【宮城】人手不足業種の求人が減る一方、求職者数は増加傾向に

地域シンクタンク・モニター定例調査

宮城県の7~9月期の経済動向は、緩やかな持ち直しの動きとなっているものの、そのテンポが鈍化しているとして【横ばい】。10~12月期の見通しは、景況感に改善がみられ、基調としては持ち直しの動きを続けるとみて【やや好転】の見込みとなった。雇用については、7~9月期実績は人手不足業種で求人減の動きがみられる一方、求職者数が増加傾向にあることから【横ばい】、10~12月期見通しも「人手不足感が強まる」との見通しを示しつつ【横ばい】とした。モニター実施の調査によると、冬季賞与の支給は前年からやや改善する見込み。

<経済動向>

生産や住宅着工は低調だが、個人の旅行・レジャー需要は増加

モニターは7~9月期の地域経済について、「物価高や人手不足などが重しとなり、総じて緩やかな持ち直しの動きとなっているものの、持ち直しのテンポが鈍化している」として【横ばい】と判断した。

判断理由を詳しくみていくと、生産では、輸送機械は部品不足の緩和による挽回生産などで持ち直したものの、主力の電子部品や生産用機械などは半導体関連の需給調整などから低調に推移し、全体として弱含みとなっている。

建設需要では、公共投資は公営住宅の改修や学校の新築、2019年の台風19号による被害の復旧などの大型工事が相次ぎ、下げ止まりの動きがみられた。住宅投資は、戸数水準は高めだったものの、仙台圏で前年に分譲マンションが集中した反動で減少している。民間設備投資は物流施設など一部に動きはあったものの、投資姿勢は慎重さがうかがえ、着工水準は低調となっている。

個人消費は、実質賃金が伸び悩むなかで、食品や家事用品など生活必需品を中心に支出抑制の動きがみられた。猛暑の影響でエネルギー関連の支出が増加したため、実質可処分所得が下押しされ、節約志向が強まったものの、4年ぶりに行動制約のない夏休みを迎えて旅行・レジャー需要が増加するなどメリハリがみられ、全体としてみればおおむね横ばい圏内の動きとなっている。

景況感は売上・利益ともに改善の見通し

10~12月期の経済動向をみると、モニター実施の「県内企業動向調査(9月実施)」によると、当期の見通しDIは自社の業界景気がマイナス7で前期比プラス5ポイント、売上高が4で同プラス5ポイント、経常損益がマイナス2で同プラス6ポイントと、いずれも改善している。

内閣府の景気ウォッチャー調査によると、東北の景気先行き判断は徐々に低下しており、物価高による家計の節約や企業の設備投資の見送り・先送りなどが懸念される。

建設需要も、住宅投資が持家を中心に減少基調が続いており、公共投資はなお低水準の状況。民間設備投資は、大型物流施設が仙台市内の再開発プロジェクトの端境期にあり一服している。

そのうえで10~12月期の見通しは、「基調としては持ち直しの動きを続けるとみられるが、足取りの重いものとなるとみられる」としつつも判断は【やや好転】とした。

<雇用動向>

求職者の増加で労働需給が緩和

7~9月期の雇用をみると、有効求人倍率は1.35倍で前期比0.03ポイント低下した。新規求人数は前年同期比0.2%減少している。新規求人数の動きを業種別にみると、建設業(前年同期比10.2%減)や宿泊業・飲食サービス業(同6.3%減)のマイナスが目立つ。

モニター実施の「県内企業動向調査(9月実施)」によると、7~9月期の雇用DIはマイナス36で前期から変化がない。業種別では建設業がマイナス43、サービス業のうちホテル・宿泊がマイナス73で、モニターは「これらの人手不足の深刻な業種における求人の減少は、賃上げ機運のなかで上昇した労働コストが需要を減退させたとも考えられ、業務負担が既存雇用にしわ寄せされている可能性を示唆するものと考えられる」とみている。

一方、労働供給側では有効求職者数が前期比プラス1.6%と3期連続で増加しており、「労働需給が緩和しつつあることがうかがえる」。

こうしたことを総合的にふまえてモニターは、7~9月期の雇用を【横ばい】と判断した。

同調査によると県内企業の10~12月期の雇用DI見通しはマイナス42で前期比6ポイント低下している。モニターは「年末にかけて人手不足感は強まると考えられる」とコメントしたうえで、10~12月期の判断については【横ばい】とした。

冬季賞与は「増額して支給」が14%で前年から3ポイント上昇

同調査から県内企業の冬季賞与の支給予定をみると、「増額して支給」が14.4%(前年調査11.5%)、「同水準で支給」が65.1%(同65.8%)、「減額して支給・不支給」が18.7%(21.0%)と前年に比べやや改善がみられる。