【北陸】(北陸経済研究所)
石川労働局が2年7カ月ぶりに雇用情勢の判断を上方修正

地域シンクタンク・モニター定例調査

北陸地域の7~9月期の経済動向は、需要面では震災からの復旧・復興や北陸新幹線の延伸で緩やかに回復しつつあるほか、生産活動も持ち直しており、モニターである北陸経済研究所は【やや好転】と判断した。10~12月期も、景況判断の動きをもとに【やや好転】。雇用動向については、人手不足の状況が継続しているとして7~9月期実績、10~12月期見通しともに【横ばい】としている。石川労働局は、能登地方でも雇用情勢が安定してきたとして2年7カ月ぶりに判断を上方修正している。

<経済動向>

地震の影響は残るものの、復旧・復興や新幹線延伸で需要が緩やかに回復

北陸地域について、モニターは7~9月期の地域経済を【やや好転】と判断した。

その理由として、需要面では「地震の影響は残るものの、復旧・復興需要や北陸新幹線の敦賀延伸効果などもみられることなどから、緩やかに回復しつつある」ことをあげた。

小売の動向をみると、「百貨店」では外商を中心に高額品に動きがみられることに加え、催事効果やインバウンドにより客数が増加しており、緩やかに回復しつつある。「スーパーマーケット」も飲食料品に動きがみられ、緩やかに回復しつつある。

「コンビニエンスストア」は被災地支援者や北陸新幹線の敦賀延伸効果による観光客の来店が続いており、米飯類などに動きがみられることから、堅調となっている。「ドラッグストア」は飲食料品などに動きがみられるほか、新規出店効果もあり、拡大。「ホームセンター」は被災家屋の復旧需要によりDIY用品に動きがみられることなどから、順調となっている。「家電大型専門店」は給湯器やテレビに動きがみられることから、持ち直しの動きがみられる。

主要観光地の入込客数および主要温泉地の宿泊客数は前年を下回っているが、能登地域以外では北陸新幹線の敦賀延伸などの効果もあり、前年を上回っている。

生産活動は化学の回復などにより持ち直しつつある

供給面は、「生産用機械が弱含んでいるものの、化学が緩やかに回復していることなどから、全体では持ち直しつつある」という。

業種別の動きをみると、「化学」は大半を占める医薬品で緩やかに回復している。「電子部品・デバイス」は家電向けが弱まっているものの、スマートフォン向けが持ち直しつつあることなどから、全体では下げ止まっている。「生産用機械」は半導体製造装置が持ち直しているものの、繊維機械や金属加工機械が弱含んでいることなどから、全体では弱含んでいる。「金属製品」は大半を占めるアルミ建材で住宅用が弱まっているものの、ビル用に持ち直しの動きがみられることから、全体では下げ止まっている。「繊維」は衣料向けが弱含んでいるものの、非衣料向けが持ち直しつつあることから、全体では緩やかに持ち直しつつある。

企業の景況感が改善、非製造業が寄与

北陸財務局「北陸3県の法人企業景気予測調査(10~12月調査)」によれば、企業の景況判断は0.6の「上昇」超で、前期から6.5ポイント改善している。業種別にみると、製造業がマイナス9.5の「下降」超に対して、非製造業は7.6の「上昇」超となっている。規模別にみると、大企業が3.4、中堅企業がマイナス5.3、中小企業が1.6となっている。

また、日銀短観での業況判断は10(前期比3ポイント上昇)でプラス水準となっており、産業別では製造業が2(同4ポイント上昇)、非製造業が15(同変化なし)となっている。

こうした動きをもとにモニターは、10~12月の地域経済について【やや好転】と判断した。

<雇用動向>

労働市場は全国平均に比べ引き続き「タイトな状況」

7~9月期の雇用動向について、モニターは「北陸3県の有効求人倍率は1.51倍で、前期から0.01ポイント上昇している。全国平均(1.23倍)と比較すると、北陸の労働市場は引き続きタイトな状況にある」「新規求人数は7月が前年比プラス1.8%とプラスに転じたものの、8月が同マイナス3.5%、9月が同マイナス6.8%で再びマイナス基調となった」と報告したうえで、判断は【横ばい】とした。

北陸財務局「北陸3県の法人企業景気予測調査(10~12月調査)」によれば、12月末時点の従業員数判断BSIは34.1の「不足気味」超で、前期(34.7)から横ばいだった。業種別にみても、製造業が25.2、非製造業が40.7でいずれも「不足気味」超。規模別でも大企業が23.3、中堅企業が46.3、中小企業が34.8でいずれも「不足気味」超となっている。

この結果をもとにモニターは、10~12月期の雇用状況の見通しを【横ばい】と判断した。

地震や豪雨の被害が大きかった能登地方でも雇用情勢が安定

11月の石川県の有効求人倍率は前月比0.02ポイント減の1.57倍で、3カ月連続の1.5倍台となった。能登半島地震や豪雨の被害が大きかった能登地方でも雇用情勢が安定してきたとして、石川労働局は「一部地域に弱さが見られるものの持ち直しの動きが見られる」と判断を上方修正した。上方修正は2年7カ月ぶりで、地震後では初となる。