【近畿】(アジア太平洋研究所)
当期は個人消費が持ち直しも、来期は気温低下やコメの価格高騰などで判断が悪化

地域シンクタンク・モニター定例調査

近畿の2024年10~12月期の経済動向は、景況感が大幅に改善していることや、個人消費に持ち直しの動きがみられることから、モニターであるアジア太平洋研究所は【やや好転】とした。1~3月期の見通しは、気温低下による外出控え、コメなどの値上げの影響に加え、景気ウォッチャー現状判断DIが悪化しており、【横ばい】。雇用動向は、10~12月期実績については、人手不足感が強まっていることから【やや好転】とした。1~3月期見通しは、各種統計の動きをもとに【横ばい】としている。

<経済動向>

賃上げ機運が定着し、実質賃金のマイナス幅は縮小傾向に

10~12月期について家計部門の動向をみると、センチメントが停滞しているものの、全体としては持ち直しの動きがみられる。雇用環境は緩やかに改善している。所得環境では、賃上げ機運が定着しており、実質賃金のマイナス幅は縮小傾向にある。消費者物価はエネルギー・食料品の価格上昇が全体を押し上げ、上昇幅が拡大した。

企業部門は、緩やかに持ち直している。生産は増産と減産を繰り返しているが、底を打ち、持ち直しつつある。設備投資計画や景況感は、製造業・非製造業ともにおおむね好調に推移している。

景況感について日銀短観(12月調査)をみると、業況判断DIは11で前期から2ポイント改善し、13四半期連続でプラスを維持している。関西経済連合会・大阪商工会議所「経営・経済動向調査」をみると、当期の自社業況BSIが21.7、国内景気BSIが9.9でいずれも7四半期連続のプラスとなった。前期と比較すると、自社業況が11.5ポイント改善、国内景気が1.1ポイントの悪化となっている。

財貿易は輸出・輸入ともに持ち直している。米国・中国向け輸出は弱い動きだが、ASEAN向けの半導体関連部材の輸出が大きく増加した。インバウンド需要は回復ペースがやや鈍化しているものの、依然として堅調。

公的部門は公共工事請負金額・出来高で全国の伸びを下回る動きがみられるなど、やや弱い動きとなっている。

以上を勘案し、モニターは「緩やかに持ち直している」として10~12月期の判断を【やや好転】とした。

米国の関税政策が景気下押しリスクに

1~3月期の見通しについては【横ばい】と判断した。

財貿易は中国の春節の影響が剥落し、輸出は前年比で増加したが、輸入は減少したため貿易収支は2カ月ぶりに黒字に転じた。モニターは「先行きについては、米国の関税政策変更による海外経済の不確実性の高まりが、景気下押しリスクとなろう」とコメントしている。

1月の鉱工業生産指数は98.6で、前月から0.3%上昇して3カ月ぶりの増産となった。なお、近畿経済産業局は生産の基調判断を「緩やかな持ち直しの動き」として据え置いている。

2月の景気ウォッチャー現状判断DIは46.4で、前月から3.6ポイント低下し、景気判断の分岐点である「50」を3カ月ぶりに下回った。気温低下による外出控えに加え、コメや野菜などの食品の値上げの影響もあり、家計動向関連の悪化が景況感を押し下げた。

「経営・経済動向調査」によると、1~3月期の自社業況判断BSIは4.9で、前回調査(25.4)からプラス幅が大きく縮小した。

<雇用動向>

複数の調査で人手不足感が強まる結果

10~12月期の雇用実績について、モニターは【やや好転】と判断した。

雇用統計をみると、有効求人倍率は1.15倍で前期比0.02ポイント上昇、新規求人倍率は2.24倍で前期から変化がなかった。

「経営・経済動向調査」における10~12月期の雇用判断BSIはマイナス38.3の「不足」超で、前期(マイナス34.6)から不足感が強まっている。

日銀短観(12月調査)によると、雇用人員判断DIはマイナス33で、前回9月調査(マイナス32)から横ばいで依然として人手不足感が強い。業種別では製造業がマイナス23、非製造業がマイナス42となっている。

雇用判断BSIは5年弱にわたり「不足」超の状態

1~3月期の雇用の見通しについては、各種統計の動きをもとに【横ばい】と判断している。

1月の完全失業率(モニターによる季節調整値)は2.6%で前月比マイナス0.1ポイントと、2カ月連続で改善した。就業者数と労働力人口が増加して、完全失業者数は減少した。

1月の有効求人倍率は1.16倍で、前月から0.01ポイント上昇した。有効求人数は前月比プラス0.6%、有効求職者数は同プラス0.1%となっている。

新規求人倍率をみると、1月は2.26倍で前月比マイナス0.01ポイントとなっている。新規求人数は同プラス0.1%、新規求職者数は同プラス0.4%となっている。新規求人数(原数値)を業種別にみると、製造業と一部のサービス業は前年同月比増となったが、建設業と卸売業・小売業は減少が続いている。また、情報通信業と宿泊業・飲食サービス業は再び減少に転じた。

モニターは「足元では、有効求人数が増加傾向を示す一方で、有効求職者数は一進一退の動きが続いている。ただし、新規求職者数は直近で増加を続けており、今後、労働供給の動きが活発化する可能性がある」とコメントしている。

「経営・経済動向調査」における1~3月期の雇用判断BSIはマイナス39.8の「不足」超で、前期(マイナス38.3)から「不足」超幅がやや拡大し、19期連続で不足超過となった。