【山形】(山形銀行やまぎん情報開発研究所)
2025年の賃上げは実施割合、賃上げ率ともに昨年を上回る見込み
地域シンクタンク・モニター定例調査
山形県では、7~9月期の地域経済は、生産活動も個人消費も持ち直しの動きとなったことから、モニターである山形銀行やまぎん情報開発研究所は【やや好転】と判断した。10~12月期の見通しは、生産活動が上向きな業種もあるが、物価高で個人消費はやや弱含みになるとみて【横ばい】とした。7~9月期の雇用動向は、有効求人倍率が7期ぶりに上昇に転じたことから【やや好転】と判断。10~12月期の雇用見通しは、非製造業で常態化している人手不足感もふまえて【横ばい】としている。モニターが県内企業に実施した調査によると、2025年に賃上げを実施する企業割合と賃上げ率はともに、昨年を上回る見込みとなっている。
<経済動向>
鉱工業生産指数が1年ぶりに上昇、個人消費も持ち直しの基調
7~9月期の生産活動は持ち直した。鉱工業生産指数は、主力の電子部品・デバイス、化学、汎用・生産用・業務用機械がいずれも上昇し、全体では前期比プラス3.5%となった。プラスとなったのは1年ぶり。
個人消費は総じてみれば持ち直し基調での推移が続いた。当期の県内の販売統計は前年比プラス0.4%で、小幅ながらプラスとなった。また、モニター作成の「やまぎん消費総合指数(季節調整値)」は実質値で前期比プラス2.0%、名目値では同プラス2.7%上昇と、いずれも上昇した。
一方、モニターが実施した「やまぎん企業景況サーベイ」によると、当期の業況判断BSIは前期から1.8ポイント低下してマイナス4.2となった。庄内・最上地域を中心とした7月の豪雨災害が、建設・小売・観光関連分野などに悪影響を及ぼし、非製造業を中心にやや悪化する動きとなった。
こうしたことをふまえつつモニターは、「県内経済は、総じてみれば持ち直しの動きとなった」として、7~9月期の地域経済を【やや好転】と判断した。
10~12月期の生産活動は横ばい程度の動き
10~12月期について、生産活動は、半導体製造装置関連の需要回復にともない汎用・生産用・業務用機械が上向きとなる半面、電子部品・デバイスで生産水準が低下しており、総じてみれば横ばい程度の動きになるとみられる。
個人消費は、コメをはじめとする農産物価格の高騰や、エネルギー関連補助金の縮小などもあり、生活防衛意識が高まっており、夏季賞与の増加や定額減税などを背景に高水準となった夏場の消費に比べれば、やや弱含みとなることが予想される。
「やまぎん企業景況サーベイ」によると、当期の業況判断BSIは前期から4.4ポイント上昇の0.2で2期ぶりに上昇し、水準としては1年ぶりにプラス水準となった。業種別にみると、製造業では電気機械、鉄鋼・金属、一般機械などを中心に大幅に上昇し、前期比10.0ポイント上昇の5.6となった。非製造業は同0.6ポイント上昇のマイナス3.4で、小幅ながら2期ぶりに上昇した。販売不振から小売業の悪化がやや目立つものの、7月の豪雨災害の影響一巡をうけて、旅館・ホテル、飲食業などが大きく改善している。
こうした状況を総合的にふまえてモニターは、10~12月期の見通しを【横ばい】とした。
<雇用動向>
有効求人倍率が7期ぶりに上昇
労働統計をみると、7~9月の有効求人倍率は1.35倍で、前期比プラス0.04ポイントだった。上昇に転じるのは7期ぶりで、約2年ぶりに下げ止まった形。この間、有効求人数の前年比減少率は縮小を続けており、有効求職者数は前年比マイナスに転じる動きがみられた。
「やまぎん企業景況サーベイ」の雇用判断BSI(「多い」-「少ない」)をみると、前期比1.2ポイント低下のマイナス33.3で、小幅ながら2期連続で低下した。業種別にみると、非製造業は同2.7ポイント低下のマイナス44.8、製造業は同プラス1.1ポイントのマイナス17.8となっている。
モニターは7~9月期の雇用状況を、「強い人手不足感が継続するなかで、緩やかな持ち直しの動きとなった」として【やや好転】と判断した。
11月の有効求人倍率は東北地方で最も高い水準
11月の労働統計をみると、有効求人倍率は1.40倍で全国平均を上回り、8カ月連続で東北地方では最も高い水準となった。製造業の復調などを背景に有効求人数に底入れの兆しがみられることに加え、有効求職者数が1万5,000人台まで減少していることなどが求人倍率を押し上げている。10月、11月の雇用保険受給者実人員も、1年半ぶりに前年比マイナスに転じた。
「やまぎん企業景況サーベイ」での10~12月期の雇用判断BSIは前期比2.1ポイント低下のマイナス35.4で、3期連続で低下した。業種別にみると、非製造業は同0.2ポイント上昇のマイナス44.6となっている。製造業は同4.3ポイント低下のマイナス22.1で、操業度の上昇などをうけて人手不足感が高まり2期ぶりに低下した。
モニターは10~12月期の見通しについて、「非製造業において強い人手不足感が常態化する一方で、製造業の操業度によって雇用情勢が左右される傾向が強い。企業の生産活動がおおむね横ばいとなることが見込まれるなかで、雇用動向についてもおおむね【横ばい】での推移が続く」とみている。
最も多い賃上げ率は2025年では「2%以上3%未満」になる見込み
モニターが昨年11月に県内企業に実施した調査によると、2025年春季賃上げ(定期昇給分を含む)の見通しについては、「春季に賃上げする」との回答割合が54.7%で、「春季ではないが賃上げする」が31.2%、「賃上げしない」が14.1%となった。今後賃上げを検討する企業の割合は合わせて85.9%で、前回2023年11月調査(83.0%)から上昇した。
また、賃上げ率の検討状況をみると、「1%未満」が4.9%、「1%以上2%未満」が19.1%、「2%以上3%未満」が26.7%、「3%以上4%未満」が13.0%、「4%以上5%未満」が11.0%、「5%以上6%未満」が2.9%、「6%以上」が1.5%、「未定・その他」が21.0%となっている。
2023年11月に実施した調査では、「1%以上2%未満」とする割合が最も高かったが、今回調査では「2%以上3%未満」が最も高くなったほか、「4%以上5%未満」「5%以上6%未満」とする割合も上昇している。