2021年にボランティア活動をした人は約17%。60歳以上では2割超に
 ――内閣府「市民の社会貢献に関する実態調査報告書」からみるボランティア活動の現状

実態調査

内閣府が9月に公表した「市民の社会貢献に関する実態調査」(2022年度)の報告書によると、2021年の1年間にボランティア活動をしたことがある人の割合は約17%となっている。同割合は会社員に限ってみると約14%に低下。ただ、年代別にみると、60歳以上の年齢層では2割を超える。活動に参加した理由(複数回答)では、「社会の役に立ちたいと思ったから」(約59%)が最も回答割合が高く、自己啓発を理由にあげる人も比較的多い。

同調査は、郵送調査とオンライン調査の併用で実施。調査対象は、全国に居住する満20歳以上の男女8,200人。抽出は、地区、年齢層の層化2段階無作為抽出法をとっている。2022年11月18日~12月30日に実施し、3,170人(40.3%)の有効回答を得た。なお、以下の数値は、無回答者がいる設問ではそれを除いての集計結果。

男性のほうがやや高い活動経験の割合

報告書によると、2021年の1年間にボランティア活動を「したことがある」人の割合は、17.4%と2割を少し下回る程度。男女別にみると、男性が19.0%、女性が16.0%で、男性のほうがやや割合が高くなっている。

ボランティア活動の経験の有無を婚姻状況別にみると、「したことがある」人の割合は独身が14.7%、既婚が18.7%と、既婚のほうが4ポイント高い。

会社員は公務員や自営業よりも割合が下がる

職業別で経験割合に差が出ているのかを確認すると、「公務員・団体職員(教職員を含む)」(27.3%)と「自営業・家族従業者(農業・漁業を含む)」(26.4%)が20%台後半なのに対し、「会社員」は13.9%と、前二者と比べると経験割合が10ポイント以上下がる。これらの職業以外では、「医師・弁護士等の資格職」が18.1%、「派遣・契約社員、パートタイム従業員、アルバイト」が14.4%などとなっている。

世帯の年間収入別にみると、「800万円以上1,000万円未満」(21.2%)と「300万円以上500万円未満」(20.1%)の年収層が20%超となっており、これらに次いで、「1,000万円以上」が19.7%、「600万円以上800万円未満」が17.5%、「500万円以上600万円未満」が16.7%、「300万円未満」が13.9%という順。経験した人が多い年収層には、高所得層と、低・中所得の中間層という2つの山がある状況がうかがえる。

年代が上がるほど高くなる経験した人の割合

年代別でははっきりした回答傾向がみられた。「20~29歳」が14.9%、「30~39歳」が14.1%、「40~49歳」が15.9%、「50~59歳」が15.4%、「60~69歳」が20.3%、「70歳以上」が21.1%で、おおむね年齢が高くなるほど経験した人の割合が高い(図表1)。

図表1:2021年の1年間にボランティア活動を「したことがある」人の割合 年代別
画像:図表1

(公表資料から編集部で作成)

活動分野のトップはまちづくり・まちおこし

2021年にボランティア活動をした人のボランティア活動に参加した分野(複数回答)は、「まちづくり・まちおこし」が25.6%で最も回答割合が高く、次いで「子ども・青少年育成」(25.0%)、「地域安全」(22.1%)、「保健・医療・福祉」(19.5%)、「自然・環境保全」(17.7%)、「芸術・文化・スポーツ」(17.3%)などの順で高くなっている。

ボランティア活動に参加した理由(複数回答)は、「社会の役に立ちたいと思ったから」が59.1%で特に割合が高く、次いで「自己啓発や自らの成長につながると考えるため」(34.3%)、「自分や家族が関係している活動への支援」(25.4%)、「その他」(12.3%)、「職場の取り組みの一環として」および「知人や同僚等からの勧め」(ともに11.4%)などの順となっている(図表2)。

図表2:ボランティア活動に参加した理由(複数回答)
画像:図表2

(公表資料から編集部で作成)

男女ともに参加のネックとなるのは時間がないこと

ボランティア活動への参加の妨げとなることがあるか尋ねた結果(複数回答)を男女別にみると、男性では、最も回答割合が高いのは「参加する時間がない」(45.4%)で、以下、「ボランティア活動に関する十分な情報がない」(41.1%)、「参加するための休暇が取りにくい」(27.1%)、「参加する際の経費(交通費等)の負担」(25.6%)などと続く(図表3)。

図表3:ボランティア活動への参加の妨げとなる要因(複数回答)
画像:図表3

(公表資料から編集部で作成)

女性も上位はほぼ同じで、「参加する時間がない」が45.3%、「ボランティア活動に関する十分な情報がない」が40.6%、「参加する際の経費(交通費等)の負担」が21.0%。男女の回答状況を比べると、男性で「参加するための休暇が取りにくい」の割合(27.1%)が女性よりも高いのが目立つ(女性は17.8%)。

NPO法人に関心がある層は4割を下回る

NPO法人に対する関心について尋ねた結果をみると、「とても関心がある」が4.7%、「少し関心がある」が32.3%、「あまり関心がない」が44.5%、「まったく関心がない」が18.5%で、関心がある層(「とても関心がある」+「少し関心がある」)は37.0%と、4割をやや下回る程度となっている。

公益法人に対する認知の状況をみると、「知らない」が41.4%を占めて最も割合が高く、「制度も具体的な公益法人の名前も知らないが、公益法人という言葉は聞いたことがある」が40.2%で同じく4割台となっており、認知度はそれほど高くない状況がうかがえる。「公益法人という言葉も制度もよく知っている」は3.7%にとどまり、「制度はよく知らないが、具体的な公益法人の名前は知っている」が14.7%となっている。

若い人ほどインターネットが認知のきっかけに

公益法人を認知したきっかけは、「テレビや新聞等で公益法人の活動が紹介されていた」が56.5%で最も高く、「掲示されているポスターやパンフレットを見た」が22.8%、「インターネット(公益法人のホームページ以外)で公益法人の活動が紹介されていた」が18.3%、「関心のある活動を行っている団体が公益法人だった」が8.3%、「公益法人のホームページを見た」が7.0%など。

年代別にみると、「テレビや新聞等で公益法人の活動が紹介されていた」の回答割合が「70歳以上」でだけ、6割を超えている(61.3%)。また、「掲示されているポスターやパンフレットを見た」の回答割合は「70歳以上」が24.4%で最も高い(例えば他の年代は「20~29歳」が19.9%など)。「インターネット(公益法人のホームページ以外)で公益法人の活動が紹介されていた」の回答割合は、おおむね若い人ほど高くなっており、「20歳~29歳」での同割合は29.8%とほぼ3割に及んでいる。

(調査部)

2023年12月号 実態調査の記事一覧