【中国】(中国地域創造研究センター)
物価高による節約志向で年末商戦は盛り上がりを欠く。先行きは米国の通商政策が懸念材料
地域シンクタンク・モニター定例調査
中国地域の2024年10~12月期の経済動向は、消費は気温低下で一時的にコートやエアコンの売り上げが好調となったものの、物価高による節約志向でクリスマス・年末商戦は盛り上がりを欠いたことなどから、モニターである中国地域創造研究センターは【横ばい】とした。1~3月期も、アメリカの通商政策への懸念もあり【横ばい】。雇用動向については、有効求人倍率の動きなどをもとに10~12月期の実績、1~3月期の見通しともに【横ばい】とした。
<経済動向>
各県を代表する業種での上下動が目立つ
モニターは、10~12月期の中国地域の経済動向について【横ばい】と判断した。
地域の主要産業である製造業の生産水準はやや停滞気味で、自動車・化学・鉄鋼・造船などが一進一退を繰り返している。島根県の鉄鋼・非鉄金属、岡山県の乗用車・車体部品、山口県の化学など、各県を代表する業種での上下動が目立ったのが今期の特徴。また11月以降の半導体関連の低迷については、「一時的なものか、今後も長引くのかが気になる」としている。
消費活動は、物価高による節約志向でクリスマス・年末商戦が盛り上がらず、気温低下によるコートやエアコンの売り上げ、携帯電話の値引き規制前の駆け込み需要など一時的な好調要因にとどまった。小売店の売上高は例年より増えているが、「価格高騰に起因しているため、活発な消費が戻っているとは言い難い」。
今後は製造業より非製造業に低迷の不安が
1~3月期の見通しについては、2024年を通じてコロナ禍後の回復基調が弱くなったため、今後は米国の関税や為替の動向、原燃料価格の高騰、人手不足といった不透明な部分が影を落とす可能性がある。
山陽新聞が産業界のオピニオンリーダーを対象に行った景気動向調査によると、1年前と比べて景況感が後退しているという結果となった。コロナ禍で傷ついた経営環境を物価高や人手不足が圧迫しており、輸出入の多い企業では米国トランプ政権の動向も懸念されている。
そうした背景のもと、今後の景気見通しについて、非製造業よりも製造業のほうが低迷への不安が強いことが顕著となっている。また、個人消費でも価格高騰が生活のあらゆる場面に押し寄せて冷え込むことが予想されており、雇用面でも人手不足が採用意欲の高まりにつながる企業と、経営コストの面から人員削減を余儀なくされる企業との二極化が指摘されている。
こうしたことからモニターは、1~3月期の経済動向を【横ばい】と判断した。
<雇用動向>
有効求人倍率は全国と比べても高い水準
10~12月期の雇用実績について、モニターは【横ばい】と判断した。
当期の県別の有効求人倍率は岡山県が1.42倍(全国7位)、山口県が1.40倍(同9位)、島根県が1.39倍(同10位)、広島県が1.38倍(同11位)となっており、全国と比較しても高い倍率を維持し、活発な求人が続いている。
ただし、求人の内訳としては、トラックやタクシーを中心とする運輸業、大手スーパーなどの新規出店、ホテルの新規開業などでの大型求人がある一方で、物価高の影響を受けた飲食サービス、自動車の生産ライン、住宅の新規着工が減っている建設業での求人減がみられた。また、慢性的な人手不足が続いていながら、資材や人件費の高騰で採用に踏み切れない企業もある。
一時的な変動はあっても求人の好調は続く見通し
1~3月期の見通しも【横ばい】とした。その理由についてモニターは、「米国のトランプ政権による関税、原燃料価格の高騰や物価高といったマイナス要因が続くものの、人手不足に解消の目途が見られないため、一時的な変動はあるものの求人の好調は持続する」としたほか、「残業規制の影響でドライバー不足が顕著な運輸や、インバウンドが増加している飲食・宿泊のほか、製造業でも輸出が増加している化学などで雇用が伸びる」とみている。
ただし、最近は民間の就職支援サービスや短期アルバイトのマッチングツールが普及し、公共職業安定所の利用が減っているため、「求職者が統計上は減少し、求職者に占める高齢者の割合が高まっているため、統計だけでは見極めが難しい状況も生まれている」こともあわせて指摘した。