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(別添)

       短時間労働者の均衡処遇に関するガイドライン案





第4 常用フルタイム社員及び労働組合の方々へ

 

確認1 常用フルタイム社員のあなたはパート社員の働き方をどう見ていますか?



 第2でみたように、パート社員の働く領域は大きく広がっています。常用フルタイ

ム社員として働くあなたは会社のパート社員について、どうとらえていますか。



・ やはり私たち正社員とは別だと思う。労働時間が短いので、補助的な仕事しかで

 きず、時給が低くても仕方がない。



・ 会社の売上げが上がれば、みんなの雇用や収入が確保される。そのためにはパー

 ト社員も含めた全員のモラール向上が不可欠。パート社員も意欲や成果に応じて、

 きちんと処遇すべきだ。



前述したように、従来、常用フルタイム社員が行っていた役割の一部をパート社員が

担うようになってきています。同じ仕事をしているパートが増えていると回答した正

社員が4分の1強存在し、減っていると回答した正社員(10%弱)を上回っていま

す。



 もはや「パートは別、パートは補助的仕事」という認識は必ずしも当てはまらなく

なってきているようです。会社を動かす重要なパートナーとしてパート社員が力を発

揮できるようになることは、常用フルタイム社員にとっても重要なことではないでし

ょうか。

 そのためにあなたが力になれることもあるはずです。



(事例)パート社員の声を聞いてみましょう。



「職場で集会を開くときに、フルタイム社員の方が、わたしたちパートにも声をかけ

てくれました。初めて仲間として認められた思いがします。」(製造業)



「店内のレイアウトを変える際に、パートの意見も聞いてもらえました。売り場主任

も私の提案に熱心に耳を傾けてくれ、結果的に私のアイデアが一部採用されました。」

(小売業)



「お総菜売り場の主任だった正社員の方が急にお辞めになって、店長が私を後任に指

名して仕事を全面的に任せてくださいました。商品を今までより小分けにしたり、お

総菜の種類を増やしたり、張り切って取り組みましたよ。時給も大幅にアップしまし

た。」(流通業)



パート社員がやる気を持って意欲的に仕事に取り組み職場全体に活気が生まれるか、

もてる能力の一部しか発揮せず職場全体に暗い雰囲気が立ちこめるか、あなた自身の

意識や行動によっても大きく変わるのではないでしょうか。

 

確認2 パート社員の処遇についてどう考えていますか?



 でも常用フルタイム社員の意識を変えるだけでは解決できない問題もあります。そ

れはパート社員の処遇の問題です。パート社員の処遇の改善のためには、常用フルタ

イム社員の意識を変えるだけではなく、実際にパート社員の処遇制度を見直す必要が

あります。



(事例)



「わが社ではこのところ正社員がかなり削減され、これまで正社員がしていた仕事を

パートさんが代わってやっています。当然、正社員並みの仕事をしてもらわないと、

我々正社員の方に負荷がかかり、自分の仕事も回らなくなってしまうのですが、彼ら

がもらっている給料の額を考えると強いことは言えません。」(流通業)



「妻がスーパーのパートで1日6時間働き始めて10年になるのですが、時給が

850円。入社時から50円アップしただけです。売り場責任者で責任もあるのに、

これではひどいのではないかと思います。疑問に思って自分の会社のパートさんの時

給についても聞いてみたら、妻の状況と大して違わず、ショックを受けました。それ

以来、パートさんの働き方や時給についても、機会があれば上司に意見を言うように

しています。」(小売業)



「人事部に異動になってパートさんの時給があまりにも低いことを知りました。自分

と同じ仕事をしているのに、時給換算だと私の半分くらいなのです。パートさんに仕

事を頼むのが何だか申し訳なくなってしまうと同時に、給与の高い自分は今までより

もっと頑張らねばと思いました。」(製造業)



 平成13年厚生労働省「賃金構造基本統計調査」によると、女性正社員と女性パー

ト労働者の1時間当たり所定内給与は、正社員を100とした場合に、パート労働者

が66.4と開きがあります。賞与を含めると55.5と、格差はさらに大きくなり

ます。また、平成11年の厚生労働省「就業形態の多様化に関する総合実態調査」に

よると、賞与や退職金制度の適用を受ける正社員が9割を超えるのに対してパート労

働者は、賞与支給制度の適用を受けるのが4割強、退職金制度の適用が1割弱となっ

ています。

 さらに、平成13年の21世紀職業財団の調査によれば、自分と同じ仕事に従事し

ているパートが増えていると答えた正社員のうち、5割がパート処遇改善の必要性を

感じています。



 事例にもあったように、パート社員が積極的に仕事に取り組んでくれるかどうかに

よって、常用フルタイム社員の業務の負担は大きく違ってきます。常用フルタイム社

員にとってパート問題は「自らの問題」でもあるのです。実際、それを感じているか

らこそ、前述のようにパート社員の処遇改善が必要と考える常用フルタイム社員が多

いのでしょう。

 あなたの職場に労働組合が組織され、あなたが組合員であるならば、労働組合に対

してパート社員の処遇の改善に取り組んでいくことを求めることも重要ではないでし

ょうか。

 

労働組合がパート問題を自らの問題として取り組む姿勢を



 平成13年厚生労働省「労働組合基礎調査報告」によると、パート労働者の組合組

織率は2.7%に止まっていますが、パート問題を自らの問題ととらえるならば、正

社員の組合員を中心として構成されている労働組合もパート労働者の労働条件の向上

に一緒に取り組んでいくことが重要と考えられます。



(事例)



「かつて正社員として勤務し、組合でも活動していたときは、パートのことはほとん

ど念頭にありませんでした。『家計補助の人たち』くらいの認識でした。不幸にも会

社の業績が悪化し、早期退職に応じて退職しました。新しい就職先でパートになって

みて、はじめてパートの気持ちがわかりました。職場の正社員や労働組合が、パート

を同じ労働者としてとらえてくれたら大変心強いのですが、・・・」(製造業)



「当社の組合にはパート労働者の大半が加入しています。最初は組合内部で正社員と

パート労働者の利害調整が大変なのではないかと危惧していたのですが、全くそんな

心配はありませんでした。組合員として一緒に労働条件向上に向けて活動していく中

で、職場内の一体感も強まりましたし、生産性も向上したと思っています。」(流通

業)



「パートさん5人が、会社から解雇を通告されたと言って私たちの組合に相談に来ま

した。そのパートさんたちは組合員ではありませんでしたが、使用者が労働条件をき

ちんと説明することは職場全体にとって大切なことだと思い、使用者にパートさんに

対する説明会を開いてもらいました。結果的には、解雇は撤回できなかったのですが、

パートさんたちは納得して辞めていかれました。『やっぱり組合って強いですね。』

の言葉が忘れられません。」(小売業)



 労働組合のナショナルセンターである「連合」も以下のような考え方を打ち出して

います。

「就業形態が多様化する中で、パートや派遣、契約労働者をメンバーシップから除外

するならば、企業別労働組合は長期継続雇用を典型とする労働者の利益しか守れない

組織に堕す恐れがあり、結果として典型労働者の利益さえ危うくすることにもなる。」

(「21世紀『ニュー連合』の役割と行動」)



 ただ、ことはパート社員の処遇問題に止まりません。第2でもみたように今の常用

フルタイム社員の処遇が年功的な場合は、それにパート社員の処遇を合わせろと言わ

れても、労務コストの面等から困難との見方もあります。現在、常用フルタイム社員

の処遇を能力や成果に応じたものに見直していく流れがありますが、こうした流れの

一環として、パート社員の処遇についても見直していくことが重要ではないでしょう

か。パート社員のみならず、常用フルタイム社員の働き方や処遇も含め、総合的な雇

用管理の見直しに向けた労使間の率直な話合いが望まれます(第2 パート社員を雇

用する経営者の方々へ「常用フルタイム社員の働き方や処遇のあり方も含めた雇用管

理の見直しを」参照)。

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