【北海道】(北海道二十一世紀総合研究所)
人手不足感が強まるも、新規求人は幅広い業種で減少
地域シンクタンク・モニター定例調査
北海道の7~9月期の地域経済について、モニターである北海道二十一世紀総合研究所は、製造業・非製造業ともに持ち直しており、消費も底堅さがみられることなどから【やや好転】と判断した。10~12月期の見通しは、持ち直しの動きに一服感があることから【横ばい】としている。7~9月期の雇用動向は、有効求人倍率や雇用人員判断の動きをもとに【横ばい】と判断。10~12月期の雇用見通しは、企業の人手不足感は強くなっているものの、新規求人が幅広い業種で減少していることをふまえて【やや悪化】としている。
<経済動向>
売上DIが前期に比べ10ポイント上昇
モニター実施の「道内企業の経営動向調査(2024年7~9月期実績)」によると、売上DIは10で前期に比べ10ポイント上昇したほか、利益DIは4で4年ぶりにプラスに転換した。製造業・非製造業ともに業況が持ち直している。建設関連が軟調だったものの、幅広い業種で業況が改善。特に、観光関連のホテル・旅館業や旅客運輸業の改善が顕著だった。
分野別の動向をみると、個人消費は業態により濃淡があるものの、「総じてみれば底堅さがみられた」。当期の販売額は、家電大型専門店(前年同期比マイナス10.3%)とコンビニエンスストア(同マイナス2.6%)が前年を下回ったものの、百貨店(同プラス9.6%)、ドラッグストア(同プラス3.6%)、スーパーマーケット(同プラス0.5%)、ホームセンター(同プラス0.4%)は前年を上回った。
乗用車新車登録台数は、前年同期比マイナス0.7%と3四半期連続で減少した。
国内来道客数が回復し、外国人入国者数の大幅な伸びが続く
観光関連をみると、国内来道客数は前年同期比プラス1.9%と回復した。外国人入国者数は同プラス25.0%で大幅な伸びが続いている。
公共投資は、公共工事請負金額が前年同期比プラス5.7%と、6四半期連続で前年を上回った。
住宅投資は、新設住宅着工戸数が前年同期比マイナス1.4%と、3四半期連続で前年を下回った。
輸出については、中国による日本産水産物禁輸措置が依然として解除されていないものの、ベトナム・米国などの輸出先開拓が奏功しつつあり、また前年からの反動増もあり前年同期比プラス13.9%となった。
これらをもとにモニターは、「前期に比べ持ち直している」として7~9月期の地域経済を【やや好転】と判断した。
10月、11月の販売額は、百貨店やコンビニなどでは前年比増
「道内企業の経営動向調査(2024年10~12月期実績)」によると、売上DIは9で前期比1ポイント低下、利益DIも3で同1ポイント低下している。業種別にみると、機械製造業が好調の製造業は業況が改善した。一方、非製造業は前期の大幅改善の反動もあり後退した。
10月、11月の業態別販売額は、スーパーマーケット、家電大型専門店、ホームセンターが前年を下回った一方で、百貨店、コンビニエンスストア、ドラッグストアは前年を上回った。
モニターは個人消費の動向について、物価高による節約志向の強まりがみられる反面、百貨店を中心に高額品の売れ行きが好調で二極化の様相になっていると指摘。インバウンド消費の取り込みの有無も販売額の増減を左右しているという。
住宅投資、公共投資が11月は前年比プラスに転じる
観光関連では、10月、11月の国内来道客数、外国人入国者数はともに引き続き高い伸びとなっている。
住宅投資は、10月の新設住宅着工戸数は前年を下回ったものの、11月は前年を上回った。建築資材の価格上昇や建設業の人手不足を背景に建築価格が高止まりしており、一進一退が続いている。
公共投資も、10月の公共工事請負金額は前年を下回ったが、11月は前年を上回った。振れをともないつつも、増加基調で推移している。
モニターはこれらの動きをもとに「持ち直しが一服している」として、10~12月期の見通しを【横ばい】と判断した。
<雇用動向>
有効求人倍率、日銀短観の雇用人員判断ともに横ばい
労働統計をみると、有効求人倍率は7月が0.96倍(前月比プラス0.02ポイント)、8月が0.96倍(同変化なし)、9月が0.99倍(同プラス0.03ポイント)と、横ばい圏ながらもいくらか持ち直しの動きがみられた。
7~9月期の完全失業率(原数値)は2.6%で、前年同期から0.2ポイント低下している。
日銀短観(9月調査)の雇用人員判断はマイナス46の「不足」超で、前期から横ばいだった。業種別にみると、製造業がマイナス33で前期比1ポイント上昇、非製造業がマイナス50で同3ポイント低下している。
モニターは7~9月期の雇用について、「総じてみれば基調に変化はない」として【横ばい】と判断した。
企業は新規求人に慎重な姿勢
日銀短観(12月調査)の雇用人員判断はマイナス49で、前期比3ポイント低下した。産業別にみると、製造業はマイナス35で同2ポイント低下、非製造業はマイナス52で同2ポイント低下となっている。
11月の有効求人倍率は0.97倍で前月から0.01ポイント低下している。11月の新規求人数は前年同月比マイナス7.3%で、幅広い業種で求人が減少した。
モニターは新規求人数の減少について、「企業の人手不足感が強まるなかにあっても、今年度の賃上げや10月からの最低賃金引き上げによるコスト増から、企業は新規求人に慎重になっている」とみたうえで、10~12月期の見通しについて【やや悪化】と判断した。