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1.現状と課題
1)現状認識
(1)高卒者の就職状況等
(高卒者における卒業後の進路)
高等学校進路別卒業者数の推移を見ると、平成4年をピークに卒業者数が年々減少
するなかで、大学等進学者数はほぼ横這いで推移しており、この結果、進学率は毎年
のように上昇を続けている。一方、就職者数は平成2年をピークに年々減少の一途を
たどり、卒業者に占める就職者の割合も毎年低下を続けている。高等学校卒業者の就
職率は、昭和40年には60%を超えていたのが、平成13年には18.4%と2割を下回る水
準にまで低下した。また、近年、無業者比率はほぼ10%にも達している(図表1)。
なお、高等学校卒業者の進路状況は、地域による違いも大きい。例えば、都道府県
別の無業者比率を見ると、10%を超える高い水準の県が多く見られる一方で、依然と
して5%を下回る水準を維持している県も複数見られるなど、地域により状況の異な
る様子が確認できる(図表2)。
(高卒者に対する就職決定率の推移)
次に、高等学校卒業者の就職内定状況の推移(文部科学省調査)を見ると、平成13
年度12月末現在で67.8%と、過去最低を記録した一昨年度を大幅に下回る状況となっ
ている。なお、就職決定率を男女別に見ると、男子よりも女子の方がより厳しい状況
にあると言える(図表3)。
(高卒者の離職率の高さ)
このように、就職することが非常に厳しくなっている一方で、高卒就職者の離職率
も高い水準で推移している。新規学卒就職者(高校卒)の離職率の推移を見ると、就
職後1年以内に約4人に1人が離職、また、3年以内では約半数の者が離職している
状況である(図表4)。
(いわゆるフリーターや無業者の増加)
高卒者に限らず、若年層全体の就業問題として、学卒無業者やフリーターの増加が
近年指摘されている。フリーターについては、平成12年度版労働白書では平成9年に
151万人と推計されている。また、日本労働研究機構の調べでは、平成12年には193万
人という推計がなされている。さらに、先に見たとおり高校卒業時点で進学も就職も
しない学卒無業者の比率は卒業者の約1割にも達している。
このような状況の中、卒業時まで次の進路が決まらない、また、卒業と同時にひと
たび就職してもすぐに離職してしまう者が、無業者やフリーターへと流れているなど、
すなわち、高校卒業が無業者やフリーターの入り口の1つとなっている可能性が指摘
されている。なお、本研究会において実施したアンケート調査では、就職活動をした
ものの卒業年の3月時点で未内定の生徒のうち、2割程度の人は今後の進路として
「フリーターになる」ことを選択肢の1つとして考えているという結果であった
(参考資料 図表1)。
(2)高校生の就職をめぐる環境の変化
(高卒者に対する労働需要の減少と変化)
高卒者に対する求人数が減少している。平成13年度11月末現在においては、この時
期としては初めて求人倍率が1倍を下回るという高卒者にとって大変厳しい状況とな
っている。また、求人数の減少のみならず、求人職種についても変化が見られる。以
前であれば事務職や販売職等での募集も多く見られたが、最近では事務職・販売職で
の求人が減少し、求人職種が技能工に偏ることとなっているため、結果として技能工
として就職する者は全体の4割以上を占めるに至っている。高卒者に対する求人数の
減少は、企業における経営環境の厳しさを背景としているが、ホワイトカラー分野で
の求人数の減少は、IT化の進展などによる補助的業務の減少や、業務の高度化・複
雑化に伴う大卒者等の高学歴人材へ需要のシフトが要因になっていると考えられる
(図表5、図表6)。これについては、今春の新規学卒者の就職内定率が、高校では
前年を下回っているにもかかわらず、一方、大学等については前年を上回っていると
いう結果からも推測される。
なお、アンケート調査では、就職活動中に「希望する職種の求人が少ない」と感じ
た人の方がそうでない人よりも多い傾向が見られたが、それはこのような背景による
ところが大きいと考えられる(参考資料 図表2)。
(求人企業規模の中小企業化)
求人企業の規模にも変化が見られる。以前では従業員規模の大きな大企業からの求
人も見られたが、近年は求人企業が中小企業にシフトしてきている。また、新規学卒
者(高校卒)の企業規模別就職先構成比を見ても、平成6年以降、従業員300人未満
の企業が6割以上を占め続けており、平成12年には72.3%に達した(図表7)。
(企業から見た高校生)
また、以前は金の卵とも呼ばれ、非常に重要視されてきた高卒人材であるが、近年
では質的面についても、企業側が厳しい見方をするようになってきている。
たとえば日本経営者団体連盟が東京経営者協会に加盟する東京都内の企業を対象に
平成13年1月に実施した「高校新卒者の採用に関するアンケート調査」の結果による
と、採用(応募)者に対し、「勤労観、職業観」、「コミュニケーション能力」、
「基本的な生活態度、言葉づかい、マナー」などの面で不満を感じている企業が多く
なっている。
(意識面での変化)
意識の面でも変化が見られるようになってきている。世の中全体としても、終身雇
用制に代表されるような日本的雇用慣行が崩れ、離職・転職は珍しいことではなくな
ってきているが、そのためか、生徒自身も、最初の就職先に定年まで勤め上げるとい
う意識は薄れてきている。また、アンケート調査によると、将来の職業生活について
「仕事以外に生きがいをもちたい」、「安定した職業生活を送りたい」のほかに、
「専門的な知識や技術をみがきたい」、「自分に合わない仕事ならしたくない」と考
えている人も非常に多くなっている(参考資料 図表3)。
このほか、いわゆるフリーターや無業者も数が増えて今では珍しくなくなっている
が、生徒自身、高校卒業後フリーターや無業者になることに対して抵抗感が小さくな
っていることも指摘できる。
(3)高卒者の就職の仕組み
(選考開始期日等)
現在、高卒者の就職あっせんについては、早期採用選考を防止し、求人秩序を確立
することにより、授業時数を確保するなど高等学校教育の充実を図るとともに生徒の
適正な推薦・選考が行われるよう、下記のような選考開始期日等にそって行われてい
る。これらの選考開始期日等は、全国高等学校長協会や主要経済関係団体の意見を踏
まえて決められ、厚生労働省と文部科学省との共同通知という形で周知されている。
この枠組みにそって、高等学校とハローワーク(公共職業安定所)の分担・連携によ
る就職あっせんが行われてきた(図表8)。
採用選考期日等を設定することについては、その是非も含めて、文部科学省の「高
校生の就職問題に関する検討会議」においても、十分な検討がなされたが、高校側、
企業側ともにその意義を認めている状況等を踏まえ、改めてその必要性を指摘してい
る(図表9)。
現在の選考開始期日等
6月20日 ハローワークにおける求人の受付開始
7月1日 ハローワークの確認を得た求人票による学校での求人の受付開始
9月5日 学校の推薦、応募書類の提出開始
9月16日 企業等の選考開始
(就職慣行)
高校生の就職については、選考開始期日等を背景として、数十万の求職とこれを大
幅に上回る求人とを短期間で円滑に結びつける上で、また、可能な限り多くの生徒に
均しく希望する事業所や職種に応募することができるようにする上で、指定校制、一
人一社制、校内選考といった慣行が一定の役割を果たしてきた。
しかしながら、高校生の就職を取り巻く環境が大きく変化する中、これらの慣行が
もたらす弊害も出てきている。
(民間職業紹介事業者における取扱い)
平成11年の職業安定法の改正に伴い、民間紹介事業者の行う学卒紹介については、
事務職、販売職の職業の紹介も可能となった。
しかしながら、実際には、民間による新規高卒者に対する職業紹介は進んでいない。
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