【近畿】(アジア太平洋研究所)
輸出が好調でプラスチックは過去最高額を更新。人手不足感は依然として強い状況

地域シンクタンク・モニター定例調査

近畿の7~9月期の経済動向は、景況感が改善していることや、個人消費が緩やかに持ち直していることから、モニターであるアジア太平洋研究所は【やや好転】とした。10~12月期の見通しも、輸出が好調でプラスチックが過去最高額を更新したほか、インバウンド需要やクリスマス商戦で百貨店・ホテルの売り上げが回復しており【やや好転】。雇用動向は、7~9月期実績については、人手不足感が依然として強いことから【横ばい】とした。10~12月期見通しも、就業者数が増加しているものの完全失業者数も増加しており【横ばい】としている。

<経済動向>

家計部門、雇用環境は持ち直し、

7~9月期について家計部門の動向をみると、一部に弱い動きがみられるが、緩やかに持ち直している。雇用環境も持ち直しており、大型小売店販売や名目賃金は堅調な伸びが続いている。ただし物価高の影響から、実質賃金は足元ではマイナスで推移している。センチメントも弱い動きで、頭打ちとなっている。

企業部門は、総じて緩やかに持ち直しているが、業種・規模・地域によって二極化傾向にある。生産は台風の影響による稼働停止などもあり、伸び悩んでいる。設備投資計画や景況感はおおむね好調に推移している。

自社の業況判断は6四半期連続のプラスに

景況感について日銀短観(9月)をみると、業況判断DIは9で前期と同水準。12四半期連続でプラスを維持している。

関西経済連合会・大阪商工会議所の「経営・経済動向調査」をみると、当期の自社業況BSIが10.2、国内景気BSIが11.0でいずれも6四半期連続のプラスとなった。前期と比較すると、自社業況が8.7ポイント改善、国内景気が1.1ポイント悪化となっている。

財貿易は輸出・輸入ともに持ち直している。欧米向け輸出は弱い動きとなったが、中国・ASEAN向けの半導体関連部材の輸出が増加傾向にある。また、インバウンド需要は回復ペースがやや鈍化しているものの、依然として堅調な状況。

公的部門は持ち直している。公共工事は請負金額、出来高ともに全国を上回る伸びとなっている。

以上を勘案し、モニターは「緩やかな持ち直しが続いている」として7~9月期の判断を【やや好転】とした。

半導体等電子部品やプラスチックが輸出増に寄与

10~12月期の見通しについても【やや好転】と判断した。

12月の財貿易は輸出が3カ月連続の前年比増加となった。主に半導体等電子部品、プラスチックなどが増加に寄与し、プラスチックは過去最高額を更新した。輸入は2カ月ぶりの前年比増加で、貿易収支は黒字を維持した。

11月の鉱工業生産指数は97.3で、前月から3.7%低下し3カ月ぶりの減産となった。なお、近畿経済産業局は生産の基調判断を「底堅い動き」とし、前月から据え置いている。

インバウンド消費や年末商戦でホテル・百貨店が好調

12月の景気ウォッチャー現状判断DIは52.2で、前月から2.3ポイント上昇し、景気判断の分岐点である「50」を9カ月ぶりに上回った。好調なインバウンド消費に加え、クリスマスや年末商戦の盛り上がりもあり、ホテルや百貨店などが改善した。

関西経済連合会・大阪商工会議所の「経営・経済動向調査」によると、10~12月期の自社業況判断BSIは21.7で、前回調査(10.2)からプラス幅が大きく拡大した。

<雇用動向>

求人倍率は上昇、非製造業の不足感が最高を更新

7~9月期の雇用実績について、モニターは【横ばい】と判断した。

雇用統計をみると、有効求人倍率は1.13倍で前期比0.01ポイント上昇、新規求人倍率は2.23倍で同0.17ポイント上昇している。

関西経済連合会・大阪商工会議所「経営・経済動向調査」における7~9月期の雇用判断BSIはマイナス34.6の「不足」超で、前期(マイナス33.1)から横ばいの状況。17四半期連続で不足超過となった。

日銀短観(9月調査)によると、雇用人員判断DIはマイナス32で、前回6月調査から横ばいで依然として人手不足感が強い。業種別では製造業がマイナス22、非製造業がマイナス43となっている。非製造業は人手不足感が過去最高となった前回調査(マイナス42)を更新した。

就業者数が増加するも、完全失業者数も増加

10~12月期の雇用の見通しについては、各種統計の動きをもとに【横ばい】と判断している。

11月の完全失業率(モニターによる季節調整値)は3.0%で前月比プラス0.1ポイントと、2カ月ぶりに悪化した。就業者数と労働力人口が増加したものの、完全失業者数も増加した。

11月の有効求人倍率は1.15倍で、前月から横ばい。有効求人数は前月比プラス1.2%、有効求職者数は同プラス0.5%となっている。

新規求人倍率をみると、11月は2.21倍で前月比マイナス0.02ポイントとなっている。新規求人数は同マイナス1.2%、新規求職者数は同マイナス0.4%となっている。新規求人数(原数値)を業種別にみると、製造業や運輸業など一部の業種は前年同月比増加となったが、建設業やサービス業全般では減少もしくは低い伸びが続いている。

モニターは「足元では有効求人数が一進一退を繰り返している一方で、有効求職者数は5カ月ぶりに増加した。ただし、新規求職者数は直近で減少を続けており、労働供給の低調な推移が続く」とコメントしている。

雇用判断BSIは18期連続の不足超過に

関西経済連合会・大阪商工会議所「経営・経済動向調査」における10~12月期の雇用判断BSIはマイナス38.3の「不足」超で、前期(マイナス34.6)から「不足」超幅が拡大し、18期連続で不足超過となった。

帝国データバンク大阪支社の「人手不足に対する近畿企業の動向調査」によると、人手不足が企業に与える深刻な影響が顕在化している。2024年の「人手不足倒産」は10月時点で64件にのぼり、過去最多だった2023年の通年(53件)をすでに上回り、2年連続で過去最多を更新した。