<企業・業界団体調査 2025年10~12月期の業況実績/2026年1~3月期の業況見通し>
製造業の外需増とインバウンド需要で今期は改善。来期は、政治情勢の影響でインバウンド需要の頭打ちを見込む業種も

ビジネス・レーバー・モニター定例調査

JILPTが四半期ごとに実施している「ビジネス・レーバー・モニター調査」によると、2025年第4四半期(10~12月期)の業況実績は、「晴れ」の割合が前期から上昇するなど、全体でみれば改善となった。各モニターから寄せられた判断理由をみると、「晴れ」の業種では、製造業は外需が改善要因となっており、サービス業はインバウンド需要が好調。「うす曇り」「本曇り」の業種では、人手不足や価格転嫁の難しさを判断要因にあげるモニターが多い。次期(2026年1~3月期)の業況見通しは、「晴れ」が約7ポイント低下するなど悪化の見込み。インバウンド需要について、日中関係の悪化で頭打ちを見込む業種もある。

調査の趣旨

JILPTでは、企業および業界団体のモニターに対し、四半期ごとに業況の実績と次期の見通しを「快晴」「晴れ」「うす曇り」「本曇り」「雨」の5段階で聞き、企業モニターの回答の平均と業界団体の回答をさらに平均する(端数は四捨五入)ことで各業種の最終的な判断を算出している。そのため、個々の企業、業界団体の業況評価と必ずしも一致しない。

今回は2025年第4四半期(10~12月期)の業況実績と2026年第1四半期(1~3月期)の業況見通しについて調査した。回答は企業と業界団体の計51組織、41業種から得た。

なお、調査期間は2月9日~2月25日で、イスラエルと米国がイランへの攻撃を開始した2月28日以前となっている。

各企業・業界団体モニターの現在の業況

業況実績では今期は「晴れ」が10ポイント以上の上昇

2025年第4四半期の業況実績は、回答があった41業種中、「快晴」はゼロ、「晴れ」が13(業種全体に占める割合は31.7%)、「うす曇り」が16(同39.0%)、「本曇り」が11(同26.8%)、「雨」が1(同2.4%)()。前回調査の2025年第3四半期と比べると、「晴れ」が約14ポイント上昇しており、「快晴」と「晴れ」を合わせた割合でも約12ポイントの上昇となった。

製造業・非製造業別にみると、「快晴」は製造業・非製造業ともにゼロ。「晴れ」は製造業が5業種で非製造業は8業種。「うす曇り」は、製造業が9業種で非製造業が7業種となっている。これに対し、「本曇り」と「雨」の業種は、製造業では合わせて5業種となっており、非製造業では合わせて7業種となっている。

表:前期・今期の業況実績と来期の業況見通しの概要
画像:表
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図:調査開始以来の業況調査結果の推移
画像:図
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今期の業況の判断理由

今期、「快晴」と評価した業界はなかった。

「晴れ」と評価した業界は、【工作機械】【造船・重機】【金型】【鉄道】【建設】【商社】【情報サービス】【ホテル】【百貨店】【パン・菓子】【非鉄金属】【遊戯機器】【請負】の13業種となっている。

円安で製品が割安になり、外需が好調

【工作機械】の業界団体モニターによると、内需はやや低調気味だが、外需に勢いがある。外需が好調な要因としては、円安で日本製に割安感があるほか、諸外国で機械設備を対象とした各種施策が行われていることがあげられる。特定の産業によらず、どの産業でも引き合いがあり「好ましい状況であった」ことから、「晴れ」と判断した。

企業モニターは、機械事業では減収減益となったものの、素材事業は金属部門・電子部門・化成品部門で増収増益。事業・部門による業況差が依然としてあるため、「うす曇り」とした。

【造船・重機】は、精密機械・ロボット事業で中国の建設機械市場向け油圧機器の受注が増加した。

【金型】は、AI開発・データセンター建設の加速により、主力製品であるハードディスク関連部品の受注が増加している。

鉄道は観光・インバウンド需要で運輸収入が増加傾向

【鉄道】の業界団体モニターによれば、大手の鉄道会社を中心に通勤・通学需要が安定的に推移しているほか、観光・インバウンド需要の回復を背景に、運輸収入は前年同期比で増加傾向にあるという。また、不動産事業や流通・ホテル事業などの非運輸部門も業績を下支えしていることから「晴れ」と判断した。

企業モニターは、不動産事業における大型物件販売の反動減などにより、前年同期比で減収・減益となっているものの、生活サービス事業やホテル・リゾート事業が好調に推移しており、11月時点の業績予想を上回る水準となっているため、「晴れ」と判断した。

【建設】は、国内建設事業では多くの工事で収益性が向上しており、売上総利益率が改善した。海外では開発事業における物件売却が前年同期比で減少したものの、連結全体では大幅な増収増益となった。

商社は非資源分野が堅調

【商社】は大手7社のうち4社が前年同期比で増益となった。資源価格の下落の影響などがみられたものの、食料などの非資源分野が堅調に推移した。

【情報サービス】は、経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」で、売上高がプラスで推移していることを判断理由にあげた。

【ホテル】は、売上高・利益がいずれも前年同期を上回った。

【百貨店】は、国内顧客の売り上げがけん引して増収増益。第3四半期の営業利益としては過去最高を記録した。

食品は人手不足感が継続、労務費の転嫁も課題

「うす曇り」とした16業種では、主に人手不足や円安、価格転嫁の状況が判断要因にあがった。

【食品】の業界団体モニターは、「日銀短観」(12月調査)での食品製造業の景況判断DIが大企業=9(前回調査比プラス3)、中堅企業=13(同プラス3)、中小企業=2(同プラス1)と、プラス水準を維持していることから「晴れ」とした。ただし、人手不足感は継続しているほか、「引き続き労務費の転嫁や生産性向上を進めることが課題」だとしている。

企業モニターは、新商品の発売による市場の活性化を期待したものの、売上高・売上総利益・営業利益が前年同期を下回ったことから、「本曇り」と判断した。

エアコンの出荷が増加したものの、電気洗濯機がマイナス

【電機】の業界団体モニターは、重電機器について「一般産業向け汎用機器は、国内の製造業向けを中心に設備投資が堅調であり、電子部品や半導体などの設備投資減少の影響も徐々に回復している」と報告。白物家電機器は、国内出荷金額がルームエアコンで前年同期比プラス7.4%と増加となったものの、電気冷蔵庫は同マイナス4.7%、電気洗濯機も同マイナス1.6%と減少。全体では「うす曇り」と判断した。

企業モニター3社の回答をみると、A社は増収増益となったことから「晴れ」と判断。国内IT事業が堅調に推移しているほか、海外でのモビリティ分野は円安も追い風となった。B社も売上高、営業利益がともに前年同期比で増加したことを理由に「晴れ」とした。C社は生成AI関連やデータセンター向け蓄電システムが好調だが、米国の関税政策の影響で車載電池の悪化がマイナス要因となったほか、グループの構造改革にかかる費用もマイナスとなっており、「本曇り」とした。

物価高で個人消費が伸び悩み、新車の販売は計画の8割弱にとどまる

【自動車販売】は、物価高による個人所得の伸び悩みや、円安による原材料費の高止まりが購買意欲の低下につながっている。整備部門と中古車部門は計画を達成したものの、新車部門は対計画の8割弱にとどまった。

【自動車】は、米国の関税政策の影響があるなかでも、商品力を背景とした強い需要が維持され、販売台数が増加した。加えて価格改定の効果もあり、高水準の利益を確保している。

大企業との賃金格差を背景に離職者が増加

【ゴム】では、自動車タイヤ・工業用品がプラスに転じているものの、中小企業の景況感は依然として不透明感が大きい。業界団体モニターが中小企業会員に実施した景況調査によると、業況判断・売り上げは改善しており、前期に続きプラス水準となっているが、経常利益は前期より悪化している。円安による原材料価格の高騰分の価格転嫁が十分ではないほか、人手不足感も依然として強い。大企業との賃金格差による離職者の増加などの課題もみられるという。

人手不足や価格転嫁の難しさが印刷業の構造的課題

【印刷】は、当期の生産金額が前年同期比でおおむね横ばいとなった。分野別では商業印刷、包装印刷が一定の下支えとなっているが、出版印刷や事務用印刷は低調となっている。加えて、原材料・エネルギー価格の高止まり、人手不足、価格転嫁の難しさといった構造的課題が続いており、中小企業を中心に収益環境は厳しい状況にある。そのため、モニターは「取引適正化や価格転嫁環境の整備など、政策面での後押しが引き続き重要」などとしている。

事業所給食は価格転嫁への理解が進みつつあると報告

【事業所給食】は、原材料価格の高騰のほか、人手不足や最低賃金の引き上げで厳しい状況が続いている。ただし、価格転嫁については理解が進み、値上げ交渉の効果も表れてきているという。

【ホームセンター】は、暖房用品が10月の気温の低下により動きがみられたものの、11月、12月は鈍い動きとなった。除雪用品の動きも鈍かった。

【港湾運輸】は、中東情勢の影響による物流コストの上昇と船舶運航スケジュールの乱れが続いている。

【シルバー産業】は、特に訪問系の小規模事業者の経営が厳しく、事業規模の縮小や倒産も増加傾向にある。

これらのほかに「うす曇り」と判断した業種は、【繊維】【石油精製】【硝子】【金属製品】【電力】【ガソリンスタンド】となっている。

紙パルプは衛生用紙のインバウンド需要が一服感

「本曇り」と判断した11業種は、【紙パルプ】【道路貨物】【水産】【職業紹介】【その他】【化繊】【木材】【専修学校等】【石膏】【葬祭】【中小企業団体】。

判断理由をみると、【紙パルプ】は、段ボール原紙が青果物向け、工業製品向けは堅調に推移したものの、飲料向けではビール会社へのサイバー攻撃によるシステム障害等が影響しており、全体ではマイナスとなった。白板紙は、主要分野の食品・菓子向けは低調に推移。その一方で、トレーディングカードが引き続き好調を維持しているほか、医療品は堅調で、化粧品は一部復調の動きがみられ、全体としては前年並みとなった。衛生用紙の国内出荷は、インバウンドによる宿泊・商業施設向けなどの業務用で一服感がみられた。

輸送数量が減少しているが、補助金拡充などにより利益は改善

【道路貨物】は、業界団体モニターが実施した景況感調査によると、前期(マイナス24.1)からやや改善して今期はマイナス22.4となったものの、大幅なマイナス水準が継続している。輸送数量の減少、労働力不足などのマイナス要因があるものの、補助金拡充による燃料調達価格の下落や運賃料金水準の改善基調を反映し、営業利益、経常利益は改善傾向に転じている。

漁業は主要魚種の不良で不安定な事業運営に

【水産】では、資機材・燃油・餌飼料・電力などが高騰するなかでも、大手水産会社は北米での水産事業や国内外の養殖事業の大幅な収益改善が寄与し、業績は堅調となっている。一方、漁業関係は主要魚種(サケ、サンマ、イカ、サバ)の不漁もあり、不安定な事業運営を強いられている。養殖業は、市場価格は上昇気味だが、海水温の上昇などの影響でホタテ、カキが水揚げ前に死ぬ「へい死」が大きく増加しており、減産が見込まれている。水産加工業では、国内原料の不足に加え、輸入原料も価格高で厳しい経営を強いられており、廃業する経営体が増えている。

求人姿勢は慎重さが目立ち、求人広告件数は減少傾向

【職業紹介】は、先行きの不透明感から求人姿勢に慎重さが目立つ。

求人情報の業界団体である【その他】は、4月以降、求人広告件数が減少していることを理由にあげた。

【化繊】は、産業資材では自動車部品など一部で明るい兆しがあるものの、衣料用などは総じて盛り上がりに欠ける状況が続いている。

【木材】は、主要な需要先である住宅着工が依然として低迷している。

【専修学校等】は前期の「雨」から判断を引き上げた。18歳人口の減少から学生数は減少が続いていたが、2026年4月の入学者は前年並みとなる見込み。

セメントの輸出は8四半期ぶりに前年同期比マイナス

今回、唯一、「雨」と判断した【セメント】は、当期の国内販売が前年同期比マイナス8.7%で減少傾向が続いている。慢性的な人手不足を背景とした工期長期化や、建設コスト上昇、働き方改革による工事現場での残業減少と週休2日制の浸透が影響している。輸出は同マイナス2.3%で、8四半期ぶりに減少した。

次期(2026年1~3月)の業況見通し

次期(2026年1~3月)の業況見通しについては、41業種のうち、「快晴」はゼロ、「晴れ」が10業種(業種全体に占める割合は24.4%)、「うす曇り」が20業種(同48.8%)、「本曇り」が10業種(同24.4%)、「雨」が1業種(同2.4%)となっている。今期と比較すると「晴れ」が約7ポイント低下している。

食品製造業の景況判断見通しはいずれの企業規模でもプラスに

10~12月期から業況の好転を予想したのは、「うす曇り」から「晴れ」に引き上げた【食品】と、「本曇り」から「うす曇り」に引き上げた【水産】【中小企業団体】の3業種。

【食品】の業界団体モニターによると、「日銀短観」(12月調査)での食品製造業における景況判断の見通しDIは、いずれの企業規模でもプラス水準。企業モニターは、新商品の売り上げに期待している。

【水産】は、大手や生産が安定している企業については堅調と予想している。

非鉄金属は円安や金属価格上昇による原料購入条件の悪化を想定

一方、業況の悪化を予想したのは、「晴れ」から「うす曇り」に引き下げた【非鉄金属】【造船・重機】【ホテル】【工作機械】と、「うす曇り」から「本曇り」に引き下げた【シルバー産業】の5業種。

【非鉄金属】は、金属価格の上昇や円安による原料の購入条件悪化を想定している。

【造船・重機】は海外経済について、米国関税の動向や為替変動、原材料価格の高止まりなど、「事業を取り巻く外部環境の不確実性は引き続き残っている」とみている。国内経済については、設備投資需要などの回復を背景に緩やかな持ち直しの動きがみられるという。

【ホテル】は、1月の売り上げがレストラン事業・宴会事業では予算を達成したが、宿泊事業は未達となっている。

ホームセンターは大雪による暖房用品・除雪用品の需要に期待

今期の判断を継続した業種は【ホームセンター】など33業種あった。

【ホームセンター】(うす曇り→うす曇り)は、厳しい寒さや大雪の影響から、暖房用品や除雪用品で動きがあることを期待。【パン・菓子】(晴れ→晴れ)は、コメの価格が下落しないなかで、パン類の販売数量が徐々に持ち直していくことを期待している。

【百貨店】(晴れ→晴れ)は、昨年と異なり1月は春節休暇のズレでその需要がなかったほか、お得意様ご招待会を開催しなかったものの、国内売り上げが増加。【電機】(うす曇り→うす曇り)の業界団体モニターによると、国内でのエアコンの出荷は冬の暖房需要や自治体による補助金の効果で好調に推移している。

【紙パルプ】(本曇り→本曇り)は、日中関係の悪化などの影響から、衛生用紙などのインバウンド関連は頭打ちになる可能性があるとみているが、「水準自体は高く維持される見込み」と予測。【事業所給食】(うす曇り→うす曇り)の業界団体モニターによると、会員企業からは価格転嫁への理解が広がっているという声があるものの、「仕事があるのに人手が足りず、受託できない」など、人材確保に苦慮する企業が多い。