「精神障害」の労災請求件数が2年連続、支給決定件数が4年連続の増加
 ――2022年度「過労死等の労災補償状況」

労働災害をめぐる最新状況

厚生労働省が6月30日に公表した2022年度「過労死等の労災補償状況」によると、労災請求件数は、「脳・心臓疾患」に関する事案で対前年度比50件増の803件、「精神障害」に関する事案で同337件増の2,683件と、ともに増加した。「精神障害」での請求件数は2年連続、支給決定件数は4年連続の増加となっている。

労災請求件数は「脳・心臓疾患」「精神障害」合わせて3,486件

厚生労働省は、2022年度に過重な仕事が原因で発症した「脳・心臓疾患」や、仕事による強いストレスが原因で発病した「精神障害」の状況について、労災請求件数や労災保険支給決定件数をとりまとめた。それによると、「脳・心臓疾患」「精神障害」を合わせた、いわゆる過労死等による労災請求件数は3,486件で、前年度に比べ387件増加した。支給決定件数は904件で、同103件の増加となった。

脳・心臓疾患に関する事案では「運輸業、郵便業」の件数の多さが目立つ

「脳・心臓疾患」に関する事案の請求件数を詳細にみると、請求件数は803件で、前年度に比べ50件増加。支給決定件数は194件で、同22件の増加となった。

これを業種別にみると、請求件数は「運輸業、郵便業」が172件で最も多く、次いで「卸売業、小売業」が116件、「サービス業(他に分類されないもの)」が111件、「建設業」が93件などとなっている。支給決定件数では、「運輸業、郵便業」が56件で最も多く、「建設業」が30件、「卸売業、小売業」が26件、「宿泊業、飲食サービス業」が19件などの順で多い。

業種をさらに中分類まで詳しくみると、請求件数、支給決定件数ともに、「道路貨物運送業」(請求:133件、支給決定:50件)が最も多かった。

職種では請求件数、支給決定件数ともに「輸送・機械運転従事者」が最多

職種別にみると、請求件数では「輸送・機械運転従事者」(155件)、「サービス職業従事者」(130件)、「販売従事者」(92件)、「専門的・技術的職業従事者」(85件)などの順で多くなっている。支給決定件数では「輸送・機械運転従事者」(57件)、「専門的・技術的職業従事者」および「サービス職業従事者」(ともに27件)、「管理的職業従事者」および「販売従事者」(ともに19件)などの順で多い。

職種を中分類まで詳しくみると、「自動車運転従事者」(請求:144件、支給決定:57件)が請求件数、支給決定件数ともに最も多くなっている。

年齢別にみると、請求件数では「50~59歳」が303件で最も多く、次いで「60歳以上」が283件、「40~49歳」が164件などとなっており、40歳以上が全体の9割以上を占める。支給決定件数は「50~59歳」が67件、「40~49歳」が58件、「60歳以上」が49件などの順で多くなっている。

時間外労働時間の傾向をみると、支給決定件数は「評価期間1カ月」では「100時間以上~120時間未満」が25件で最多、「評価期間2~6カ月における1カ月平均」では「60時間以上~80時間未満」が45件で最多となっている。

精神障害事案の請求件数が最も多い業種は「医療、福祉」

「精神障害」に関する事案の請求件数を詳細にみると、請求件数は2,683件で前年度より337件増加し、うち未遂を含む自殺の件数は12件増加して183件だった()。支給決定件数は710件で前年度比81件増と大きく増加した。うち未遂を含む自殺の件数は同12件減の67件だった。請求件数は2年連続、支給決定件数は4年連続の増加となっている。

図:「精神障害」の請求、支給決定件数の推移
画像:図

(公表資料から編集部で作成)

業種別にみると、請求件数は、「医療、福祉」が624件で最も多く、「製造業」が392件、「卸売業、小売業」が383件、「その他の事業」が264件、「運輸業、郵便業」が246件などと続く。支給決定件数でも「医療、福祉」が164件で最も多くなっており、「製造業」が104件、「卸売業、小売業」が100件、「その他の事業」が69件などの順で多い。

業種を中分類まで詳しくみると、「社会保険・社会福祉・介護事業」(請求:327件、支給決定:85件)が請求件数でも、支給決定件数でも最も多くなっており、「医療業」(請求:294件、支給決定:79件)がどちらの件数も2番目に多くなっている。

職種では請求件数、支給決定件数ともに専門的・技術的職業従事者が最多

職種の状況をみると、請求件数は「専門的・技術的職業従事者」が699件、「事務従事者」が566件、「サービス職業従事者」が373件、「販売従事者」が308件などとなっている。支給決定件数は「専門的・技術的職業従事者」が175件で最も多く、「事務従事者」が109件、「サービス職業従事者」が105件、「販売従事者」が87件、「生産工程従事者」が82件などの順で多い。

年齢別にみると、請求件数は「40~49歳」(779件)、「30~39歳」(600件)、「50~59歳」(584件)などの順で多い。支給決定件数は「40~49歳」(213件)、「20~29歳」(183件)、「30~39歳」(169件)などの順で多くなっている。

時間外労働時間別(1カ月平均)の傾向をみると、支給決定件数は「20時間未満」が87件で最も多く、「100時間以上~120時間未満」(45件)が次いで多い。

支給決定件数の内訳を、発病に関与した事象別に類型化すると、「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」が147件と最も多く、「悲惨な事故や災害の体験、目撃をした」が89件、「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」が78件などと続く。

裁量労働制対象者の「精神障害」は8件

2022年度の裁量労働制対象者への支給決定件数は、「脳・心臓疾患」で3件、「精神障害」で8件だった。どちらの支給決定事案も、専門業務型裁量労働制を対象とするものだった。

(調査部)