【北海道】半導体工場の新設を受け、道庁が地域経済活性化の指針案を公表

地域シンクタンク・モニター定例調査

北海道の2023年10~12月期の地域経済は、個人消費が緩やかに持ち直しているほか、外国人観光客が大幅に増加して【やや好転】。1~3月期の見通しは、日銀短観やモニター実施の動向調査の結果から【やや悪化】と判断している。10~12月期の雇用動向は、雇用統計や日銀短観の雇用人員判断の動きから【横ばい】と判断。1~3月期の雇用見通しは、人手不足感がさらに強まるとみて【やや好転】としている。雇用に関しては、大手半導体メーカーの工場が千歳市に建設されることを受け、北海道庁は地域経済活性化の指針の最終案を公表。理工系人材の道外への流出抑制を掲げている。

<経済動向>

外国人観光客が大幅増

日銀短観(2023年12月調査)によると、全体の業況判断は12で、前回9月調査から2ポイント改善した。業種別にみても、製造業が2で前期比プラス5ポイント、非製造業が15で同プラス2ポイントといずれも改善している。

分野別の動向をみると、個人消費は物価の影響を受けつつも緩やかに持ち直している。当期の販売額はホームセンター(前年同期比マイナス1.8%)が低下したものの、ドラッグストア(同プラス6.3%)や、百貨店(同プラス4.7%)、スーパーマーケット(同プラス4.4%)、コンビニエンスストア(同プラス3.9%)、家電大型専門店(同プラス2.7%)では増加した。

観光関連をみても、国内来道客数は前年同期比プラス10.6%となったほか、外国人入国者数は同プラス185.7%で大幅な伸びを記録した。

当期の新車登録台数は前年同期比プラス10.7%で大きく増加している。

なお公共投資は、当期の公共工事請負金額が前年同期比プラス4.1%で、3四半期連続で前年を上回った。

このように日銀短観で改善がみられたことなどから10~12月期の地域経済を【やや好転】と判断した。

先行きは非製造業で悪化の見込み

日銀短観(12月調査)での3月の先行き業況判断は6で、前期から6ポイント低下する見込み。業種別にみると、製造業が4で前期から2ポイント改善しているが、非製造業は6で前期から9ポイントの低下となっている。

モニターが実施した「道内企業の経営動向調査」をみても、当期の売上DIはマイナス7で前期比8ポイント低下の見通しとなっているほか、利益DIもマイナス13で同6ポイント低下の見通しとなっている。

1~3月期の見通しについては、日銀短観やモニターの調査結果から、【やや悪化】と判断した。

<雇用動向>

有効求人倍率は横ばいで推移

労働統計をみると、有効求人倍率は10月が1.03倍(前月比プラス0.01ポイント)、11月が1.01倍(同マイナス0.02ポイント)、12月が1.02倍(同プラス0.01ポイント)と横ばいで推移している。10~12月期の完全失業率(原数値)は2.7%で、前年同期(2.7%)と変わらない。

日銀短観(12月調査)の雇用人員判断はマイナス49の「不足」超で、前期から4ポイント低下している。業種別にみると、製造業がマイナス40で前期比4ポイント低下、非製造業がマイナス52で同5ポイント低下と「道内の人手不足感は引き締まりが続いている」。

モニターは、日銀短観では人手不足感の引き締まりがみられるものの、労働統計は横ばいで推移していることから10~12月期の雇用を【横ばい】と判断した。

人手不足感はさらに強くなる見込み

1~3月期の見通しについては、日銀短観などの動きをもとに【やや好転】と判断した。

日銀短観(12月調査)での3月先行きの雇用人員判断はマイナス52で、前期から3ポイント低下して人手不足感がさらに強くなる見込み。業種別では、製造業がマイナス42で前期比2ポイント低下、非製造業もマイナス55で同3ポイント低下となっている。1月の有効求人倍率は1.04倍で前月から0.02ポイント上昇している。

理工系人材の道内定着を

道内の雇用に関する動向をみると、次世代半導体の国産化を目指すラピダスが千歳市に工場を建設し、2025年に試作ラインが稼働を予定している。こうした動きをふまえ、北海道庁は地域経済の活性化につなげる指針「北海道半導体・デジタル関連産業振興ビジョン」の最終案を明らかにした。

道内の理工系の大学・高等専門学校を卒業した学生の道内就職率(2023年)が40%となっているほか、大学院卒では17%にとどまっており、理工系人材が道外に流出している。指針案は2034年の目標値として、それぞれ50%、25%への引き上げを掲示。半導体関連企業の雇用者数を2022年時点の6,900人から2033年には1万2,600人まで増やすことを目指すとしている。

なお、北海道電力とその子会社である北海道電力ネットワークはラピダス関連業務の増加を見込んで、2025年度の採用計画人数を2024年度から5割増やすことを公表している。