タイトル:「1998年 海外労働情勢(海外労働白書)」の概要



発  表:平成11年7月30日(金)

担  当:労働大臣官房国際労働課

               電 話 03-3593-1211(内線5131、5139)

                   03-3502-6678(直通)




 「海外労働情勢(海外労働白書)」は、諸外国の労働情勢全般に関する情報を

整理・分析し、広く提供することを目的として、各国の@経済及び雇用失業情勢、

A賃金・労働時間等の状況、B労使関係の動向等について労働省が毎年とりまと

め、公表しているものである。

 本年は、「第1部 1998〜99年の海外労働情勢」において、98年から

99年初頭にかけての諸外国の労働情勢全般の動向をまとめるとともに、97年

に起こったアジアの通貨・経済危機がアジア諸国に及ぼした社会的影響及び各国

政府の対応についても概観した。また、「第2部 欧米諸国における就業形態の

多様化」では、イギリス、ドイツ、フランス、オランダ及びアメリカを取り上げ

て、女性の労働力化、サービス経済化の進展等に伴う就業形態の多様化について

欧米諸国の動向と背景及び今後の展望についてとりまとめた。





1998年海外労働情勢のポイント





第1部 1998〜99年の海外労働情勢



1 アメリカ、イギリス

 @ 長期の景気拡大により、失業率は低下傾向が続いている。若年者の失業率

  は引続き高水準。

 A 福祉依存から再就職支援へ。アメリカでは「労働力投資法」が成立。イギ

  リスでは、若年者・長期失業者のための再就職プログラムを実施。



2 ドイツ、フランス等

 @ ドイツ、フランスでは、失業率は高水準で推移している。欧州諸国の若年

  者の雇用情勢は引き続き深刻。

 A フランスで、時短を通じた雇用確保を目指す「週35時間労働法」が成立。



3 アジア諸国

 @ 韓国、タイ、インドネシアでは、通貨・経済危機の影響により雇用情勢は

  引き続き悪化。各国政府は、景気刺激策、雇用・失業対策を実施。近隣諸国

  の雇用情勢も徐々に悪化。

 A 中国では、国営企業改革等に伴う一時帰休者の増加問題が今後深刻化する

  恐れ。







第2部 欧米諸国における就業形態の多様化



1 概観



  欧米諸国では、パートタイム労働を中心に就業形態が多様化。ただし、パー

 トタイム比率に幅があるように国により多様化の様相に差異。



 @ 欧米諸国においてはパートタイム労働を中心に、有期雇用労働、派遣労働

  等も増加してきており、就業形態の多様化が見られる。各国ともパートタイ

  ム労働者数の増加傾向がみられ、アメリカを除く4か国については、その雇

  用者全体に占める割合も上昇傾向が続いている。有期雇用労働者や派遣労働

  者は、パートタイム労働者に比べると、まだその規模は小さく、雇用者全体

  に占める割合は低い。また、アメリカでは呼び出し労働者、請負労働者とい

  った就業形態もみられる。

 A もっとも、多様化が進展しているとはいっても、パートタイム労働者の雇

  用者全体に占める割合をみてもオランダの38.3%(97年)からフランスの

  16.3%(96年)と国により幅があるように、各国における多様化の様相には

  差異がみられる。これは、その背景として多様な就業形態に係る各国の法制

  度、雇用政策へのパートタイム労働等の取り組みの程度、各国の雇用失業情

  勢が異なっていること等による。





2 パートタイム労働



  女性の労働力化、サービス経済化の進展とともに、パートタイム労働増加。

 蘭、独、仏では雇用政策においてパートタイム労働を活用。



 @ パートタイム労働者に占める女性の割合は最も高いドイツで87.2%(96年)、

  低いアメリカでも68.0%(97年)と高くなっている。サービス産業に占める

  パートタイム労働者の割合が高くなっており、イギリス、オランダ、アメリ

  カでは40%を超えている。サービス産業では、ライフスタイルの変化に見合

  った営業時間やサービスの需要が生み出されており、営業時間の延長や多様

  化がパートタイム労働者、特に女性の導入を促進している。このように、パ

  ートタイム労働者は、女性を中心に増加してきており、就業形態は、女性の

  労働力化及びサービス経済化の進展とともに多様化が進んできたといえる。

 A 使用者がコストの安い労働を選好することもパートタイム労働進展の要因

  と考えられる。例えば、パートタイム労働に対する社会保障が減免される場

  合では、コストの低いパートタイム労働への需要を高める要因となる。

 B 男性のパートタイム労働者は、各国ともその数は少なく、雇用者に占める

  割合が低いものの、90年代に入ってからは、厳しい雇用情勢を反映してイギ

  リス、フランス、ドイツでは割合に高まりがみられる。

 C 大陸ヨーロッパにおいては、パートタイム労働の失業対策への取り込みも

  みられる。オランダでは、政労使が一致して長期にわたり積極的にパートタ

  イム労働の活用を図っている。フランスも厳しい雇用情勢にかんがみパート

  タイム労働の活用や臨時的な仕事を創出する政策をとっている。ドイツは、

  フランスほどではないものの、高齢者パート法にみられるようにパートタイ

  ム労働力の活用を試みている。

 D 過去においてはパートタイム労働等に若干否定的であった労働組合も、最

  近の深刻な雇用失業情勢を受けて、パートタイム労働者の労働条件向上やパ

  ートタイム労働者の組織化に向けた動きを見せている。





3 有期雇用労働と派遣労働



  有期雇用労働、派遣労働は、パートタイム労働の拡大に比べると小規模。



 @ アメリカ、イギリスでは、解雇についての制限が少ないことから、使用者

  が景気動向に合わせて雇用調整を行いやすいため、有期雇用や派遣労働を選

  好する度合いが低いといった面があると考えられる。

 A ドイツ、フランスでは、パートタイム労働者を含め常用雇用労働者の解雇

  制限が厳しく、使用者が有期雇用労働を選好する動機の一つとはなりうるが、

  活用できる事由が制限されていたり(仏)、期間や契約更新回数についての

  制限(独、仏)等があるため、有期雇用は必ずしも大きくは伸びていない。

  労働者派遣事業についても、概ね自由度は高いと考えられるにもかかわらず、

  現在までのところあまり伸びていない。                

 B オランダでは、パートタイム労働者を含め常用雇用労働者の保護が手厚い

  反面、非常用雇用については規制が少なかったという面もあるため、有期雇

  用、派遣労働もドイツやフランスに比べ多くなっている。





4 労働条件等



  パートタイム労働者等の労働条件の確保について、各国法制に差異。



  賃金についてみると、フランス、ドイツ等においては、職種による産業横断

 的賃金の存在を背景に、パートタイム労働者については比較しうるフルタイム

 の労働者との条件の均等のための措置も図られている一方、アメリカでは市場

 原理に委ねられているなど、各国の扱いは異なっている。一定の場合における

 フルタイム労働者からパートタイム労働者への転換について法律または協約に

 よって定められている例もある。有期雇用労働については、期間や契約更新回

 数の制限があるため、実態的に常用化して雇用されるようなことは生じない仕

 組みとなっている。





5 今後の展望



  経済のグローバル化等多様化を進める要因は強まっていくも、法制、女性の

 労働力化の度合い等は国により差異。今後の動向については、雇用に及ぼす量

 的な面、労働条件という質的な面につき注目される。



 @ サービス経済化の進展、経済のグローバル化と国際競争の激化等の就業形

  態の多様化を進める要因はさらに強まっていくものと考えられる。しかし、

  各国の法制、政府の対策は一様ではなく、また、女性の労働力化の進展の度

  合いも国によって異なっている。さらには、労働市場における規制緩和の動

  きについてもオランダのように既に積極的に進められている国があれば、イ

  ギリスのようにEUの社会政策を取り組むプロセスの中で従来よりも法規制

  が多くなる傾向がみられる国もある。従って、就業形態の多様化については

  各国一様にして進展していくものではないと考えられる。

 A 就業形態の多様化については、各国における雇用政策への活用も含め、雇

  用面に及ぼす量的な動向に加え、その労働条件という質的な面について、ど

  のようにしてその向上が図られていくのか、今後の推移が注目される

 

 第1部 1998〜99年の海外労働情勢

 第2部 欧米諸国における就業形態の多様化

 

「1998年 海外労働情勢(海外労働白書)」要約版につきましては、
労働省ホームページ 情報コーナー(白書情報)]を参照ください。


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