労働組合が社会を動かしていく「けん引役」として一定の役割を果たしたと総括
 ――連合の「2022春季生活闘争まとめ」

2022年の賃上げの最終結果

連合(芳野友子会長)は8月25日の中央闘争委員会で、「2022春季生活闘争まとめ」を確認した。約4割の組合が賃上げを獲得し、獲得割合が2014闘争に次いで高くなったことを「評価できる」とし、「労働組合が社会を動かしていく『けん引役』として一定の役割を果たすことができた」と最終総括した。

連合の最終集計での賃上げ率は2.07%

「2022春季生活闘争まとめ」(以下、まとめ)は、6月末時点の最終回答集計をふまえて総括した。最終集計では、平均賃金方式での定昇相当込み賃上げ額の加重平均は6,004円。賃上げ率は2.07%で、3年ぶりに2%台となった※最終回答集計結果については、当機構発行のメールマガジン労働情報2022年7月8日付「賃上げ率は2.07%で3年ぶりに2%台に回復/連合の2022春季生活闘争の最終回答集計」で詳報

まとめは、全体的な受け止めについて、「産業による違いはあるものの、2,021組合・39.9%が賃上げを獲得し、割合では2014闘争に次いで高い数字となったことは評価できる」とし、今年はコロナ禍や燃料・資材価格の高騰などの状況のなかでの交渉となったものの、「中長期的視点を持って『人への投資』と月例賃金にこだわり、『働きの価値に見合った賃金水準』を意識して粘り強く交渉した結果であり、労働組合が社会を動かしていく『けん引役』として一定の役割を果たすことができたと受け止める」と評価した。

中小の賃上げでは「全体として健闘した」と評価

中小組合による格差是正の取り組みについても、「賃上げ分を分離した集計を開始した 2015 闘争以降で額・率ともに最も高くなったこと、定昇込みの金額の分布でみても上方にシフトしていることなど、全体として健闘したといえる」と肯定的に評価した。また、有期・短時間・契約等労働者の賃上げについては、賃上げ率が一般組合員を上回ったことから、「格差是正に向けて一歩前進した」と記した。

その一方で、交渉が進むと同時に消費者物価指数が上昇する展開となったことから、「継続的な賃上げにより、『実質賃金の長期低下傾向を反転させる』ことをめざした方針の実現をはかる必要がある」とし、名目賃金だけでなく、実質賃金でも賃上げを確保していく取り組みの必要性に言及した。

今後も継続的な「人への投資」が必要と強調

今後に向けた課題について、まとめは、「超少子・高齢化により生産年齢人口の減少が不可避である中、将来にわたり人材を確保・定着させ、社会全体の生産性を高めていくには、継続的な『人への投資』が必要」と強調するとともに、「国際的に見劣りのする日本の賃金水準、マクロの生産性と賃金の乖離、実質賃金の長期低下傾向、格差是正などの課題を解決するには、労働条件の根幹である月例賃金にこだわり、情勢の変化を踏まえた適切な賃上げを継続的に実現することが必要」と訴えた。

2023闘争に向けては、国際情勢、輸入物価の上昇などとりまく情勢も大きく変化していることから、「情勢を冷静に見極めつつ、政労使で中期的・マクロ的な視点から問題意識を共有し、国民経済を安定的な成長軌道に乗せ、デフレ経済に後戻りさせない状況をつくり、定着させていかなければならない」とした。また、「経済の後追いではなく未来に向けて、経済・社会の活力の原動力となる『人への投資』を行う」と述べ、来年も未来指向の春闘を展開する意気込みを示した。

(調査部)

2022年10月号 2022年の賃上げの最終結果の記事一覧