約3割の労働者が現在の労働時間を減らしたいと回答
 ――厚生労働省の「働き方改革関連法施行後5年の総点検」の調査結果

スペシャルトピック

厚生労働省は3月5日、2019年に施行された働き方改革関連法の施行後5年の状況を把握するために実施した労働者アンケート調査(2025年度労働時間等に関する労働者の意識・意向調査)および企業・労働者を対象としたヒアリング調査の結果を公表した。アンケート調査結果では、約3割の労働者が労働時間を減らしたいと考えており、その理由では6割超が「自分の時間を持ちたい」をあげている。また、妥当だと考える時間外労働等の時間(時間外労働と休日労働を合わせた時間)では、20時間以下が妥当と考える割合が6割超にのぼる。

これらの調査は、2025年6月に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025改訂版」などで、「施行後5年の総点検を行い、働き方の実態とニーズを踏まえた労働基準法制の見直しについて労働政策審議会で検討する」とされたことをふまえて実施したもの。アンケート調査は、モニター調査会社に登録している労働者(都道府県別に割付)を対象に2025年10月に調査し、回答数3,000を回収した。ヒアリング調査は同年10月~12月に、企業327社と、一部のヒアリング対象企業の労働者97人に対して実施した。

〈アンケート調査結果〉

週所定労働時間「40時間超」の労働者では約4割が労働時間が多いと回答

労働者を対象とするアンケート調査の結果からみていくと、労働時間の長さをどのように感じているかについては、「多い」が7.9%、「やや多い」が18.4%、「ちょうどよい」が59.7%、「やや少ない」が7.3%、「少ない」が6.6%となっている。

これを週の所定労働時間別にみると、「多い」の割合と「やや多い」の割合は、所定労働時間が「40時間超」の労働者ではそれぞれ15.4%、23.0%、「35時間超40時間以下」の労働者ではそれぞれ7.2%、21.5%と、35時間超の労働者で特に高くなっている。

週の平均実労働時間別(所定労働時間のほか、時間外労働や休日労働も合わせた1週間における平均的な労働時間数)にみると、「多い」の割合と「やや多い」の割合は、「40時間超50時間以下」ではそれぞれ7.9%、24.4%、「50時間超60時間以下」では22.1%、34.1%、「60時間超70時間以下」では38.6%、17.5%、「70時間超」では42.3%、9.6%と、50時間超の労働者区分ではいずれも半数以上が、労働時間が多いと考えている。

産業別にみると減らしたい労働者の割合は「学術研究、専門・技術サービス業」が最多

現在の労働時間に対する増減希望をみると、「減らしたい」が11.7%、「やや減らしたい」が18.2%、「このままでよい」が59.5%などとなっており、「減らしたい」と「やや減らしたい」の合計割合は約3割となっている。なお、「やや増やしたい」は7.3%で、「増やしたい」は3.2%だった。

これを産業別にみると、「減らしたい」の割合は「学術研究、専門・技術サービス業」が19.6%で最も高く、次いで「情報通信業」(17.9%)、「不動産業、物品賃貸業」(16.4%)、「電気・ガス・熱供給・水道業」(15.2%)などとなっている(図表)。

図表:産業別にみた労働時間の増減希望
画像:図表1
画像クリックで拡大表示

注:産業ごとの回答数が小さいことに留意が必要。

(公表資料から編集部で作成)

週所定労働時間35時間超の労働者の3割超は労働時間の減少を希望

現在の労働時間に対する増減希望を、週の所定労働時間別にみると、「減らしたい」の割合と「やや減らしたい」の割合は、「40時間超」(それぞれ19.8%、20.2%)と「35時間超40時間以下」(同12.6%、21.6%)の労働者で特に高く、両時間区分では減らしたいと考える労働者が3割を超えている。一方、「増やしたい」と「やや増やしたい」の割合はそれぞれ、所定労働時間の長さに関係なくいずれの区分も1割台以下となっている。

平均実労働時間が50時間超の労働者のうち労働時間を減らしたい割合は5割超に

次に、週の平均実労働時間別にみると、「50時間超60時間以下」では「減らしたい」24.8%、「やや減らしたい」28.8%、「60時間超70時間以下」ではそれぞれ35.1%、26.3%、「70時間超」ではそれぞれ42.3%、13.5%と、いずれも、減らしたいと考える人の合計割合が5割超にのぼっている。一方、「増やしたい」または「やや増やしたい」の割合は、比較的割合が高かった時間区分でも、「20時間超30時間以下」がそれぞれ4.8%、10.6%、「10時間超20時間以下」がそれぞれ4.3%、10.4%となっており、増やしたい人の合計割合は15%程度にとどまっている。

月の時間外労働等の時間別(直近3カ月平均)にみると、「減らしたい」と「やや減らしたい」の合計割合は、10時間超の時間区分ではいずれも3割超にのぼった。

割増賃金が払われていない労働者の半数は労働時間を減らしたいと考える

また、割増賃金の支払い状況別にみると、割増賃金が「すべて払われている」労働者では、労働時間を「減らしたい」(9.2%)または「やや減らしたい」(15.1%)と考えている割合は合わせても2割台にとどまるが、「一部は払われている」(「減らしたい」16.4%、「やや減らしたい」31.9%)、「ほとんど払われていない」(同14.9%、30.7%)、「全く払われていない」(同26.9%、25.7%)ではいずれも4~5割台となっている。

副業・兼業の有無別でみると、「副業・兼業は行っていない」労働者のうち、労働時間を「減らしたい」(12.0%)または「やや減らしたい」(17.1%)と考えている割合は合わせて3割弱となっているのに対し、「本業の関連会社で副業・兼業を行っている」(「減らしたい」10.4%、「やや減らしたい」27.0%)、「本業の関連会社以外で副業・兼業を行っている」(同9.3%、27.3%)はいずれも3割を超え、やや高くなっている。

労働時間を増やしたい理由で多いのは「稼ぎたい」や「自分のペースで仕事をしたい」

労働時間を「減らしたい」「やや減らしたい」と回答した労働者に、その理由を尋ねると(複数回答)、「自分の時間を持ちたいから」が66.7%で突出して高く、次いで「自分の健康を害しないため」(39.6%)、「長時間労働をしても収入が割に合わないから」(30.0%)などで高くなっている。

一方で、労働時間を「増やしたい」「やや増やしたい」と回答した労働者における理由(複数回答)では、「たくさん稼ぎたいから(「所定労働時間以外の労働分の収入(残業代)がないと家計が厳しいから」を除く)」が41.6%で突出して高く、「自分のペースで仕事をしたいから」が19.7%、「所定労働時間以外の労働分の収入(残業代)がないと家計が厳しいから」が15.6%などと続く。

労働時間は「このままでよい」と回答した労働者の理由(複数回答)では、「自分の仕事と生活のバランスを変えたくないから」(44.3%)や「収入を維持したいから」(32.0%)などが高くなっている。

また、妥当だと考えるひと月あたりの時間外労働等の時間をみると、「0時間」が21.7%、「0時間超10時間以下」が28.8%、「10時間超20時間以下」が15.1%、「20時間超30時間以下」が10.5%、「30時間超40時間以下」が9.4%、「40時間超45時間以下」が7.5%などとなっており、20時間以下が妥当だと考える割合は6割超、45時間以下が妥当だと考える割合は9割超にのぼった。

〈ヒアリング調査結果〉

労働時間を減らしたい企業では「人材確保・定着」などを理由にあげる

企業327社に対するヒアリング調査の結果をみると、現状の労働時間をどのように考えているかでは、「現状のままがいい」と回答した企業が201社、「減らしたい」と回答した企業が73社、「増やしたい」と回答した企業が53社となっている。

「現状のままがいい」と回答した企業の理由(複数回答)では、「現在の労働時間で従業員の満足度も高い」などとする、「現在の業務量」に関する理由をあげる回答が178社で最も多く、ほかにも「健康確保・ワークライフバランス」(22社)、「人材確保・定着」(20社)などに関する理由が多くなっている。

「減らしたい」と回答した企業の理由(複数回答)では、「労働時間が長いと、若手や家庭を持つ人材が定着しにくい」などの、「人材確保・定着」に関する理由をあげる企業が22社あるほか、「労働者の健康確保・ワークライフバランス」(18社)、「人件費抑制」(9社)などに関する理由も多くあがった。

労働時間を増やしたいと答えた企業の半数は、上限規制の枠内での増加を希望

一方、「増やしたい」と回答した企業の理由では、「天候の影響による作業遅延、計画変更が発生する場合は増やしたい」などの「業務の性質」に関する理由をあげる企業が29社で最も多く、ほかにも「受注量を増やすこと」(9社)、「労働者の希望」(9社)、「人手不足」(7社)、「仕事の完成度や技術を上げること」(5社)などに関する理由が多くなっている。

また、「増やしたい」と回答した企業53社のうち、上限規制の枠(月100時間・複数月平均80時間、年720時間等)の範囲内で増やしたい企業は25社、上限規制の枠を超えて増やしたい企業は17社、時間外・休日労働に関する協定の特別条項の原則である月45時間・年6回を超えて増やしたい企業は11社となっている。

労働者から「労働時間を増やしたい」との声があがることがあるかどうかを尋ねると、327社中140社では声があがっており、187社では声があがっていなかった。

ヒアリングした労働者の7割は労働時間について「現状のままがいい」と回答

労働者97人へのヒアリング調査の結果では、現状の労働時間をどのように考えているかについて、「現状のままがいい」と回答した労働者は70人、「減らしたい」と回答した労働者は14人、「増やしたい」と回答した労働者は13人となっている。

「現状のままがいい」と回答した労働者の理由(複数回答)では、「現状への不満がないこと」(59人)に関する理由が圧倒的に多いほか、「残業をするまで仕事をしたくない」「体力的に今以上に働けない」といった内容もあがっている。「減らしたい」と回答した労働者の理由では「ワークライフバランス」(9人)に関する理由が多くなっている。

一方、「増やしたい」と回答した労働者の理由(複数回答)では、「繁忙期にはもっと働いて稼ぎたい」などの、「収入」に関する理由をあげる労働者が9人で最も多く、ほかにも「業務量」(4人)や「若手の教育」(3人)などに関する理由が比較的多くなっている。

「増やしたい」と回答した労働者13人のうち、上限規制の枠(月100時間・複数月平均80時間、年720時間等)の範囲内で増やしたい労働者は9人、上限規制の枠を超えて増やしたい労働者は3人、時間外・休日労働に関する協定の特別条項の原則である月45時間・年6回を超えて増やしたい労働者は1人だった。

(調査部)