III 調査結果 〔事業所調査〕
1 転職者の状況 (1) 転職者のいる事業所の割合 平成10年10月1日現在の全事業所のうち、転職による入職1年以内の常用労働者 がいる事業所は41.6%、一般正社員のうち同様な一般正社員がいる事業所は34.1% となっている(第1表)。 (2) 転職者の割合 平成10年10月1日現在の全常用労働者に占める転職による入職1年以内の労働 者の割合は6.0%、一般正社員の割合は78.3%、一般正社員に占める転職による入 職1年以内の労働者(以下「転職者」という)の割合は4.5%(男4.1%、女5.5%)となっ ている(第2表)。 (3) 産業・企業規模別の割合 転職者の割合を主な産業別にみると、サービス業の割合が6.5%と高く、次いで 建設業4.8%、卸売・小売業、飲食店4.0%、製造業3.5%、となっている。 企業規模別にみると、5?29人規模、30?99人規模の割合が6.4%と最も高く、 1,000人以上規模で1.7%と最も低くなっており、規模が小さいほど転職者の割合 は高くなっている(第2表)。 (4) 職業別の割合 転職者を職業別に割合でみると、「生産工程・労務作業の仕事」が22.4%と最も 高く、次いで、「専門的 ・技術的な仕事」(19.5%)、「事務の仕事」(18.8%)等で 高い。 主な産業別にみると、建設業と製造業では「生産工程・労務作業の仕事」(それぞ れ32.5%、59.0%)、卸売・小売業,飲食店は「販売の仕事」(38.4%)、サービス業は 「専門的・技術的な仕事」(35.8%)が最も高くなっている(第3表)。 (5) 年齢階級別の割合 転職者を年齢階級別に割合でみると、「29歳以下」43.9%、「30歳代」23.6%、 「40歳代」16.8%、「50歳代」11.9%、「60歳以上」3.8%となっており、若年層 の転職者の割合が高くなっている(第1図)。 2.転職者の採用の状況 (1) 経営戦略と採用 転職者を採用するに当たり「経営戦略を意識して積極的に採用した」事業所の 割合は51.0%、「経営戦略はあまり意識せず採用した」事業所の割合は48.8%となっ ている。「経営戦略を意識して積極的に採用した」事業所について、主に意識した 経営戦略をみると、「既存事業の拡大・強化」が51.0%と最も高く、次いで、「人 員構成の歪みの是正」25.8%、「組織の活性化」14.0%が高くなっている(第4表)。 (2) 職業別採用理由 転職者の採用理由を職業別にみると、採用ありの事業所は「専門的・技術的、 管理的な仕事」は32.2%、「事務、販売、サービスの仕事」は58.1%、「保安、 運輸・通信、生産工程・労務作業の仕事」は33.0%で、採用なしの事業所は「専 門的・技術的、管理的な仕事」67.8%、「事務、販売、サービスの仕事」41.8%、 「保安、運輸・通信、生産工程・労務作業の仕事」67.0%となっている。 採用した事業所の採用理由としては、「専門的・技術的、管理的な仕事」は 経験を活かし即戦力になる(64.7%)が最も高く、「事務、販売、サービスの仕 事」と「保安、運輸・通信、生産工程・労務作業の仕事」は、「退・転職者の補 充のため」(それぞれ59.7%、56.0%)が最も高くなっている(第5表、第2図)。 (3) 募集方法 転職者の募集方法は、「公共職業安定所等公的機関」とする事業所の割合が最 も高く69.9%、次いで、「縁故(知人・友人等)」(44.5%)、「新聞・チラシ等」(34.0%)、 「求人情報専門誌等」(31.4%)の割合が高くなっている。企業規模別にみると、 1000人未満の規模は「公共職業安定所等公的機関」の割合が最も高くなっている。 300人以上の規模では「求人情報専門誌等」が、300人未満の規模では「縁故(知 人・友人等)」の募集方法が4割を超えている(第3図、第6表)。 (4) 処遇決定時の考慮状況 転職者の処遇(賃金、役職等)を決定する際、何を考慮したかをみると、「こ れまでの経験」とする事業所の割合が60.4%で最も高く、次いで「年齢」(48.7%)、 「前職の賃金」(24.1%)、「免許・資格」(20.2%)となっている。企業規模別にみ ると99人以下の規模で「これまでの経験」とする事業所の割合が6割を超え最も 高い(第4図、第7表) (5) 賃金の格付け 転職者の賃金の格付けを同一年齢、同一職種で以前から事業所に勤めている者 と比べてみると、「おおむね同程度」とする事業所の割合が49.9%と最も高く、 「一概に言えない」(26.8%)、「おおむね下位」(14.2%)、「おおむね上位」(5.6%)、 「比べる対象がいない」(3.3%)となっている(第8表)。 おおむね上位とした理由は、「優れた能力を持っているから」(34.5%)、「専門 性の高い分野の経験者だから」(29.4%)の割合が高く、また、おおむね下位とした 理由は、「採用時にはどの程度の能力があるか不明だから」(63.8%)、「仕事に慣 れるまで会社への貢献が少ないから」(49.4%)、「他の従業員に対する配慮から」 (34.6%)の割合が高くなっている(第5図、第6図)。 3 転職者の評価 転職者について事業所の評価は、各項目とも「一概に言えない」とする割合が 最も高くなっているが、「経験を活かし即戦力になる」、「熱意・意欲がある」、 「職場への適応力がある」の項目では「そう思う」の割合(それぞれ45.7%、41.5%、 38.9%)が高くなっている。(第7図)。 4 教育訓練(研修)の実施状況 転職者の教育訓練(研修)を実施している事業所の割合をみると、「全員に実施 している」(32.8%)と「一部に実施している」(27.5%)を合わせた『実施している』 事業所の割合は約6割となっている。一方、実施していない事業所の割合は39.6% となっている。 企業規模別にみると、100人以上の規模では全員に実施している事業所の割合が 高く、100人未満の規模では実施していない事業所の割合が高くなっている(第8図) 5 今後3年ぐらいの間の転職者の採用予定の状況 (1) 採用予定の状況 今後3年ぐらいの間の転職者の採用予定をみると、「未定である」としている事 業所が51.5%、「転職者、新規学卒者に関わらず採用の予定はない」が14.5%となっ ている。採用予定のある事業所は「積極的に転職者を採用したい」14.1%、「でき れば新規学卒者より転職者を採用したい」8.1%を合わせて、転職者を採用したい とする事業者の割合は22.2%、「新規学卒者を中心に採用したい」は11.8%で、新 規学卒者よりも転職者を採用したいとする事業所の割合が高い。 企業規模別にみると、100人以上の規模では、「新規学卒者を中心に採用したい」 とする事業所の割合が高く、100人未満の規模では「積極的に転職者を採用したい」 とする事業所の割合が高くなっている(第9表)。 (2) 採用予定の年齢階級 「積極的に転職者を採用したい」又は「できれば新規学卒者より転職者を採用 したい」とする事業所について、今後3年ぐらいの間にどのような年齢階級の転職 者の採用を予定しているかをみると、25?29歳の採用予定事業所の割合が最も高く 60.1%となっており、次いで20?24歳(49.5%)、30?34歳(44.7%)、35?39歳 (32.7%)、40?44歳(20.0%)となっている。25?29歳をピークに、年齢が高くな るに従って採用予定事業所の割合が大きく下がっていく。なお、年齢不問は8.8%と なっている(第9図)。 (3) 採用予定の職業 「積極的に転職者を採用したい」又は、「できれば新規学卒者より転職者を採用 したい」とする事業所について、今後3年ぐらいの間にどのような職業で転職者を 採用する予定にしているかをみると、「専門的・技術的な仕事」(44.9%)、「販売 の仕事」(34.4%)、「生産工程・労務作業の仕事」(22.7%)、「サービスの仕事」 (21.0%)の割合が高くなっている(第10表)。 (4) 採用予定の役職 「積極的に転職者を採用したい」又は、「できれば新規学卒者より転職者を採 用したい」とする事業所について、今後3年ぐらいの間にどのような役職の転職者 の採用を予定しているかをみると、一般職(63.0%)、専門職(47.6%)が高くなっ ている。主な産業別にみると、建設業、サービス業では専門職、製造業、卸売・ 小売業,飲食店では一般職の採用予定の割合が高くなっている(第11表)。
〔個人調査〕 1 前の会社及び今の会社の状況 (1) 前の会社の雇用形態別割合 転職による入職1年以内の一般正社員の割合を前の会社の雇用形態別にみると、 一般正社員の割合は83.3%(男89.1%、女72.7%)、パート6.3%(男1.1%、女15.6%)、 契約社員4.0%(男3.7%、女4.5%)、臨時・日雇2.9%(男2.7%、女3.4%)、派遣労働者 1.2%(男0.7%、女2.0%)となっている(第10図、第12表)。 (2) 賃金・労働時間の変化 転職によって賃金がどのように変化したかをみると、賃金が「減少した」者の 割合は41.2%、「増加した」者の割合は30.5%、「変わらない」とする者の割合は 28.3%となっている。年齢階級別にみると、19歳以下では、「増加した」者の割合 が高くなっているが、20歳以上ではほとんどが「減少した」者の割合が高く、45歳 以上では特に高くなっている。離職理由別にみると、自己都合、定年、倒産・整理 解雇、希望退職は「減少した」者の割合が高く、期間満了は「増加した」者の割合 が高くなっている(第13表)。 労働時間については、「変わらない」とする者の割合は40.0%、「増加した」者 の割合は31.5%、「減少した」者の割合は28.5%となっている。職業別にみると、ほ とんど「変わらない」とするものの割合が高いが「管理的な仕事」は「増加した」 者の割合が高くなっている(第11図)。 (3) 産業 前の会社及び今の会社の産業間の移動をみると、同じ産業で移動している割合が 比較的高く、サービス業からサービス業への移動が15.6%と高くなっており、次い で製造業から製造業への移動が11.7%、卸売・小売業,飲食店から卸売・小売業, 飲食店への移動が5.9%となっている。転職前と転職後では、卸売・小売業,飲食店、 サービス業及び建設業の割合が高くなっている(第14表)。 (4) 職業 前の職業及び今の職業間の移動をみると、ほとんどの職業で同じ職業へ移動して いる割合が高く、最も高いものは「事務の仕事」から「事務の仕事」が15.0%、次 いで「生産工程・労務作業の仕事」から「生産工程・労務作業の仕事」が14.8%、 「専門的・技術的な仕事」から「専門的・技術的な仕事」が11.4%、となっている。 同じ職業間を移動した者は総計で62.8%となっている(第15表)。 (5) 企業規模 前の会社と今の会社の企業規模間の移動をみると、小さい規模の企業への移動 が相対的に多く、特に5?29人規模への移動の割合が高くなっている(第16表)。 2 転職時の状況 (1) 離職理由 前の会社を辞めた主な理由をみると、「自己都合」とする者の割合が最も高く 78.6%、次いで、「倒産、整理解雇」(11.3%)、「期間満了」(3.0%)、「希望退職」 (2.5%)、、「定年」(2.4%)、「出向」(2.2%)となっている。年齢階級別にみると、 年齢が高くなるに従って「自己都合」の割合が低下している。特に50歳代では 「倒産、整理解雇」が21.2%、「希望退職」が16.5%と高い割合になっている (第17表)。 また、「自己都合」で離職した者の具体的理由のうち最も重視した理由をみると、 「満足のいく仕事内容でなかったから」(15.3%)、「労働条件(賃金以外)がよくな かったから」(14.2%)、「会社の将来に不安を感じたから」(12.1%)の割合が高く なっている。男女別にみると、男は「満足のいく仕事内容でなかったから(16.2%)、 「会社の将来に不安を感じたから」(15.4%)が高く、女は「労働条件(賃金以外)がよ くなかったから」(16.0%)の割合が最も高くなっている。 前の雇用形態別でみると、一般正社員では「満足のいく仕事内容でなかったか ら」(15.7%)、「労働条件(賃金以外)がよくなかったから」(14.6%)が高い割合に なっているのに対し、パートでは「賃金が低かったから」(15.4%)、契約社員では 「会社の将来に不安を感じたから」(17.3%)、臨時・日雇では「他によい仕事があっ たから」(21.7%)、「満足のいく仕事内容でなかったから」(19.5%)、派遣労働者では 「会社の将来に不安を感じたから」(17.9%)がそれぞれ高くなっている(第18表)。 (2) 転職回数 転職回数(今の会社への転職も含む)をみると、1回が35.6%と最も高くなっている。 前の雇用形態別に転職回数をみると、一般正社員、契約社員は1回、パート、臨 時・日雇は2回、派遣労働者は3回の割合が最も高くなっている(第12図) (3) 前の会社の勤務期間 前の会社に勤めていた期間をみると、「2?5年未満」(27.8%)が最も高く、次い で、「1?2年未満」(18.8%)、「5?10年未満」(17.2%)、「10年以上」 (16.7%)、「6ヵ月?1年未満」(12.5%)、「6ヵ月未満」(7.1%)の順となっている。 前の雇用形態別にみると、一般正社員、契約社員は「2?5年未満」、パート、臨 時・日雇は「1?2年未満」、派遣労働者は「6ヵ月?1年未満」の割合が最も高く なっている(第19表)。 (4) 離職する前の具体的転職活動の有無及び期間 公共職業安定所や求人情報専門誌等で情報収集した等、離職する前の具体的な転 職活動「あり」とする者の割合は77.3%、「なし」とする者の割合は22.7%となって いる。転職活動「あり」とした者のうち具体的に転職活動を始めてから前の会社を 辞めるまでの期間をみると、「1?3ヵ月未満」(35.6%)が最も高く、次いで「1ヵ月 未満」(34.2%)、「3?6ヵ月未満」(15.1%)等となっている。3ヵ月未満の割合は69.8% となっている。年齢階級別にみると、3ヵ月未満の割合は全ての年齢階級で6割を超え ている(第20表)。 (5) 離職期間 前の会社を辞めてから今の会社に勤めるまでの離職期間(1年以内)をみると、1ヵ月 未満の割合が34.1%と最も高く、次いで1?2ヵ月未満(15.5%)、2?4ヵ月未満(14.4%)、 離職期間なし(11.6%)の順となっている。各年齢層とも離職期間なしを含め、離職 期間は2ヵ月未満とする者が5割を超えている(第21表)。 (6) 雇用保険(失業手当)の受給の有無 前の会社を辞めた後、雇用保険の失業手当を受給した者の割合は23.2%となって いる。受給期間をみると、90?120日未満の者の割合が30.1%と最も高く、年齢階級 別では年齢が高くなるに従い受給した期間も長くなる。一方、失業手当を受給しな かった者の割合は76.8%となっている(第22表)。 (7) 求職活動手段 今の会社に就職するためにどのような手段で求職活動をしたかをみると、「公共 職業安定所等公共的機関」(40.4%)、「縁故(知人・友人等)」(35.0%)、「新聞・チ ラシ等」(25.9%)、「求人情報専門誌等」(23.6%)の割合が高くなっている。 年齢階級別にみると、「公共職業安定所等公共的機関」、「縁故(知人・友人等)」 が各年齢層とも高く、「求人情報専門誌等」は39歳以下で高く、「出向・前の会社 の斡旋」では50歳以上で高くなっている(第13図、第23表)。 3 今の会社の状況 (1) 今の会社を選んだ理由 今の会社を選ぶとき最も重視した理由をみると、「仕事の内容・職種が満足がい くから」(23.3%)、「自分の技術・能力が活かせるから」(19.7%)、「転勤が少ない、 通勤が便利だから」(14.7%)の割合が高くなっている(第24表)。 (2) 今の会社に転職した総合的満足度 今の会社に転職した総合的満足度をみると、「やや満足」(35.1%)と「満足」 (24.4%)を合わせた『満足』は59.5%、一方「やや不満」(9.9%)と「不満」(3.9%)を 合わせた『不満』は13.8%、「どちらでもない」26.5%となっており、今の会社に転 職して満足とする者が多い。(第25表)。 (3) 項目別満足度 「満足」と「やや満足」を合わせた『満足』とする者の割合が高いのは、「通勤 の便」、「仕事の内容・職種」、「人間関係」となっている。一方「不満」と「や や不満」を合わせた『不満』とする者の割合が高いのは、「賃金」、「労働時間・ 休日」となっている(第14図)。 (4) 就業経験の活用状況 今の会社へ転職する前の就業経験が、今の会社で活かされているかどうかをみる と、『活用されている』割合は56.7%(ある程度活用されている37.9%、かなり活用さ れている18.8%)、一方、『活用されていない』割合は24.4%(ほとんど活用されていな い15.2%、あまり活用されていない9.2%)となっている。これを職業別にみると専門的・ 技術的な仕事(73.8%)、「管理的な仕事」(80.0%)で『活用されている』割合が高い (第15図)。 4 今後の状況 (1) 転職希望の有無 今後の転職希望をみると、「転職したい」者の割合は10.9%、「転職したくな い」者の割合は37.3%となっている。年齢階級別にみると35歳以上での「転職し たくない」者の割合が4割以上と高くなっている(第26表)。 「転職したい」者の主な理由は「今の職場に不満があるから」(37.2%)、「自 分の能力・技術を試したいから」(21.1%)の割合が高い(第27表)。 「転職したくない」者の主な理由は、「今の職場に満足しているから」(53.6%)、 「年齢で制約があるから」(18.3%)の割合が高くなっている。年齢階級別にみると いずれも「今の職場に満足しているから」が最も高くなっているが、45歳以上で は「年齢で制約があるから」が3割を超えている(第28表)。 (2) 転職支援 今後、転職支援のためどのようなことが必要かをみると、「求人情報提供の拡充」 (34.5%)、「職業紹介のサービスの充実」(32.2%)、「企業年金・退職金が不利にな らないような制度の改善」(31.2%)等の割合が高くなっている。男性は「企業年金・ 退職金が不利にならないような制度の改善」が32.7%、女性は「求人情報提供の拡 充」が41.0%と最も高い。年齢階級別にみると、30代から50代では「企業年金・退 職金が不利にならないような制度の改善」の割合が高くなっている(第29表)。