【山形】(山形銀行やまぎん情報開発研究所)
コメの価格高騰などで個人消費に伸び悩み。有効求人数は21カ月ぶりに増加に転じる
地域シンクタンク・モニター定例調査
山形県の2024年10~12月期の地域経済は、鉱工業生産指数は主力の電子部品・デバイスの大幅な減少から4四半期連続でマイナスとなったものの、企業の業況判断は改善していることから、モニターである山形銀行やまぎん情報開発研究所は【横ばい】と判断した。1~3月期の見通しは、生産活動は横ばいの動きだが、アメリカの通商政策への懸念から設備投資関連の受注に不透明感があり、また、コメの価格高騰などで個人消費が伸び悩む見込みのため、【横ばい】とした。10~12月期の雇用動向は、強い人手不足感が継続していることから【横ばい】と判断。1~3月期の雇用見通しは、有効求人数が21カ月ぶりに前年比プラスに転じたこともふまえて【やや好転】としている。
<経済動向>
鉱工業生産は前年比マイナスの一方、非製造業はインバウンド増が好影響
10~12月期の鉱工業生産指数は、化学や汎用・生産用・業務用機械などが上昇した半面、主力の電子部品・デバイスの大幅な低下により、全体では前期比マイナス2.9%となり、前年比でも4四半期連続でマイナスとなっている。
個人消費をみると、当期の県内の販売統計は前年比プラス1.7%となっている。しかし、モニター作成の「やまぎん消費総合指数(季節調整値)」は実質値で前期比マイナス7.4%、名目値でも同マイナス6.3%で、いずれも低下した。物価上昇率の再拡大に加え、自動車販売の減少も下押しした。
一方、モニターが実施した「やまぎん企業景況サーベイ」によると、当期の業況判断BSIは前期から4.4ポイント上昇して0.2となった。製造業では半導体関連需要の持ち直しを好感する動きがみられたほか、非製造業ではインバウンドの増加による好影響がみられた。
こうしたことをふまえてモニターは、10~12月期の地域経済を【横ばい】と判断した。
個人消費は生活防衛意識の高まりで伸び悩む見込み
1~3月期については、生産活動は、化学や汎用・生産用・業務用機械が上向きとなる半面、電子部品・デバイスにおける生産水準の低下が続くとみられることなどから、総じてみれば横ばい程度の動きになる見込み。
個人消費は、コメをはじめとする食料品価格の高騰や、エネルギー関連補助金の縮小等で物価上昇率が再拡大していることもあり、生活防衛意識の高まりから伸び悩みの動きが続くと予想される。
米国通商政策への懸念から設備投資関連の受注に不透明感
「やまぎん企業景況サーベイ」によると、当期の業況判断BSIは前期比3.9ポイント低下のマイナス3.7で2期ぶりに低下した。業種別にみると、製造業は同9.4ポイント低下のマイナス3.8と大きく低下した。
前回調査で上昇した一般機械、鉄鋼・金属、電気機械などが低下に転じており、半導体関連を含め、アメリカの通商政策の影響への懸念などから、国内外における設備投資関連受注に不透明感が強まっている。非製造業は同0.3ポイント低下のマイナス3.7となっている。
こうした状況を総合的にふまえてモニターは、1~3月期の見通しを【横ばい】とした。
<雇用動向>
強い人手不足感が継続
労働統計をみると、10~12月の有効求人倍率は1.34倍で、前期比横ばいだった。スーパーマーケットの事業停止などをうけた雇用調整の動きがみられ、事業主都合離職者数は増加している。ただし、有効求職者数は前年比マイナスを維持しており、有効求人数についても前年比減少率の縮小が続いた。
「やまぎん企業景況サーベイ」の雇用判断BSI(「多い」-「少ない」)をみると、前期比2.1ポイント低下のマイナス35.4で、3期連続で低下した。業種別にみると、非製造業は同0.2ポイント上昇のマイナス44.6となっている。製造業は同4.3ポイント低下のマイナス22.1で、電気機械や一般機械における操業度の上昇をうけて人手不足感が高まり、2期ぶりに低下した。
モニターは10~12月期の雇用状況を、「強い人手不足感が継続するなかで、ほぼ【横ばい】の動き」と判断した。
有効求人倍率が16カ月ぶりの高水準に
1月の労働統計をみると、有効求人倍率は1.38倍で、1年4カ月ぶりの高水準となった。有効求職者数が前年比マイナス基調で推移するなか、有効求人数が1年9カ月ぶりに前年比プラスに転じており、求人倍率は緩やかな上昇傾向を維持している。雇用保険受給者実人員は、10月以降は4カ月連続で前年比マイナスとなっている。
「やまぎん企業景況サーベイ」での1~3月期の雇用判断BSIは前期比1.6ポイント上昇のマイナス33.8で、小幅ながら1年ぶりに上昇した。業種別にみると、非製造業は同1.9ポイント上昇のマイナス42.7となっている。特に小売業で人手不足感の緩和が目立ち、モニターは「年末にかけての季節的な繁忙一巡の影響が大きい」とみている。
また、旅館・ホテル、飲食業については、インバウンドの増加をうけて人手不足感が非常に強まる動きもみられた。製造業は同0.7ポイント上昇のマイナス21.4となっている。
連合山形によると、2025年春闘の回答・妥結状況(3月18日時点)は、賃上げ率が5.1%で前年同期比0.96ポイント上昇している。
モニターは1~3月期の見通しについて、「緩やかな改善傾向で推移する」とみて【やや好転】と判断した。