タイトル:日本企業の生産性、労働者の能率は高く評価。 しかし、解雇の不安は少なくない。 −平成10年度「海外労働事情調査」の結果− 発 表:平成11年9月24日(金) 担 当:労働大臣官房国際労働課 電 話 03-3593-1211(内線5139) 03-3502-6678(直通)
労働省では、昭和62年から、(財)日本ILO協会への委託により「海外労働事情調 査」を実施しており、このほど、平成10年度の調査結果がまとまったので公表する。 調査の概要 1.調査の目的 海外広報、国際交流・協力等をより積極的かつ適切に実施するために、我が国の 労働事情に対する諸外国の認識、関心等の基礎資料を収集、分析すること。具体的 には、労働に関する一般国民の対日認識とその背景となるその国の企業の経営、労 務管理等の状況を国ごとに調査する。 2.調査対象国 カナダ、スウェーデン、フランス、ポーランド及び中国の5カ国 3.調査方法 (1)一般国民調査 各国の一般国民(18歳以上)に対し、平成10年10月から12月にかけて実施した。 調査対象数は各国とも500人で、調査方法は、カナダ、スウェーデン、フランス は電話面接調査、ポーランド、中国は訪問面接調査によった。 (2)企業調査 各国企業の人事担当責任者に対し、平成10年10月から12月にかけて実施した。 調査対象数は各国とも100社で、業種では@製造業、A非製造業、従業員規模で は@50人未満、A50〜299人、B300人以上で均等割当を行った。 4.調査結果のポイント 〔日本的雇用慣行等に対する各国の認識〕 1 企業関係者の間では日本企業の雇用保障に対する努力は広く認識されているもの の、国民調査では「日本では労働者は解雇の不安は少ない」との認識については不 同意が同意を上回っている。しかし、「日本の労働者は会社をよく変わる」との認 識は各国とも低く、引き続き終身雇用が一般的であるとみられている。 2 日本企業の賃金の判断基準としては、仕事の成果、能力等、責任の大小等仕事の 実績に関わる要素が重視されると認識されており、日本的雇用慣行とされる年功賃 金体系の要素である年齢、勤続年数を重視しているとの見方はあまり多くない。 3 日本では企業の教育訓練はよく行われており、労働者は能率、意欲が高いと評価 されている一方、いまだ残業も多いと認識されている。 〔各国における労働観〕 4 各国の労働観をみると、仕事を通じた社会への貢献、仕事のやりがいが重視され ている。また、出世のためには多少つらいことも我慢し、一旦入社したからにはで きるだけ長く勤めるべきだとしている。家庭や余暇よりも仕事を優先することにつ いては、中国においてのみ同意が不同意を上回っており、他の4カ国と逆転してい る。 収入が若干減っても労働時間が短くなる方がよいとする意見については、フラン スでは同意する者が多く、カナダでは拮抗、他3カ国では不同意の者が多くなって おり、特に中国、ポーランドでは不同意する者の割合が高い。 〔各国企業の労務管理等〕 5 各国企業においては、良質な労働力の確保、労働者の生産性向上等が共通した課 題となっている。 賃金の判断基準としては、仕事の成果、能力、責任の大小、勤務態度等仕事の実 績に関わる要素が上位にあげられている。こうした企業の姿勢は国民の認識とも一 致している。 また、雇用調整への対応策としては、残業時間の削減、臨時雇用者の解雇、ワー ク・シェアリングが上位にあげられている。