8割弱の看護職員がコロナ禍で「感染への恐怖・不安」を感じたと回答。若い世代での就業継続意欲の低下も
 ――日本看護協会の「2021年看護職員実態調査」結果

国内トピックス

日本看護協会(福井トシ子会長)が看護職員を対象に行った「2021年看護職員実態調査」の結果によると、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴って受けた影響として、8割弱が感染への恐怖や不安をあげ、労働環境の悪化が次いで多かった。また、7割が看護職員として働き続けたいとしたものの、若い世代で就業継続の意欲が低くなっている状況がうかがえる。

調査は、同協会の会員である看護師、助産師、保健師、准看護師を対象に、2021年10月1日~11月10日に実施。5,121人から回答を得た(回収率35.5%)。

7割がコロナ対応業務に従事し半数で残業が増加

2020年3月から2021年9月までの1年半の間に、新型コロナウイルス感染症対応に関する業務に従事した人は70.7%と7割を超えた。「従事した」と答えた人を対象に、もっとも負荷が高かった時期の労働環境について尋ねたところ、超過労働時間については、「増えた」が55.3%、「変わらない」が40.0%だった。

夜勤やオンコールの回数や時間については、「増えた」としたのが25.2%、「変わらない」は48.9%。それらの業務の偏り具合について聞いたところ、「一部の職員への偏りが大きくなった」としたのが30.3%、「変わらない」は46.7%だった。患者・利用者トラブル対応については、「増えた」が40.1%、「変わらない」は37.3%だった。

また、新型コロナウイルス感染症の流行によって、自身にどのような影響があったかを聞いたところ(複数回答)、最も回答割合が高かったのは「自分自身が感染するのではないかという恐怖・不安」(78.6%)で、8割近くが感染への恐怖をあげた()。次いで高いのは「職場の労働環境の悪化」(48.8%)となっており、「自分自身に対する周囲からの差別・偏見・心ない言葉」(19.6%)、「職場の人間関係の悪化」(15.7%)、「子どもが通う学校・保育園等の休校(園)等への対応」(15.2%)などと続く。

図:新型コロナウイルス感染症の流行に伴う影響(複数回答)
画像:図
画像クリックで拡大表示

(プレスリリースをもとに作成)

長引く感染症対応で心身に疲労感深まる

2020年3月以前と比べて、心身にどのような変化を感じたかについても聞いている。「生活に充実感や楽しみがない」を「(とても・やや)増えた」としたのが64.5%。また、「いつも体が疲れている」では同56.8%だった。「気持ちが落ち着かない(不安感や緊張感、イライラ等)」では同47.8%、「将来に希望が持てない」では同44.9%となっており、コロナ禍のなか、医療現場の最前線で働く看護職員がメンタル面でも、またフィジカル面でも疲労を深めている様子がうかがえる。調査結果をとりまとめた日本看護協会は、「長引く感染症対応が看護職員の健康状態に長期的に影響を与えていると考えられる」と指摘している。

20代で就業継続意向が低い

今回の調査では、看護職員としての就業継続の意向についても調査している。「看護職として働き続けたいか」を尋ねたところ、「とてもそう思う」25.4%、「ややそう思う」42.2%と7割弱が就業を継続したいとしている一方、「全くそう思わない」3.4%、「あまりそう思わない」16.2%と2割弱が否定的だった。

これを年齢別にみると、20~29歳では「全く(6.0%)、あまり(21.9%)そう思わない」と、他の世代に比べ就業継続意向が低い結果があらわれた。前回の2017年調査でも20代の就業継続意向が低かったことから、日本看護協会は「引き続き若い世代の就業継続の促進に取り組む必要があると考えられる」としている。

看護職員の職場の労働環境についても尋ねている。2021年9月に超過勤務を「した」のは78.4%で、超過勤務をした正規職員の平均時間は17.4時間。超過勤務をした人の主な勤務先をみると、「行政」が34.1時間と平均の倍近くとなっている。特に「行政」で超過勤務時間が長くなっていることについて、日本看護協会は、保健師の新型コロナウイルス感染症対応が背景にあるのではないかとしている。

(調査部)