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別添







  豊能郡美化センターダイオキシン問題に係る調査研究報告書(概要)





1.調査方法



1)調査対象者:大阪府にあるごみ焼却施設の豊能郡美化センターで作業等に従

  事したことのある労働者92名(男性:88名、女性:4名)



2)調査内容

 ・作業歴調査(産業医による面接調査)

 ・生活歴調査(アンケートによる調査)

 ・健康状況調査(医師による診察等)

 ・皮膚視診(皮膚科医師による皮膚の視診)

 ・血液検査(末梢血検査、血液生化学検査、免疫機能検査、血中ダイオキシン

  類濃度)



3)血中ダイオキシン類濃度の分析方法

 ・抽出方法:脂肪抽出法(宮田の方法に準拠)により血液中のダイオキシン類

       を抽出した。

 ・測定機関:okometric社(ドイツ)





2.調査結果

1)血中ダイオキシン類濃度(図5,図6,図7参照)

  血中ダイオキシン類濃度の測定結果は以下のとおり。
調査項目 平均値 標準偏差 最低値

最高値
ダイオキシン類注1・4

2,3,7,8-TCDD(再掲)注2・4

84.8

4.5

130.2

2.6

13.4

0.5

805.8

13.4

Co-PCBs注3・4

14.3

10.2

3.1

54.2

(単位はp (ピコ:一兆分の1) g/血液中の脂肪1g)
注1:  ダイオキシン類(PCDDs+PCDFs)の毒性を国際毒性等価係数(T-TEF)
により2,3,7,8-TCDDの量に換算
注2:  210種類のダイオキシン類(PCDDs+PCDFs)のうち最も強い毒性を持つ
ダイオキシン
注3:  WHO(1993年)の毒性等価係数により2,3,7,8-TCDDの量に換算
注4:  測定限界(ND値)はPCDDsとPCDFsは1pg/g-fatであり,OCDD,OCDF,
Co-PCBsは10pg/g-fatであった。測定限界以下の測定値については測定
限界の1/2として扱った。
2)ダイオキシンばく露の原因

  焼却灰や飛灰(以下「焼却灰等」という。)への接触頻度が高く(表12)長

 期間作業に従事した労働者で血中ダイオキシン類濃度が高い傾向があること

 (図8)等により、ダイオキシンばく露の原因はダイオキシン類に汚染された

 焼却灰等に由来する粉じんの吸入や接触によるものと考えられる。なお、高度

 に汚染された豊能郡美化センターの特殊性も考慮する必要がある。



3)労働者の健康状況等

  対象者から既往歴・現病歴として申告のあった疾患の発生状況と血中ダイオ

 キシン類濃度との関連は認められなかった。血液検査(末梢血検査、血液生化

 学検査、免疫機能検査)についてもダイオキシン類を明らかな原因とする異常

 等は認められなかった。皮膚視診により、いずれの対象者にもクロルアクネ(

 塩素座瘡)は認められなかった。





3.評 価



  豊能郡美化センターは、現時点において我が国で知られている範囲内で最も

 高濃度のダイオキシン類が土壌等から検出されたごみ焼却施設である。今回の

 調査により明らかとなった豊能郡美化センターの労働者の血中ダイオキシン類

 濃度は一般的な住民と比較して明らかに高いものの、文献調査の結果によると

 身体のいずれかの部位に発がんを起こすレベルにないことに加え、皮膚障害等

 の健康影響の直接的原因となるおそれのあるレベルにも達しておらず、明らか

 な健康影響を引き起こすレベルであるとの確証は得られなかった(図10)。

  また、調査時点においては、明らかにダイオキシン類が原因と考えられる健

 康影響は認められなかった。しかしながら、免疫反応の一部(PHA刺激反応)

 にみられた低下傾向や成因不明の色素斑とダイオキシン類との関連についての

 評価が定まっていないことや、ダイオキシン類によるヒトへの影響については

 現在なお新たな知見が集積されつつあることから、今回の調査において血中ダ

 イオキシン類濃度が高いことが判明した労働者については慎重に健康状態の実

 態把握等を行う必要があるものと考えられる。

  今回のダイオキシン類ばく露の原因が汚染粉じんによるものと考えられるこ

 とから、ごみ焼却施設等においては、作業環境の測定、灰等の発散の抑制措置、

 呼吸用保護具の使用等のばく露防止対策の一層の徹底が必要と考えられる。




(添付資料)

豊能郡美化センターダイオキシン問題に係る調査研究委員会名簿

用語集抜粋


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