23.4%。一方、「減らしたい」は8.5%、「中止したい」が0.9%となった。

委託者は委託や物品の受領、工賃支払いのつど、家内労働者に対して仕事内容、報酬等の委託の条件を明記した家内労働手帳を交付することが義務づけられているが、家内労働者に仕事を委託するときの契約方法の回答状況をみると、「家内労働手帳」によるものが78.3%と前回(80.7%)から2.4ポイント低下しているものの8割近くを占める一方、「ノート類」が16.1%(前回13.9%)、「口約束」が4.9%(同5.0%)と、家内労働手帳を交付していない委託者も一定数あった。

6割の委託者が工賃のデジタル払いを希望せず

現在の工賃を決定した時期をみると、最も割合が高いのは「2022年10月1日~2023年9月30日」が41.5%で、「2020年9月30日以前」の割合も39.6%とほぼ約4割。

工賃を決定する際に重視する事項をみると(2つまで回答)、「工賃相場(世間相場)」が48.3%で5割近くにのぼり最も高く、次いで「納入価格や利益」(35.2%)の割合が高かった。

資金移動業者の口座への支払い(スマートフォンアプリなどを用いたデジタル払い)を希望するかどうかを尋ねたところ、「希望する」が2.6%、「どちらかといえば希望する」が3.0%と希望する委託者はごくわずかで、「どちらかといえば希望しない」が10.8%、「希望しない」が59.2%だった。

<家内労働者の就業実態>

70歳以上が約3割を占め、平均年齢は60.1歳

「家内労働等実態調査」の労働者調査結果から、家内労働者の就労の実態をみていくと、年齢は、「70歳以上」が31.7%で最も割合が高く、次いで「60~70歳未満」(23.4%)の割合が高い(図表2)。家内労働者全体の平均年齢は60.1歳で、前回調査(58.9歳)から1.2歳上昇した。

図表2:家内労働者の年齢
画像:図表2

(公表資料から編集部で作成)

家内労働者の2023年9月における就業日数をみると、「20~25日未満」の割合が31.9%と最も高く、以下、「25日以上」が17.9%、「15~20日未満」が17.1%と続く。平均就業日数は17.5日。また、同月の1日の平均就業時間数は、「4~6時間未満」が31.5%で最も高く、次いで「2~4時間未満」(27.3%)、「6~8時間未満」(20.0%)などの順となっている。平均就業時間は4.8時間だった。

同月の仕事量の1年前と比較した増減について尋ねると、「仕事量減少」が27.5%で前回調査(44.8%)から17.3ポイント低下する一方、「変わらない」が54.7%と前回(44.1%)から10.6ポイント、「仕事量が増えた」が11.1%で前回(6.7%)から4.4ポイントそれぞれ上昇した。

3割が工賃月収額2~4万円未満

2023年9月分の家内労働者の工賃月収額をみると、「2~4万円未満」が29.7%で最も高く、次いで「1~2万円未満」が20.5%で高い。平均工賃月収額は、3万7,641円となっている。また、同月分の1時間あたりの工賃額は、「200~400円未満」が28.3%、「400~600円未満」が17.8%などの順で高くなっており、1,000円未満を回答する割合が約8割を占めた。1時間あたりの平均工賃額は522円。

工賃の支払場所は、「金融機関(口座振込等)」が52.5%で半数を超えて最も高く、以下、「自宅」が24.7%、「委託者の営業所等」が18.8%などと続いた。

資金移動業者の口座への支払い(スマートフォンアプリ等を用いたデジタル払い)を希望するかどうかを尋ねると、「希望する」が9.8%、「どちらかといえば希望する」が1.9%と、委託者調査結果と同様に希望する家内労働者は少数で、「どちらかといえば希望しない」が7.5%、「希望しない」が63.5%となっている。

家内労働に従事する理由は家計の補助が5割超でトップ

家内労働に従事する理由をみると(2つまで回答)、「家計の補助のため」が52.0%と最も高く、以下、「余暇時間の活用」が37.7%、「自由になるお金を得るため」が28.3%、「生計を維持するため」が19.3%などと続いている。

家内労働をするうえで困ったことがあるか尋ねると、「困ることがある」が33.5%と3割を超えた。その理由をみると(2つまで回答)、「工賃が安い」が71.6%と7割超にのぼり、「仕事があったりなかったりする」が約4割(41.9%)だった。

<フリーランス法との適用関係>

フリーランス法との適用関係についても整理

家内労働と同様に、個人で仕事を請け負う働き方としてフリーランスがあるが、フリーランスの取引適正化について、2023年4月28日に「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」が成立。同法は2024年11月までに施行されることとなっている。

政府は、同法における「特定受託事業者」(=業務委託の相手方である事業者であって、従業員を使用しない者)に家内労働者も含まれると指摘しており、家内労働法と同法で規定されている委託者の義務内容の一部が重複していることから、両法の円滑な施行のため、関係性を図表3のとおり整理。3月19日の労政審雇用環境・均等分科会家内労働部会で示した。

図表3:家内労働法とフリーランス法の適用関係について
画像:図表3
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(3月19日労働政策審議会雇用環境・均等分科会家内労働部会資料)

(調査部)