【東海】物価高への対応や人材獲得のために賃上げに意欲をみせる企業も

地域シンクタンク・モニター定例調査

7~9月期の東海地域の経済は、外出機会の増加で消費が持ち直したほか、生産も自動車関連を中心に持ち直して【やや好転】となった。10~12月期の見通しは、生産は緩やかに持ち直しているものの、景況感に悪化がみられ【横ばい】と判断。雇用動向は、7~9月期実績は雇用指標の動きから【横ばい】、10~12月期見通しも回復のペースが緩やかなことから【横ばい】と判断している。物価高への対応だけでなく、人材獲得の観点から賃上げに意欲をみせる企業もみられる。

<経済動向>

個人消費、生産・輸出ともに持ち直しの動き

東海財務局の「法人企業統計調査」によれば、7~9月期の東海4県(静岡県含む)の設備投資額は前年同期比プラス15.7%と大幅に増加した。増加は3四半期連続。業種別にみると、製造業は同プラス13.6%で、8四半期連続で前年同期を上回った。非製造業は同プラス19.1%で、こちらも3四半期連続で前年同期を上回っている。生産は緩やかに持ち直しており、鉱工業指数は100.9で前期から0.5%上昇した。

個人消費は持ち直した。中部経済産業局管内5県(愛知県、岐阜県、三重県、富山県、石川県)の当期の大型小売店販売額をみると、ドラッグストア(前年同期比プラス10.8%)、百貨店(同プラス9.0%)、コンビニエンスストア(同4.3%)、ホームセンター(同1.8%)、家電大型専門店(同1.2%)、スーパーマーケット(同1.1%)のいずれも前年同期を上回っている。

輸出をみると、名古屋税関管内の輸出通関額は7月が前年同期比プラス13.0%、8月が同プラス16.1%、9月が同プラス13.1%と、二桁のプラス幅で推移している。

こうしたことから東海地域のモニターは、「個人消費が新型コロナの5類移行に伴う外出機会の増加を受けて持ち直す」とともに、「生産・輸出も東海地域の主要産業である自動車関連産業を中心に持ち直した」として、7~9月期の地域経済を【やや好転】と判断した。

生産が緩やかに持ち直すも景況判断は悪化

10~12月期を分野別にみると、中部経済産業局管内5県の大型小売店販売額(11月)の前年同月比は、百貨店、スーパーマーケット、ドラッグストア、ホームセンター、コンビニエンスストア、家電大型専門店のいずれもプラスとなっている。

モニターが作成する「OKB景況指数(12月期)」をみると、景気水準は0.8で前期(9.8)から9ポイント低下している。分野別にみても、個人消費がマイナス5.6(前期8.4)、生産活動が9.5(同16.2)、設備投資が3.9(同8.7)といずれも低下している。

生産は緩やかに持ち直している。11月の鉱工業生産指数は103.7で前月から2.5%上昇した。主要業種では生産用機械工業と電気機械工業が低下しているものの、汎用・業務用機械工業、電子部品・デバイス工業、輸送機械工業は上昇している。

こうしたことを総合的にふまえてモニターは、10~12月期の見通しを【横ばい】と判断した。

<雇用動向>

来期は雇用の不足幅が拡大

雇用の実績(7~9月期)について、有効求人倍率をみると当期は1.29倍で、前期(1.31倍)からやや低下している。新規求人数は、7月が前年同月比マイナス3.9%、8月が同マイナス4.3%。9月が同マイナス7.0%と減少傾向が続いた。完全失業率は2.6%で前期(2.7%)からやや改善した。改善は4期ぶり。

モニターはこれらの統計の動きをもとに判断を【横ばい】とした。

一方、東海財務局の法人企業景気予測調査をみると、12月末時点の従業員数判断BSIは30.4の「不足気味」超で、9月末(27.9)から「不足気味」超の幅がやや拡大。企業規模別、業種別のいずれの区分でみても、「不足気味」超の幅が拡大している。

有効求人倍率は10月が1.33倍(前月比プラス0.01ポイント)、11月も1.33倍(同変化なし)と横ばいで推移している。

モニターは「総じて持ち直しの動きが続いているが、回復ペースは緩やか」として【横ばい】と判断した。

半数近い企業が賃上げに意欲

中日新聞社が中部地方の上場企業などを対象に実施した調査によると、賃上げを「実施する方針」とする企業が16.5%、「前向きに検討」が28.6%で、あわせて半数近くの企業が賃上げに意欲をみせている。その理由を尋ねたところ(複数回答)、「物価に見合った賃金にするため」(75.6%)が最も高く、次いで「優秀な人材を確保するため」(51.2%)となっている。

モニターは「物価高への対応に加えて、人手不足を背景に人材獲得のためにも賃上げの必要性を感じている企業が多いことがうかがえる」とみている。