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(別紙)







            労使関係法研究会報告の概要







1 労働委員会及び個別的労使紛争の現状について

(1)労働委員会の現状

   労働委員会は、制度発足以来、労働争議及び不当労働行為審査事件の解決に

  重要な機能を果たしてきた。しかし、近年は労働争議の調整と不当労働行為の

  救済の双方において、事件数の減少、事件内容の変化(特に実質的な個別的労

  使紛争の増加)、手続遅延状況の悪化、行政訴訟での重要命令の取消等の現象

  が生じており、労働委員会制度は制度の再点検の時期に来ているといえる。

(2)個別的労使紛争の現状

   他方、近年においては、給与・退職金の不払や解雇・退職をめぐる紛争を始

  めとして、個別的な労働者の苦情・紛争が増加し、これらが労働関係の民事裁

  判事件や労政主管事務所等の行政機関の相談件数の大幅な増加傾向となって現

  れている。このような個別的労使紛争の増加傾向は、企業の国際的競争と高齢

  少子・成熟社会への対応や労働者の多様化・個人主義化等の社会経済・労働市

  場の構造的変化を反映したもので今後も継続する可能性が大きい。また、苦情

  ・紛争内容も成果主義賃金制度における評価の問題、雇用柔軟型労働者の苦情

  ・不満など、多様化し、複雑化することが予測される。



2 個別的労使紛争処理制度の整備について

  個別的労使紛争処理制度については、これまでのところ、裁判所において権利

 義務関係の判定や和解を行うほか、一部都道府県の労政主管事務所、労働委員会、

 都道府県女性少年室及び労働基準監督署、さらに弁護士団体や労働団体等など公

 的・私的に多様な機関がそれぞれの特色を生かした多種多様な相談やあっせん等

 のサービスを提供している状況といえる。しかし、今後増加し多様化し複雑化し

 ていくと予想される個別的労使紛争の処理制度としては、総合的に見て整備され

 ているとはいいがたい。

  個別的労使紛争については、とりわけ、基本的サービスとして、ワン・ストッ

 プ・サービス(あらゆる苦情・紛争について相談に応じ、問題点や解決方法・機

 関等について情報を提供してくれるサービス)としての相談機能と簡易なあっせ

 ん機能の整備の必要性が高く、これらについて公的機関によるサービス体制を整

 えるべきである。

 

3 個別的労使紛争処理制度の在り方について(別添1参照)

  情報提供・相談のワン・ストップ・サービスや簡易なあっせんサービスなどを

 中心とした公的サービスの制度整備について、本報告書においては、労働委員会、

 労政主管事務所、裁判所及び労働基準監督署などの組織を改組発展させる形で、

 1労働委員会活用案、2「雇用関係委員会」案、3労政主管事務所活用案、4民

 事調停制度活用案、5都道府県労働局案、6「雇用関係相談センター」案など様

 々な選択肢を提示した。

  これらは、それぞれが長所とともに課題や困難を有し、また、相互に組合せの

 可能性や必然性を有するものもある。今後はこれらの選択肢を含めて、個別的労

 使紛争処理制度の在り方について、関係者が早急に活発な議論を行い、改革の要

 否と内容を決定すべきである。

 

4 団体的労使関係に関する労働委員会制度の今後の在り方について

  (別添2参照)

  団体的労使紛争解決機関としての労働委員会については、審査遅延などの問題

 状況にある不当労働行為救済の任務について十分な機能の回復を図ること及び労

 働争議の調整をも含めて、今後の労使紛争の変化へ適切に対応していくことが課

 題である。このためには労働委員会の審査体制における専門性の再構築が必要で

 あり、そのための努力が求められる。また、再審査命令の取消訴訟についての審

 級省略や労働委員会組織の見直しなどの制度的課題も真剣な検討を要する。



5 まとめ

  今日の社会経済、労働市場、労働関係においては大規模な構造的変化が進行し

 ており、関係の法的諸制度についても大幅な改革が必要となっている。この報告

 書で取り扱った個別的労使紛争処理制度の在り方及び労働委員会制度の在り方も

 このような時代の大変化の中での改革問題であり、とりわけ個別紛争処理制度の

 整備は今後の重要な政策課題である。したがって、関係者には、従来の思考様式

 を乗り越えた創造的な取組と決断が望まれる。






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