【北海道】個人消費が好調で景況感は9年ぶりの高水準となるも、中国の禁輸措置で輸出は低調

地域シンクタンク・モニター定例調査

北海道の7~9月期の地域経済は、個人消費が持ち直しているほか外国人観光客の回復もあり、経営動向調査の利益DIが9年ぶりの高水準となり【やや好転】。10~12月期の見通しは、個人消費は幅広い業種で前年を上回っているものの、実質ベースでは小幅な伸びにとどまっているほか、中国による日本産水産物の禁輸措置の影響で、輸出の減少が続いており【横ばい】としている。7~9月期の雇用動向は、雇用統計や日銀短観の雇用人員判断の動きから【横ばい】と判断。10~12月期の雇用見通しも【横ばい】としている。

<経済動向>

経営動向調査の利益DIが9年ぶりのプラス水準に

モニターが実施した経営動向調査によると、7~9月期の売上DIは17で前期から10ポイント上昇したほか、利益DIも同8ポイント上昇して3となり、9年ぶりにプラス水準に転換した。業種別にみると、木材・木製品製造業、鉄鋼・金属・機械製品製造業が売上DI・利益DIともにマイナス。建設業は利益DIがマイナスとなったものの、その他の業種はいずれも売上DI・利益DIがともにプラスとなった。全体では非製造業の持ち直しの寄与が大きい。

分野別の動向をみると、個人消費は財・サービスともに堅調に推移した。当期の販売額はホームセンター(前年同期比マイナス0.8%)が小幅に低下したものの、家電大型専門店(同プラス12.3%)、コンビニエンスストア(同プラス9.9%)、ドラッグストア(同プラス8.3%)、スーパーマーケット(同プラス5.7%)、百貨店(同プラス4.7%)は増加した。当期の新車登録台数も前年同期を4.7%上回っている。

観光関連をみても、国内来道客数は前年同期比プラス21.3%となっているほか、外国人入国者数も大幅に増えている。

公共投資は、当期の公共工事請負金額が前年同期比プラス0.5%で、2四半期連続で前年を上回った。

他方で輸出は、中国による日本産水産物の禁輸措置の影響が大きく、前年同期比マイナス41.0%で大幅減となった。また、住宅投資は、新設住宅着工戸数が前年同期比マイナス12.5%となっている。

このように分野によるバラツキはあるものの、モニターは経営動向調査の結果をもとに「道内経済は前期に比べ持ち直している」として、7~9月期の地域経済を【やや好転】と判断した。

個人消費の伸びは実質ベースでは小幅にとどまる

同様に、経営動向調査から10~12月期の売上DIをみると、マイナス1で前期比18ポイント低下。利益DIもマイナス7と同10ポイント低下しており、「業況の持ち直しは一服する見込み」。業種別では、ホテル・旅館業、運輸業は売上DI・利益DIともにプラス、食料品製造業は売上DIのみプラスだが、その他の業種はいずれも売上DI ・利益DIがともにマイナスとなっている。

個人消費をみると、インバウンドの復活や観光客の増加、物価高による販売単価の上昇などを背景として、幅広い業態が前年販売額を上回り、財消費は底堅く推移している。10月、11月の販売額は百貨店、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ドラッグストア、家電大型専門店で前年を上回っており、飲食や娯楽などのサービス消費も持ち直している。

観光関連については、10月、11月の訪日外国人観光客、国内来道客数が引き続き高い伸びとなっている。

住宅投資は、新設住宅着工戸数が10月は前年比プラス16.3%だったが、11月は同マイナス10.3%となっている。建築資材の価格上昇や建設業の人手不足を背景に建築価格が高止まりしており、弱さがみられる。

輸出は、前期から引き続き中国の禁輸措置による影響が大きく、10月が前年同期比マイナス11.3%、11月が同マイナス13.3%と減少が続いている。

こうしたことからモニターは、「個人消費は底堅さが感じられる」ものの、「物価高による押し上げによって名目ベースで伸びているもので、実質ベースでは小幅にとどまっている」とみて、10~12月期の見通しを【横ばい】とした。

<雇用動向>

日銀短観の雇用人員判断は小幅な動き

労働統計をみると、有効求人倍率は7月が1.02倍(前月比マイナス0.02ポイント)、8月が1.03倍(同プラス0.01ポイント)、9月が1.00倍(同マイナス0.03ポイント)と一進一退の動き。7~9月期の完全失業率(原数値)は2.8%で、前年同期比0.3ポイントの低下となった。

日銀短観によると、9月調査の雇用人員判断(「過剰」-「不足」)はマイナス45で、前期(6月調査)から1ポイント上昇している。業種別にみると、製造業がマイナス36で前期比1ポイント低下、非製造業がマイナス47で同2ポイント上昇と小幅な動きになっている。

これらをふまえモニターは、「総じてみれば基調に変化はない」として7~9月期の雇用を【横ばい】と判断した。

人手不足感が強まるも、新規求人数は前年の反動で減少

10~12月期の見通しについても、「人手不足感に引き締まりの動きがみられる」ものの、「有効求人倍率は横ばい圏で推移し、新規求人数も前年の反動減が続いている」として【横ばい】と判断した。

日銀短観によると、12月調査の雇用人員判断はマイナス49で、前期(9月調査)から4ポイント低下している。業種別にみると、製造業がマイナス40で前期比4ポイント低下、非製造業がマイナス52で同5ポイント低下となっている。

有効求人倍率は10月が1.03倍(前月比プラス0.03ポイント)、11月が1.01倍(同マイナス0.02ポイント)と一進一退の状況。新規求人数は10月が前年同月比マイナス8.9%、11月が同マイナス8.0%と前年の反動から減少が続いている。11月の新規求人数は幅広い業種で減少しており、増加は医療・福祉のみだった。