【岩手】(いわぎんリサーチ&コンサルティング)
懸念される人手不足による労働環境の悪化と技術・ノウハウの継承難
地域シンクタンク・モニター定例調査
岩手県の7~9月期の経済動向について、モニターであるいわぎんリサーチ&コンサルティングは、小売の販売額はプラスとなったが、生産活動は弱い動きとなったことなどをふまえて【横ばい】と判断した。10~12月期の見通しも、生産活動が一進一退の動きになるとみて【横ばい】。雇用については、7~9月期は有効求人倍率に動きがないことや、新規求人数の動向もふまえて【横ばい】と判断。10~12月期の見通しも、企業の人手不足感が依然として強いことから【横ばい】としている。モニター実施の調査によると、人手不足による労働環境の悪化や、技術・ノウハウの継承難が懸念されている。
<経済動向>
新設住宅着工戸数は低調な動きが続く
7~9月期の岩手県の経済指標をみると、小売業主要業態の販売額はドラッグストアがけん引して前年を上回ったほか、乗用車新車登録・販売台数は3四半期ぶりにプラスとなった。
新設住宅着工戸数は低調な動きが続いているほか、公共工事請負額も県や独立行政法人等などで前年割れとなったことなどから5四半期ぶりにマイナスとなった。
鉱工業生産指数は主力の電子部品・デバイスのほか輸送機械などが弱い動きとなり、前期を下回った。
モニターが実施した「岩手県内企業景況調査」をみると、当期の売上高BSIは前期から1.3ポイント上昇してマイナス20.0と改善の動きとなったが、経常利益BSIはマイナス31.8で前期から4.8ポイント悪化しており、「原材料や仕入価格の上昇のほか、人件費の増加などによる収益面の厳しい状況が継続している」。
モニターはこれらの動きを総合的にふまえて、7~9月期の業況判断を【横ばい】とした。
先行きの業況判断では、非製造業は依然として大幅マイナス
同調査の先行きの業況判断BSIはマイナス31.3(現状比8.0ポイント上昇)となっている。業種別にみると、製造業は現状比27.7ポイント上昇のマイナス10.6と大幅に改善する見込みに対し、非製造業はマイナス39.8で横ばいとなっている。卸・小売業と運輸・サービス業ではマイナス幅が縮小しているものの、建設業はマイナス60.0と厳しい状況になる見込み。
モニターは10~12月期の地域経済について、「乗用車新車登録・販売台数は一部メーカーの生産停止の影響などから弱含みとなる見通し」としたほか、「新設住宅着工戸数も弱い動きが続く」と予想。
そのうえで、小売業主要業態の販売額は減速傾向ながらもプラスを維持するとみられるほか、公共工事もプラスでの推移が見込まれ、生産活動は一進一退の動きとなるとみて、全体としては【横ばい】とした。
<雇用動向>
小売業の新規求人は前年の新規出店の反動などで減少
7~9月期の雇用指標をみると、新規求人倍率は1.88倍(前期比プラス0.11ポイント)で上昇したものの、有効求人倍率は1.20倍(同変化なし)で横ばいとなっている。
新規求人数を業種別にみると、宿泊・飲食サービス業が給食請負事業所の求人の増加などにより前年を上回ったほか、運輸・郵便業もプラスとなった。一方、製造業は食料品で低調な動きが続いていることなどからマイナスとなり、卸・小売業も小売業での前年の新規出店の反動などから前年を下回った。
これらの動きをふまえて、モニターは7~9月期の雇用を【横ばい】とした。
人手不足感はさらに強まる見通し
モニターが実施した「岩手県内企業景況調査」の雇用人員BSIの先行き判断をみると、マイナス45.7で現状(マイナス40.0)から不足感がさらに強まる見通し。業種別では、製造業は現状比10.7ポイント低下のマイナス29.8となっている。非製造業は同3.5ポイント低下のマイナス52.2で、卸・小売業と運輸・サービス業の不足感が強まる見通しとなっている。
10~12月期の見通しについてモニターは、「減速傾向が継続しているものの、依然として企業の人手不足感は強い」ことから【横ばい】とした。
6割超の企業で人材が充足していないとの調査結果
モニターが10月に実施した調査によると、県内企業の人材確保の状況は「充足していない」(23.2%)と「どちらかと言うと充足していない」(39.4%)を合わせた6割超(62.6%)で人材が充足していないという結果となった。
業種別にみると、製造業では「どちらかと言うと充足している」が34.0%で、「充足している」(17.0%)と合わせた割合は過半数を上回った。一方、非製造業は「充足していない」(24.1%)と「どちらかと言うと充足していない」(44.4%)を合わせた割合が約7割(68.5%)となっており、特に建設業(83.4%)では8割を超えている。
人材が充足していないとする企業に対して、その原因を尋ねたところ(複数回答)、「求めるレベルの人材から応募がない」(55.7%)が最も割合が高く、次いで「業界の人気がない」(41.2%)、「賃金などに満足が得られない」(40.2%)などで、モニターは「求める人材から思うように応募を得られず採用に苦戦しているほか、業界人気や知名度の低さなどを背景に十分な数の応募がないことから人材が不足している」とみている。
また、人材が充足していないとする企業に人手不足による懸念内容を尋ねると(複数回答)、「売上機会の喪失」(62.9%)が最も割合が高く、以下「労働環境の悪化」(46.4%)、「技術・ノウハウの承継難」(37.1%)、「人件費の増加」(34.0%)、「商品・サービスの質の低下」(24.7%)、「工期・納期の遅れ」(22.7%)などが続いた。