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 6.多様で柔軟な働き方を進めるための雇用システム面での課題





 (1)雇用システムについての基本的な考え方は、個人属性にかかわらず能力発

    揮することができる機会を確保することに加え、二極化した働き方の間に連

    続した形で多様で柔軟な働き方を創出すること。そのためには、労使が納得

    した上で、拘束度に応じた雇用保障や処遇の公正さ(=Fairness)を確保す

    ることと、働き方を労働者が自己選択できる仕組みを構築することが重要





   ・性別や年齢といった個人属性によって働き方の自己選択が制限されず、能力

    発揮の機会が確保されることがまず重要である(図表13図表14)。



   ・それとともに、現状の二極化した働き方の間に、企業の雇用ニーズと労働者

    の就業ニーズの双方を満たすことのできる、合理的な均衡点を作り出すため

    の条件整備を図る必要がある。その際、拘束度に応じた雇用保障や処遇の公

    正さ=Fairnessをいかにして確保するかという点は極めて重要になるが、そ

    のルールを決めるに当たっては、労使双方が「納得できること」が重要なポ

    イントである。



   ・例えば残業をしたくない、勤務地を限定して働きたいというように労働者が

    拘束度の面で自己選択の自由度を重視するのであれば、企業にとって内部柔

    軟性が低くなるために、雇用保障や処遇は拘束度の高い労働者と比べると相

    対的に低くならざるを得ないという場合もある。多様で柔軟な雇用システム

    においては、拘束度の高低に応じて雇用保障や処遇のあり方が柔軟に設定さ

    れることが必要であろう。



   ・そして、二極化した現在の働き方をつなぐ中間的な働き方をなだらかな連続

    した形で創出できるようにすること、それを労働者が自己選択できる仕組み

    となっていること、働き方の間に相互に「行き来」できる通路があり一定の

    条件下で働き方の転換ができること、が求められる。



   ・これらにより、企業内に多様で柔軟な働き方が存在し、それを労働者が選択

    し、将来的には、正社員、非正社員という区分が意味を持たなくなり、労働

    時間、就業場所、仕事の拘束度によって雇用区分が決まることになると考え

    られる。







  多様で柔軟な働き方と処遇の関係のイメージ



   図





 (2)労使の課題は、働き方の多様化、柔軟化を進めるための処遇制度の検討や

    公正な労働条件設定に向けた取組





   ・同様の仕事に就いていながら労働時間や就業場所等の自己選択の自由度が異

    なっている社員の間の処遇のバランスのあり方に関して、今後はよりきめ細

    かな対応が必要となる。仕事や役割をベースにした賃金決定への移行は、多

    様で柔軟な働き方を進める上での条件整備と位置づけることができる

    (図表15)。



   ・多様で柔軟な働き方が進めば、労働条件の決定に当たって個別性が強くなっ

    ていき、労働者個々に労働条件の交渉をする場面が増えると考えられるが、

    交渉力に劣る労働者個人を支援する仕組みが必要となろう(図表16)。



   ・従来労働条件が高かった正社員の条件が結果として低くなることも十分考え

    られるが、フェアな条件設定に向けた労使の真摯な取組が求められる

    (図表17)。



  

 (3)政策・制度面では、多様で柔軟な働き方を選択できる雇用システムへの

    転換を阻害したり遅らせている法制度等について検討していくことが必要





   ・現行の雇用慣行は、労使が協調して自主的に作り上げたものであるが、それ

    らが円滑に運用されるよう、様々な社会的制度が後押ししてきたという面が

    ある。新しい雇用システムに転換する場合、従来の政策・制度の修正を行う

    ことが必要になる(図表18)。



   ・不合理な雇用慣行により問題が生じており、市場に任せていても是正されな

    い場合や是正に時間がかかる場合には、今後の経済社会の姿を展望しつつ、

    政策的な方向付けを行うことが必要になる。従来の政策や制度の中で、環境

    変化に対応した経済社会の構造転換を阻害しているものがあれば、それを修

    正することも必要である。また、現在判例に任されているルールについては、

    新しい雇用システムに転換するとすれば、個々の労働者ごとに契約や雇用保

    障、処遇のあり方も多様になってくることから、労使の予測可能性を高める

    ためにも、法令によるルールの明確化を検討する必要がある。



   ・多様で柔軟な働き方を選択できる雇用システムに移行するためには、政策・

    制度面において次の課題を検討することが必要である。





    a.性別や年齢にかかわらない能力発揮の機会の確保

      募集採用に当たっての年齢差別の廃止や男女間の雇用機会均等について

     今後一層徹底を図る。



    b.労働契約・解雇法制のあり方の検討

      労働者が労働時間や就業場所、仕事に関する自己選択の自由度を重視す

     る場合には、企業は雇用保障や賃金等について柔軟に対応することができ

     るようにする必要があり、そのような観点に立って、労働契約・解雇法制

     のあり方の検討が求められる。(図表19)。



    c.労働条件変更のあり方の検討

      労働条件の変更に当たっては、社会全体として公正な処遇等のあり方を

     実現できるよう、より柔軟な変更が可能になることを視野に入れた検討を

     行う必要がある(図表20)。



    d.パートタイム労働者等の処遇のあり方等の検討

      パートタイム労働者等の処遇のあり方については、働きや責任に応じた

     均衡処遇を目指すべきであり、そのルール化について具体的な検討が求め

     られる(図表21)。



    e.外部労働市場の整備

      多様で柔軟な働き方は雇用の安定性低下につながるとの慎重な意見があ

     ることを踏まえると、能力評価や需給調整システムの整備が重要である。



    f.社会的な職業教育訓練機会の充実

      長期継続雇用を前提としない労働者層が拡大するとすれば、そうした労

     働者が企業の外で能力開発を行う取組を支援する仕組みを整備することが

     必要である。



    g.社会保険、税制のあり方の検討

      社会保険の適用拡大など、税制や社会保障制度のあり方を見直すことが

     必要である(図表22)。

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