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(別紙)



     労働分野における人権救済制度の在り方について(報告)



                           平成13年12月20日

                    労働分野における人権救済制度検討会議



 平成13年5月25日、人権擁護施策推進法に基づき法務省に設置された人権擁護

推進審議会は、法務大臣に対し、「人権救済制度の在り方について」答申(以下「答

申」という。)を行った。

 答申において、同審議会は、我が国における人権侵害の実情や救済にかかわる制度

の状況を踏まえ、人権侵害一般について、政府から独立した人権委員会(仮称)を中

心とする新たな人権救済制度の創設を提言したが、その一方で既に被害者の救済にか

かわる専門の機関が置かれている分野においては、当該機関との適正な役割分担を図

る必要があることを指摘した。

 労働分野の人権侵害については、従来から労働基準法や男女雇用機会均等法の施行

等を通じて厚生労働省が中心的な役割を果たしてきたところであるが、答申に基づき

新たな制度を設ける中で、厚生労働省がいかなる役割を果たすべきか等について検討

を行うことが必要である。

 本検討会議は、厚生労働大臣の参集を受け、本年10月から5回にわたり議論を重

ねてきたが、今般、下記のとおり、これまでの議論の集約を行った。





                   記



1 労働分野の人権侵害について、答申を踏まえ、他の分野における救済制度と同等

 の救済制度の整備を図ることが必要である。



2 答申においては、雇用の領域を含む社会生活における一定の差別的取扱い、セク

 シュアルハラスメント等の人権侵害について、より実効性の高い「積極的救済」を

 図る必要があるとして、調停・仲裁、勧告・公表、訴訟援助等の救済手法の整備や

 実効的な調査権限の導入が提言されている。

  一方、労働分野においては、既に労働基準法、男女雇用機会均等法等に基づいて、

 人権救済にかかわる制度が整備されてきたところであり、また、労働分野における

 人権救済制度の適切な運用に当たっては、労働法制、労使慣行、労務管理実務等に

 関する知識を有する職員が必要不可欠である。

  これらを総合的に考慮すると、労働分野における「積極的救済」については、訴

 訟参加等人権委員会が行うことが相当であるものを除き、厚生労働省がこれを担当

 することとし、既存の機関や知識・経験の蓄積の活用を図ることが適当である。



3 答申においては、新たな人権救済制度を担う人権救済機関は政府からの独立性を

 有する委員会組織である必要がある旨指摘している。

  このため、労働分野の人権侵害についても、救済制度の公平性・公正性の確保を

 図ることは重要であり、個々の事件の調停・仲裁は、都道府県労働局に置かれてい

 る独立性のある紛争調整委員会を活用し、公平性・公正性が保たれるような運営を

 図ることが必要である。



4 人権救済制度の整備に当たっては、利用者に対するワンストップ・サービスの提

 供という観点が重要である。

  相談及び簡易な救済については、事案に応じて、専ら任意的な手法により簡易・

 迅速かつ柔軟な救済を図ることを目的とするものであり、排他的に担当を定めるま

 での必要はないことから、労働分野における人権侵害については、相談者等が厚生

 労働省及び人権委員会のどちらの窓口に行ってもこれらについてワンストップのサ

 ービスを受けられることを原則としつつ、事案に応じて、人権委員会が厚生労働省

 の機関に紹介・引継ぎを行うことができるとするなどの適切な役割分担を図ること

 が適当である。

  

5 以上を踏まえ、労働分野における具体的な救済制度の内容及びその実施機関につ

 いては、別紙のとおりとすることが適当である。

  なお、調停・仲裁の申請、開始の方法等救済の手続については、人権委員会が行

 うものと同一にすべきである。

  また、救済手続のうち訴訟参加については人権委員会が行うこととなるが、この

 場合には、厚生労働大臣が人権委員会に対し必要な資料等を送付するなど行政の責

 任において十分な引継ぎを行い、当該手続の利用者に対して余計な負担をかけない

 ようにすることが必要である。



6 積極的救済の対象として禁止される差別の範囲を明確化することは、差別的取扱

 い等の未然防止のための啓発に有効なものである。このため、これら範囲の明確化

 に努めることが必要である。

  なお、積極的救済の対象としての差別的取扱いとは、合理性のない不当な差別的

 取扱いをいうものであり、男女雇用機会均等法に基づくポジティブ・アクションや

 障害者の雇用を促進する障害者雇用率制度に基づく措置がこれに含まれないことは

 当然である。



7 都道府県労働局において人権救済制度にかかわる職員の研修を図るとともに、紛

 争調整委員会の運営について地方労働審議会に報告するなど、制度の適正な運営を

 図ることが必要である。



8 人権侵害の未然防止という観点から、労働分野における人権啓発を積極的に実施

 することが必要である。



9 労働分野において他の分野における人権救済制度と同等の救済制度の整備を図る

 ことに伴い、男女雇用機会均等法に基づく調停等これと内容が重複することとなる

 制度については、その範囲において必要な法律の規定の整備を行うことが適当であ

 る。



10 なお、労働者側委員から、調停、仲裁などの救済手続は独立性の高い国家行政組

 織法第3条の委員会で行うべきであり、紛争調整委員会で行うことでは他の分野に

 おける救済制度と同等の救済制度とはいえないので反対であるという意見が表明さ

 れた。

  また、労働者側委員から、差別的取扱いの差別理由である「人種等」の中に年齢

 による差別が含まれていないことは問題であることという意見が表明され、これに

 対し、使用者側委員から、救済制度の対象範囲は答申のとおりとすべきであり、年

 齢による差別を加える必要はないという意見が表明された。

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