企業調査 1.対日認識 (1)日本との関係(現状と今後の方向性) 現在日本との関係は「特にない」とする企業は、ポーランドで90.1%、フラン ス80.0%、カナダ74.8%、中国62.3%、スウェーデン60.0%と多数を占め、今後 も日本との関係を具体的に考えていない(特にない)とする企業はカナダ(81.6 %)、フランス(71.0%)、ポーランド(67.6%)で多数を占める。 現在「日本企業と取引・技術提携している」割合が比較的高いスウェーデン (32.0%)、中国(23.7%)では、今後も「取引・技術提携したい」と考える企 業割合が高い。特に中国では、「日本市場に進出したい」「日本の情報収集に努 めたい」とする企業も4割以上みられる(図9)。 (2)日本に対する好感度 企業の対日評価は2つに分かれる。一つは、好意層(「非常に好き」と「どち らかといえば好き」の合計)の多いグループであり、スウェーデン(64.0%)、 フランス(60.0%)、ポーランド(53.1%)が該当する。一方は、「どちらでも ない」「わからない・無回答」と意見留保の多いカナダ、中国である。しかしな がら、非好意層(「どちらかといえば嫌い」と「非常に嫌い」の合計)はいずれ の国においても少数となっている(図10)。 (3)日本の労働事情に関する認識 「日本企業の生産性は高い」は各国共通して広く認識されている。「残業は多 い」では中国で、「意欲が高い」ではフランスで不同意率が比較的高くなってい るが、これは一般国民対象の調査結果の動向とも符合する。 雇用に関する認識では、一般国民調査では「雇用の不安が少ない」に否定的な 見方がなされていたのに比べ、企業の人事担当者からは「雇用保障努力」への評 価が高くなっている。一方、「会社をよく変わる」の同意率は各国とも極めて低 い。(ここでは、カナダにおいて回答留保が多数みられる点を勘案しつつ分析を 試みている。)(図11) (4)日本企業の賃金の判断基準 各国共通して「仕事の成果」「仕事をこなす能力」などの仕事の実績に関わる 要素が上位に挙げられている。日本的雇用慣行の特徴と言われる終身雇用、年功 序列賃金の要素である「勤続年数」「年齢」はあまり高くない。また、「公的な 職業資格」「学歴」も各国で上位に挙げられている。これらの結果は一般国民調 査の結果とほぼ一致している(図12)。 2.企業の組織運営・経営労務・管理の現状 (1)経営理念 「商品やサービスの安定供給を重視する」が5カ国すべてで高い回答率を得て おり、カナダ、スウェーデン、ポーランドでは最重視項目となっている。フラン スでは「従業員の雇用の安定、従業員の福祉の向上を図る」、中国では「市場開 拓、技術革新など環境適応に努める」が最重要項目となっている。一方、「短期 的な利益を優先する」は各国共通して低い割合となっている(図13)。 (2)意志決定の方針 カナダを除き「トップ主導」が主な意志決定のスタイルであるが、中国とポー ランドではその割合は約6割を占める。一方、カナダでは「組織的な議論の結果 」が50.5%と、「トップ主導」(40.8%)を上回って最も多くなっている (図14)。 (3)経営方針の周知 国ごとに大きな違いがみられる。カナダでは「従業員全体に広く周知されてい る」企業が72.8%と非常に高い割合を占める。スウェーデン、フランスでも「従 業員」はそれぞれ60.0%、59.0%と割合が高いが、同時に「中間管理職まで」も 全体の3分の1みられる。ポーランドでは「幹部のみ」「中間管理職まで」「従 業員全体」がほぼ均等に分散しているが、中国では「経営幹部のみ」の割合が最 も高くなり、前問(2)の傾向と一致する(図15)。 (4)集団と個性 各国共通して「個人の個性を発揮するよりも集団の和を大切にしている」が半 数を超えるが、スウェーデン(73.0%)、中国(68.4%)は特にその割合が高い (図16)。 (5)賃金の判断基準 各国共通して、仕事の実績に関わる要素である「仕事の成果」「仕事をこなす 能力」「責任の大小」「職務態度」が高い回答率を得ている。一方、「年齢」や 「扶養家族人数」などの生活給的な要素はあまり加味されていない。 この傾向は、一般国民調査の結果とほぼ一致している(図17)。 (6)直面している労務管理上の課題 意識されている課題は国によってまちまちであるが、概ね、「良質な労働力の 確保」「労働者の能力開発」「生産性の向上」が高い回答率を示している。 中国では、直面している労務管理上の課題が「特にない」とした企業が0.9% と著しく少なく、市場経済の導入に伴う環境の変化に戸惑う企業の姿が伺える。 各課題に対する問題意識も概して高いが、特に「良質な労働力の確保」(77.2 %)、「生産性の向上」(72.8%)、「品質管理」(71.9%)、「従業員のモラ ール向上」(71.9%)などが大きな課題として認識されている(図18)。 (7)雇用調整への対応策 5カ国全般において「残業時間の削減」「臨時雇用者の解雇」「ワーク・シェ アリング」の回答率が高い。「常用労働者の臨時雇用者への代替」の回答率は概 して低い。 カナダでは「採用の制限」(79.6%)、スウェーデンでは「臨時雇用者の解雇 」「ワーク・シェアリング」(91.0%)、フランスでは「残業時間の削減」「配 置転換」(82.0%)がいずれも高い回答率で1位となっている。「所定内労働時 間の削減」はフランス、カナダで高い回答を得、中国、ポーランドでは比率は低 くなっている(図19)。