タイトル:女性の管理職への登用はおおむね横ばい 総合職を「男女とも採用」した企業は4割を超える −「平成10年度女性雇用管理基本調査」結果概要− 改正均等法施行直前の女性雇用管理の状況 発 表:平成11年8月5日(木) 担 当:労働省女性局女性政策課 電 話 03-3593-1211(内線5627) 03-3502-6762(夜間直通)
T 調査の概要 1 女性雇用管理基本調査は、主要産業における女性労働者の雇用管理の実態等を 総合的に把握するために毎年実施しているが、平成10年度は、特に平成11年 4月の改正男女雇用機会均等法の全面施行を控えた企業の女性の活用状況等を把 握することを目的として、全国の女性少年室を通じて通信調査の方法により、平 成11年1月現在で行ったものである。 2 調査対象は、本社において常用労働者30人以上を雇用している民営企業のう ちから産業・規模別に層化して抽出した約7,200企業であり、そのうち 6,055企業から有効回答を得(83.8%)、集計した。 U 調査結果の概要 【骨子】 1 募集・採用−四年制大学卒事務・営業系では男女不問募集が7割超− (1)新規学卒者又は中途採用者を募集した企業については、いずれの募集区分でも 「いずれの職種・コースとも男女とも募集」した割合が最も高く4〜7割を占め、 特に四年制大学卒の事務・営業系71.7%、技術系62.2%(図表1)。 (2)新規学卒者又は中途採用者を採用した企業については、四年制大学卒事務・営 業系で「いずれの職種・コースとも男女とも採用」した割合が最も高く47.5 %、次いで「いずれの職種・コースとも男性のみ採用」32.8%。また、四年 制大学卒技術系で「いずれの職種・コースとも男性のみ採用」した割合が最も高 く46.6%、次いで「いずれの職種・コースとも男女とも採用」35.1% (図表2)。 2 コース別雇用管理制度−総合職を「男女とも採用」は4割超− (1)コース別雇用管理制度を「導入している」企業割合は7.0%(平成7年度 (注)4.7%)。これを産業別にみると、金融・保険業が42.0%と最も高 く、次いで不動産業15.4%。規模別にみると、規模が大きくなるほど「導入 している」企業割合が高いが、7年度と比較すると中堅企業での導入が増加 (図表3)。 (2)「コース転換制度あり」の企業割合は61.2%で、「コース転換の仕方」を みると、いわゆる「一般職」からいわゆる「総合職」への転換は55.9%と高 く、いわゆる「総合職」からいわゆる「一般職」は27.8%(図表4)。 (3)コース別雇用管理制度の導入企業の採用状況をみると、いわゆる「総合職」に ついて「採用あり」とする企業(78.8%)のうち「男性のみ採用」が最も高 く53.7%(平成7年度72.3%)、次いで「男女とも採用」42.4% (同27.6%)。一方、いわゆる「一般職」について「採用あり」とする企業 (69.5%)のうち「女性のみ採用」が最も高く60.8%(同74.9%)、 次いで「男女とも採用」35.8%(同19.1%)。いずれのコース区分でも、 「男女とも採用」が平成7年度に比べ増加(図表5)。 3 配 置−人事、企画等の部門では「男女とも配置」が8割超− (1)部門別の配置状況としては、各部門とも「いずれの職場にも男女とも配置」と する企業割合が6〜9割と最も高くなっている。一方、「女性のみ配置の職場が ある」割合が高いのは「人事・総務・経理」10.0%、「男性のみ配置の職場 がある」割合が高いのは「営業」37.8%、「研究・開発・設計」26.6%、 「生産」25.9%(図表6)。 (2)過去3年間に配置転換を行った企業についてその実施状況をみると、事業所内 配置転換、転居を伴わない事業所間配置転換については、「男女とも実施」とす る企業割合がそれぞれ80.4%、62.2%。一方、転居を伴う事業所間配置 転換、海外への配置転換については、「男性のみ実施」がそれぞれ77.9%、 89.4%(図表7)。 (3)過去3年間に他社へ出向させた労働者がいる企業割合は22.3%(図表8)。 一時出向の実績がある企業割合をみると、女性については若年層が25.0%、 中堅層が12.5%、高年層が6.1%となっているが、男性については若年、 中堅、高年の各年齢階層において、それぞれ55.0%、53.1%、39.9 %と高い。一時出向の目的については、女性は「出向先企業の人出不足の補充」 が高く若年層61.6%、中堅層53.6%、高年層55.7%となっているも のの、男性は若年層が「出向先企業の人手不足の補充」48.0%、「本人の能 力向上」39.8%、中堅層、高年層は「出向先企業での経営・技術指導」がそ れぞれ41.2%、44.1%、「出向先企業の人出不足の補充」がそれぞれ 41.2%、39.8%(図表9)。 4 昇 進−女性の管理職への登用はおおむね横ばい− 役職別に女性管理職を有する企業割合をみると、部長相当職では7.1%(平成 7年度8.4%)、課長相当職では20.1%(同18.0%)、係長相当職では 39.6%(同42.4%)。平成7年度と比べると、1,000人以上規模では いずれの役職においてもその割合が上昇しており、5,000人以上規模でみると 部長相当職19.3%(同17.5%)、課長相当職66.2%(同59.1%)、 係長相当職83.9%(同79.1%)(図表10、図表11)。 管理職全体に占める女性の割合については、部長相当職では全体の1.2%(同 1.5%)、課長相当職では2.4%(同2.0%)、係長相当職では7.8% (同7.3%)(図表12)。 5 教育訓練−いずれの教育訓練も「男女とも実施」が最も多い− 新入社員研修、管理職(予定者を含む)研修、業務の遂行に必要な能力を付与す る研修、その他の研修の実施状況をみると、「いずれの教育訓練も男女とも実施」 とする企業割合がそれぞれ82.9%、54.2%、71.6%、75.2%と最 も高い。 管理職研修については「男性のみ実施した教育訓練あり」が45.3%と高いが、 これには女性対象者がいなかったものも含まれる(図表13)。 6 セクシュアルハラスメントの防止のための取組 −苦情・相談体制の整備は2割弱− 「労働者からの苦情・相談があった場合には真摯かつ迅速に対応している」とす る企業割合は64.1%と高いが、「労働者が留意すべき事項に関し、労働者に対 し、研修等により啓発している」、「苦情・相談体制を整備し、労働者に周知して いる」といったその他の区分については「行っている」が2割弱。このうちいずれ の区分でも2割程度の企業は「今後、取り組む予定あり」。なお、「セクシュアル ハラスメントに対する会社の姿勢、防止のための具体的対策等を社内規程等でとり まとめ、労働者に対して明示している」とする企業割合は4.8%であるが、これ を5,000人以上規模でみると28.6%(図表14)。 7 女性の活用に当たっての問題点 −「家庭責任の考慮」「勤続年数が平均的に短い」 「時間外労働、深夜業をさせにくい」が多くそれぞれ4割強− 女性の活用に当たっての問題点をみると、「家庭責任を考慮する必要がある」と する企業割合が46.4%と最も高く、次いで「女性の勤続年数が平均的に短い」 44.8%、「時間外労働、深夜業をさせにくい」42.5%と続いている。また、 「重量物の取扱いや危険有害業務について、法制上の制約がある」、「顧客や取引 先を含め社会一般の理解が不十分である」、「中間管理職の男性や同僚の男性の認 識、理解が不十分である」も1割程度(図表15)。 8 女性の活用にあたっての取組−人事考課基準の明確化が最も多く4割弱− 女性の活用について各取組の状況をみると、「性別により評価することがないよ う人事考課基準を明確に定める」ことを「行っている」とする企業割合は高く 38.9%、「行っていない」は60.7%でこのうち「取り組む予定あり」は 18.6%。その他の取組で「行っている」割合が高いものとしては「女性がいな い又は少ない職務について、意欲と能力のある女性を積極的に採用する」29.3 %、「女性がいない又は少ない職務について、意欲と能力のある女性を積極的に登 用する」27.9%。規模別にみると、規模が大きくなるほど各取組を行っている 企業割合が概ね高くなるが、5,000人以上規模でみるとこのほかに「仕事と家 庭との両立のための制度を整備し、活用を促進する」64.0%、「女性の活用状 況や活用に当たっての問題点の調査・分析を行う」39.5%(図表16)。 9 女性の時間外・休日労働、深夜業の規制の解消に伴う女性雇用管理の変化につい ての考え方−「配置部署の拡大」「責任ある職務につく」「時間外労働が増える 」方向への女性雇用管理の変化が多くそれぞれ3割弱− 女性の時間外・休日労働、深夜業の規制の解消に伴い女性雇用管理が変わるとす る企業は6割程度みられ、「特に変わらない」とする企業割合は44.4%、 300人以上規模でみると2〜3割。変化の内容としては、「女性が配置される部 署が広がる」28.6%、「責任ある職務につく女性が増える」28.1%、「女 性の時間外労働が増える」27.5%で、300人以上規模ではこれらが3〜5割 と高く、特に5,000人以上規模ではそれぞれ50.4%、36.8%、 39.3%(図表17)。 注)平成7年度女子雇用管理基本調査(平成7年10月実施)