【近畿】大手自動車メーカーの生産停止が景気回復の下押しリスクに

地域シンクタンク・モニター定例調査

近畿の2023年10~12月期の経済動向は、個人消費は持ち直しの動きに一服感がみられ、輸出もマイナスが続くなど内需・外需ともに回復が鈍いことから【やや悪化】となった。1~3月期の見通しも、大手自動車メーカーの生産停止もあって鉱工業生産指数が低下したことなどから【やや悪化】の見込み。雇用指標は、10~12月期実績については、現金給与総額が実質値でマイナスが続いていることから【やや悪化】。1~3月期見通しは雇用統計の動きをもとに【横ばい】としている。

<経済動向>

個人消費は百貨店が好調も持ち直しの動きに一服感

10~12月期について、近畿地域の家計部門の動向をみると、持ち直しの動きに一服感がみられる。消費者態度指数は前期比マイナス0.5ポイントの35.7で、2四半期連続の悪化。住宅市場では、新設住宅着工戸数が前年同期比マイナス8.9%で、3四半期連続で前年同期を下回った。持家が同マイナス13.5%、貸家が同マイナス10.8%、分譲が同プラス3.4%となっている。

大型小売店販売額は前年同期比プラス5.8%となり、9四半期連続で前年を上回った。内訳をみると、百貨店が同プラス11.0%と大幅に増えたほか、スーパーマーケットが同プラス2.2%などとなっている。百貨店は購入単価の上昇とインバウンド需要による客足の回復で売上が伸びた。スーパーマーケットは主力品目の飲食料品の値上がりで販売額が増加している。

輸出は半導体部品の需要減により3四半期連続で前年下回る

景況感について日銀短観(12月)をみると、業況判断DIは11で前期から5ポイント上昇した。改善は2期ぶり。業種別では製造業が4(前期比プラス7ポイント)、非製造業が16(同プラス2ポイント)となっている。

貿易は輸出入ともに弱い動きが続いている。当期の輸出額は前年同期比マイナス5.9%で、3四半期連続で前年を下回った。アジア向けの半導体電子部品の需要減少が影響した。輸入は資源高の落ち着きをうけて同マイナス13.2%だった。

公共工事費は前年同期比プラス5.9%で、大阪・関西万博関連の需要を背景に引き続き堅調となっている。

これらを勘案し、モニターは「内需・外需ともに回復の動きが鈍くなっており、足踏みが続いている」などと指摘。10~12月期の判断を【やや悪化】とした。

輸送機械の鉱工業生産指数が2割低下

1~3月期の見通しについても、モニターは「生産回復の遅れが景気の下押しリスクとなる」として【やや悪化】と判断した。

1月の大型小売店販売額は前年同月比プラス5.9%と28カ月連続で増加した。百貨店が同13.2%と好調が続く。

景況感をみると、2月の「景気ウォッチャー調査」の現状判断DIは53.5で、前月比3.4ポイント上昇している。能登半島地震の影響が和らいだことや好調なインバウンド需要の影響もあり、サービス関連を中心に改善した。

生産動向をみると、1月の鉱工業生産指数(速報値)は93.7で前月比マイナス6.5%となっている。業種別では、輸送機械、汎用・業務用機械や金属製品などが減産した一方、生産用機械や電気・情報通信機械が増産となった。なお、輸送機械は大手自動車メーカーの生産停止の影響で、同マイナス20.9%と大幅に減少した。

1月の新設住宅着工戸数は前年同月比マイナス19.0%で、8カ月連続で減少している。2月の新築分譲マンション契約率(売却戸数/発売戸数)は70.7%(前月比プラス0.1ポイント)で、2カ月ぶりに改善した。

<雇用動向>

現金給与総額の実質値は21カ月連続でマイナス

10~12月期の雇用実績について、モニターは「幅広い業種で求人が減少している」「実質賃金の目減りが続いている」ことから【やや悪化】と判断した。

雇用統計をみると、有効求人倍率は1.17倍で前期から0.02ポイント低下、新規求人倍率は2.21倍で前期から0.08ポイント低下となっている。完全失業率(モニターによる季節調整値)は2.8%で前期比マイナス0.3ポイントとなり、2四半期ぶりに改善した。

現金給与総額(モニター推計)は10月が前年同月比プラス1.9%、11月が同マイナス0.6%となっている。物価の影響を除いた実質値は10月が同マイナス1.8%、11月が同マイナス3.8%で、実質値では21カ月連続でマイナスとなった。

1~3月期の雇用の見通しについては、「サービス業を中心に労働需要の動きが低調」とみて【横ばい】と判断している。

1月の新規求人倍率は2.28倍で、前月比プラス0.10ポイントとなっている。新規求人数は同プラス0.6%、新規求職者数は同マイナス3.7%となっている。新規求人数を業種別にみると、製造業(前年同月比マイナス10.4%)や宿泊業・飲食サービス業(同マイナス4.3%)、卸売業・小売業(同マイナス4.7%)がマイナスとなった一方で、生活関連サービス業・娯楽業(同プラス10.6%)と情報通信業(同プラス9.6%)は好調となっている。