【北海道】(北海道二十一世紀総合研究所)
強い人手不足感でも求人が減少。スポットワークの活用などが背景か
地域シンクタンク・モニター定例調査
北海道の2024年10~12月期の地域経済について、モニターである北海道二十一世紀総合研究所は、製造業が持ち直しているほか、観光関連がインバウンド需要で好調なことなどから【やや好転】と判断した。1~3月期の見通しは、観光関連の好調が持続しており、また、公共投資が引き続き堅調に推移しているため、【横ばい】としている。10~12月期の雇用動向は、有効求人倍率や日銀短観の動きをもとに【横ばい】と判断。1~3月期の雇用見通しも、企業の人手不足感が強い状況に変化がないため、【横ばい】としている。強い人手不足感が続くなかでも、ハローワークにおける求人件数が減少している背景についてモニターは、スポットワークの活用や求人媒体の多様化があるとみている。
<経済動向>
製造業の売上DIが5期ぶりにマイナス圏を脱出
モニター実施の「道内企業の経営動向調査(10~12月期実績)」によると、売上DIは9で前期に比べ1ポイント低下したほか、利益DIは3で同1ポイント低下した。製造業の売上DIは同6ポイント上昇の0で、5期ぶりのマイナス圏脱出となり、持ち直しの動きが続いている。
分野別の動向をみると、個人消費は物価上昇の影響を受けて消費者の節約志向が高まっているものの、インバウンド需要を取り込めている業態は比較的好調に推移している。当期の販売額はドラッグストア(前年同期比プラス7.1%)、百貨店(同プラス5.3%)、コンビニエンスストア(同プラス2.0%)が前年を上回り、家電大型専門店(同マイナス5.5%)、ホームセンター(同マイナス3.4%)、スーパーマーケット(同マイナス2.8%)は前年を下回った。合計では前年同期比マイナス1.3%と、13四半期ぶりに前年を下回った。
乗用車新車登録台数は、メーカーの生産体制が完全には回復していないこともあり、前年同期比マイナス6.5%と4四半期連続で減少した。
外国人入国者数が前年比で4割近い増加
観光関連をみると、国内来道客数は前年同期比プラス8.4%となっている。外国人入国者数は同プラス38.0%で大幅な伸びが続いている。
公共投資は、公共工事請負金額が前年同期比プラス15.9%と、7四半期連続で前年を上回った。
住宅投資は、新設住宅着工戸数が前年同期比プラス3.9%と、4四半期ぶりに前年を上回った。
これらをもとにモニターは、「個人消費に停滞感がみられるものの、インバウンドを始めとした観光客の回復により観光関連が好調に推移している」「企業業績の持ち直しの動きがみられる」などとして、10~12月期の地域経済を【やや好転】と判断した。
個人消費は一部で弱さが続いているが、観光関連が好調
「道内企業の経営動向調査(1~3月期見通し)」によると、売上DIは2でプラス圏を維持しているものの、利益DIはマイナス4で、3期ぶりにマイナスに転じる見通しとなった。業種別にみると、製造業は、全業種で売上DI・利益DIがマイナスとなり、非製造業は、運輸業、ホテル・旅館業がプラス圏を維持した。
1月の業態別販売額は、ホームセンター、スーパーマーケットが前年を下回った一方で、百貨店、家電大型専門店、コンビニエンスストア、ドラッグストアは前年を上回った。
観光関連では、1月の国内来道客数、外国人入国者数はともに、引き続き高い伸びとなっている。
住宅投資では、1月の新設住宅着工戸数は前年同期比プラス16.8%と二桁の伸び。公共投資では、1月の公共工事請負金額が同プラス7.8%で前年を上回った。
モニターはこれらの動きをもとに、「個人消費の一部で弱さが続いているほか、企業業績の持ち直しの動きに一段落がみられる」ものの、「インバウンドを始めとした観光客の増加により観光関連の好調が続いているほか、公共投資が引き続き堅調に推移している」として、1~3月期の見通しを【横ばい】と判断した。
<雇用動向>
思うように人材を採用できない企業が求人活動に慎重になる傾向
労働統計をみると、有効求人倍率は10月が0.98倍(前月比マイナス0.01ポイント)、11月が0.97倍(同マイナス0.01ポイント)、12月が0.99倍(同プラス0.02ポイント)と、横ばい圏で推移。
新規求人数は10月が前年同月比マイナス5.1%、11月が同マイナス7.3%、12月が同マイナス7.1%と推移し、22カ月連続で前年を下回っている。
10~12月期の完全失業率は2.6%で、前年同期から0.1ポイント低下している。
日銀短観(12月調査)の雇用人員判断はマイナス49の「不足」超で、前期から3ポイント低下した。業種別にみると、製造業はマイナス35で前期比2ポイント低下となり、非製造業はマイナス52で同2ポイント低下となっている。
モニターは10~12月期の雇用について、「新規求人数が減少傾向にあるものの、総じてみれば、人手不足感の強い状況に変化はみられず、基調に変化はない」として、【横ばい】と判断した。
そのうえで、求人の動きについては、「人手不足感の強い状況が続くなか、自社の業績拡大につながるようなスキルの高い人材を求める動きがみられる」とする一方で、「業務内容や賃金などの労働条件のミスマッチも根強く、思うように人材を採用できない企業が求人活動に慎重になる傾向もみられる」と指摘。そのことが新規求人数の減少につながっているとの見方もあわせて示した。
労働条件のミスマッチで求人への応募者の反応鈍化
日銀短観の3月先行きの雇用人員判断はマイナス51で、今期から2ポイント低下しており、人手不足感がさらに強まる見込み。
1月の有効求人倍率は0.97倍で前月から0.02ポイント低下しており、3カ月ぶりに前年同月を下回った。新規求人数は前年同月比マイナス5.2%と、23カ月連続で前年を下回った。業種別にみると、「建設業」や「卸売業、小売業」などが増加したものの、幅広い業種で前年を下回った。
モニターはこれらの統計の動きについて、「全体的にみると、人手不足感の強い状況に変化はみられないものの、労働条件のミスマッチを背景に求人に対する応募者の反応が鈍くなっている」と指摘。また、「スポットワークの活用や、インターネットをはじめとした求人媒体の多様化により求職者の動きが分散していることが、求人件数の減少につながっている」とみている。
1~3月期の見通しについてモニターは、「今後も新規求人数の減少傾向が続くとみられるものの、総じてみれば、人手不足感の強い状況に変化はない」として、【横ばい】と判断した。