【山形】宿泊・飲食は観光分野で持ち直しが続くが人手不足で受け入れが伸び悩む企業も

地域シンクタンク・モニター定例調査

山形県では、7~9月期の地域経済は、経済正常化に伴い個人消費に持ち直しの動きがみられるものの、生産は弱めの動きで【横ばい】となった。10~12月期の見通しも、生産で弱い動きが続いているほか、観光関連では人手不足が事業活動に影響している企業もあり【横ばい】。7~9月期の雇用動向は、強い人手不足感が続いているものの、有効求人倍率は低下しており【やや悪化】と判断。10~12月期の雇用見通しも、雇用統計の動きなどから【やや悪化】としている。ただし、新規高卒者の県内における求人倍率は4.30倍で、1995年度の統計開始以来、過去最高となった。

<経済動向>

鉱工業生産指数が約3年ぶりの低水準に

7~9月期の経済動向について、生産活動は弱めの動きとなっている。鉱工業生産指数は主力の電子部品・デバイスが底堅く推移したものの、汎用・生産用・業務用機械や情報通信機械などが減産となり、全体では前期比で3.1%低下。約3年ぶりの低水準となっている。

個人消費は、経済正常化に伴い持ち直しの動きが続いている。県内の販売統計は前年比5.2%増と高い伸び率で推移している。モニターが作成している「やまぎん消費総合指数」をみても、当期は名目値が前期比プラス4.1%、実質値が同プラス3.7%となった。

モニターが県内企業に実施している「やまぎん企業景況サーベイ」によると、当期の業況判断BSIは前期から2.0ポイント低下して5.9となった。2四半期連続でプラス水準を維持しているものの、製造業・非製造業ともに業況改善の動きが鈍化している。

こうしたことからモニターは、「総じてみれば緩やかな持ち直しの動きを維持している」ものの「改善ペースは鈍化している」として7~9月期の地域経済を【横ばい】と判断した。

生産活動は弱めの動きで推移

10~12月期も、生産活動は引き続き弱めの動きになるとみられる。主力の電子部品・デバイスが徐々に底堅さを増す半面、次いでウエイトの高い汎用・生産用・業務用機械は、中国経済の減速の影響などをうけて生産設備向け受注が減少し、当面は低調な推移が続く見込み。

個人消費は、全体としては経済正常化に伴う支出増が続くものの、物価上昇による生活防衛意識の高まりなどを背景に、総じてみれば持ち直しのペースが鈍化するとみられる。

同調査によると、当期の業況判断BSIは前期から4.3ポイント低下して1.6となっている。内訳をみると、製造業では鉄鋼・金属、電気機械、一般機械などの輸出関連業種の弱含みが目立つ。非製造業も、建設需要の落ち込みや、製造業企業を中心とする法人需要の不振などをうけて総じて弱めの動きとなっている。旅館・ホテル・飲食業で観光分野の回復による持ち直しの動きが続くものの、人手不足で受け入れが伸び悩む企業もみられる状況となっている。

こうしたことからモニターは10~12月期の見通しを【横ばい】とした。

<雇用動向>

有効求人倍率が3期連続で低下

労働統計をみると、7~9月の有効求人倍率は1.38倍で、引き続き全国平均を上回る水準だが3期連続で低下している。有効求人数は製造業、建設業、卸売業・小売業、医療・福祉など幅広い業種が前年比で減少している。

モニター実施の「やまぎん企業景況サーベイ」での雇用判断BSI(「多い」-「少ない」)をみると、前期から1.4ポイント低下のマイナス40.8で、調査開始以来の最低水準を更新して人手不足感の強まりが鮮明になっている。ただし製造業は、2021年10~12月を直近の底として緩やかな上昇傾向をたどっており、「企業の生産活動の弱さから操業度が低下し、人手不足感が徐々に緩和している様子もうかがえる」としている。

これらをふまえモニターは、「強い人手不足感が続いているものの、やや緩和する動き」として7~9月期の雇用を【やや悪化】と判断した。

有効求人倍率は前月比で低下傾向が続いており、11月は1.33倍で2021年8月以来2年3カ月ぶりの低水準となっている。10~12月期の雇用判断BSIは前期から2.7ポイント上昇のマイナス38.1で、前期から人手不足感が緩和する見通し。

10~12月期の見通しについても、雇用統計や景況感調査の雇用判断BSIの動きから、「引き続きやや悪化傾向で推移する」とみて【やや悪化】と判断した。

賃上げ実施予定企業の半数未満が「3%未満の賃上げ率(定昇込み)」

モニターが県内企業に11月に実施した調査で、2024年度に春季賃上げ(定期昇給を含む)を実施するかたずねたところ、「春季に賃上げする」が48.8%、「春季ではないが賃上げする」が34.2%、「賃上げしない」が17.0%だった。

また、「春季に賃上げする」「春季ではないが賃上げする」とする企業に、賃上げ率の見込みをたずねたところ、「1%以上2%未満の賃上げを実施」(24.2%)が最も高く、次いで「2%以上3%未満」(22.3%)、「3%以上4%未満」(13.0%)などの順となっており、全体としては3%未満が約5割、3%以上が約2割、未定が約3割となっている。

高校生の就職希望者数が過去最少に

今春卒業予定の県内高校生の就職希望者(11月末時点、自営・縁故・公務員を除く)は前年比12.1%減少の1,788人で過去最少となった。うち県内企業への就職希望者は同11.8%減少の1,453人。これに対し県内企業の求人数は同2.5%減少の6,249人で、県内における求人倍率は同プラス0.41ポイントの4.30倍となり、1995年度の統計開始以来最高を記録している。