【岩手】(いわぎんリサーチ&コンサルティング)
8割弱の企業が2025年度以降の採用を「厳しい」と認識
地域シンクタンク・モニター定例調査
岩手県の2024年10~12月期の経済動向について、モニターであるいわぎんリサーチ&コンサルティングは、売上高BSIが改善しているものの、経常利益BSIとの乖離幅が拡大していることをふまえて、【横ばい】と判断した。1~3月期の見通しも、住宅着工と公共工事が弱い動きになるほか、生産活動も弱含みになるとみて、【横ばい】。雇用については、依然として人手不足感が強いことから、10~12月期、1~3月期のいずれも【横ばい】としている。モニター実施の調査によると、2025年度以降の採用について8割弱の企業が厳しいと捉えている。
<経済動向>
原材料・仕入価格の上昇や人件費増加などが収益面の下押し圧力に
10~12月期の岩手県の経済指標をみると、小売業主要業態の販売額は引き続き、ドラッグストアの増勢を主因として前年を上回ったほか、公共工事請負額もプラスとなった。また、鉱工業生産指数も主力の電子部品・デバイスや生産用機械などが増産の動きとなり、前期を上回った。
一方、乗用車新車登録・販売台数は一部メーカーの工場の稼働停止や生産停止の影響などから、前年を下回った。
モニターが実施した「岩手県内企業景況調査」をみると、当期の売上高BSIは前期から10.6ポイント上昇してマイナス9.4と、3期連続で上昇した。経常利益BSIはマイナス23.7で前期から8.1ポイント改善している。この結果についてモニターは、「経常利益BSIは2024年1~3月期以降、売上高BSIを下回って推移しており、引き続き両者の乖離幅は拡大している。依然として原材料や仕入価格の上昇と人件費の増加などが収益面の下押し圧力となっている」とコメントしている。
モニターはこれらの動きをふまえて、10~12月期の業況判断を【横ばい】とした。
住宅着工と公共工事は弱い動き、生産活動も弱含み
同調査の先行きの業況判断BSIはマイナス40.6(現状比15.0ポイント低下)となっている。業種別にみると、製造業が現状比17.7ポイント低下のマイナス41.2。非製造業は同13.7ポイント低下のマイナス40.3で、運輸・サービス業は横ばいで推移しているものの、建設業と卸・小売業は現状を下回っている。
モニターは1~3月期の地域経済について、「新設住宅着工戸数や公共工事請負額は弱い動きとなる」と予想したほか、「生産活動も弱含みになる」とみている。
一方、小売業主要業態の販売額は引き続きプラスを維持すると見込まれるほか、乗用車新車登録・販売台数も前年に一部メーカーで認証不正による出荷停止があった反動などから、増加の動きとなる見通しのため、全体として【横ばい】と判断した。
<雇用動向>
求人の減少幅が求職者の減少幅を上回る
10~12月期の雇用指標をみると、新規求人倍率は1.80倍(前期比マイナス0.05ポイント)で上昇したものの、有効求人倍率は1.17倍(同マイナス0.02ポイント)とやや低下した。これについてモニターは、「有効求人倍率は、求人数、求職者数ともに減少となり、求人数の減少幅のほうが大きかったことから前期を下回ったものの、依然として企業の人手不足感は強い」とコメントしている。
新規求人数を業種別にみると、運輸・郵便業は道路旅客運送業で人手不足に伴う求人増加の動きが見られたほか、情報通信業は全国に拠点のある事業所の拠点新設に伴う求人が発生したことなどから前年を上回った。一方、医療・福祉は会計年度任用職員の公募制度見直しの影響などから減少したほか、製造業も食料品などで低調な動きとなり前年を下回った。
これらの動きをふまえて、モニターは10~12月期の雇用を【横ばい】とした。
建設と卸・小売で人手不足感が強まる見込み
モニターが実施した「岩手県内企業景況調査」の雇用人員BSIの先行き判断をみると、マイナス36.2で現状と同程度の不足感が続く見通し。業種別では、製造業は現状比2.0ポイント上昇のマイナス19.6となっている。非製造業は同1.0ポイント低下のマイナス44.1で、運輸・サービス業では二桁台の改善となるものの、建設業と卸・小売業で不足感が強まる見込み。
1~3月期の見通しについてモニターは、「引き続き弱さが見られるものの、企業の人手不足感は強い」ことから【横ばい】とした。
企業の採用意欲は底堅いが人員の確保は苦慮
モニターが1月に県内企業に対して実施した調査によると、2025年度の新規採用について、採用者を「決定済み」とした割合が23.7%(前年調査比3.8ポイント低下)、採用の「予定あり」が30.8%(同2.5ポイント低下)、「予定なし」が21.2%(同3.0ポイント低下)となったほか、「未定」が24.4%(同9.4ポイント上昇)となった。
「決定済み」と「予定あり」を合わせた割合は54.5%(同6.3ポイント低下)で、「前向きな姿勢が見られるものの、人手不足感は根強く、企業の採用意欲は底堅い一方、人員の確保には苦慮している状況にある」という。
また、2025年度以降の採用活動の見通しについては「非常に厳しい」が39.6%、「やや厳しい」が36.9%、「どちらとも言えない」が22.8%、「やや楽」が0.7%となっており、「非常に楽」と回答した企業はなかった。「非常に厳しい」と「やや厳しい」を合わせた割合は76.5%で、8割弱の企業が今後の採用活動について厳しいと捉えている。
業種別にみると、製造業は「非常に厳しい」が39.1%で最も多く、非製造業は「やや厳しい」が4割超で最多となっている。非製造業のうち建設業では「非常に厳しい」に6割の回答が集まるなど、今後も多くの企業で人員の確保が課題となる状況が続くと見込まれる。