アクティブ・エージングに関する議論のとりまとめ(概要) 1 高齢者の社会参加の現状 (1) 高齢者の雇用・就業の状況 ○ 我が国の高齢者の就業意欲は高く、就業理由は、年齢が高くなるにつれて、 経済上の理由が減り、健康のためや生きがい・社会参加のためが増加する。 ○ 高齢者の希望する勤務形態は、多様化する傾向にある。 (2) 高齢者のボランティア活動等の状況 ○ 高齢者が地域のために行っている活動をみると、「地域の清掃や美化運動」 「地域事業や自治体・町内会の手伝い」「リサイクル運動」の割合が高い。 (3) 高齢者の参加している団体 ○ 高齢者の参加している団体は、「町内会・自治会」「老人クラブ」「趣味の サークル・団体」の順に多く、「社会奉仕団体(ボランティア団体)」は、 5.6%にとどまっている。 ○ 企業退職者が参加している団体は、「退職者の組織(OB会)」が最も多い。 2 アクティブ・エージングをめぐる国際的な動き ○ 1997年のデンバーサミットにおいて、高齢者を社会に依存した無力な存在と して捉えるのではなく、雇用をはじめ様々な形で社会に参加することを目指す 「アクティブ・エージング(活力ある高齢化)」を追求することが確認されて おり、その後のサミットやOECDの会議においてもその重要性が確認されて いる。 3 アクティブ・エージングに関する基本的な考え方等 (1) アクティブ・エージングに関する基本的な考え方 ○ 高齢期における生活を充実したものとするための活動としては、@雇用・就 業、Aボランティア活動・NPO活動、B趣味・レクレーション活動等様々な カテゴリーがある。 ○ 高齢者の社会参加促進策等を検討するに当たっては、個人の価値観が多様化 してきていること、世代によって価値観が大きくことなること等を踏まえる必 要がある。 (2) 社会参加を促進すべき対象 ○ 団塊の世代以前の世代は、仕事一筋で生活してきた人が多く、地域とのつな がりがなく、地域への活動に参加できない人が多くみられるため、当面は主と して、団塊の世代までの企業退職者を念頭に置いて、高齢者の社会参加促進方 策を検討していくことが適当である。 (3) 高齢者の社会参加を促進すべき分野 ○ 高齢者の多様なニーズに合わせ、様々な活動に高齢者が参加できるように受 け皿を用意しておく必要がある。 ○ 今後の急速な高齢化が見込まれる中では、高齢者が地域社会の中で中心とな ることが重要であるから、特に地域社会に貢献する活動への参加を促進するこ とが必要となっている。 4 社会参加を促進するシステム (1) 雇用・就業の促進 ○ 将来的には、高齢者が意欲と能力がある限り年齢にかかわりなく働き続ける ことができる社会を実現していくことが必要である。 ○ 当面は、継続雇用を促進し、企業内において高齢者の知識や経験を活かせる 場を確保すること、短時間雇用など多様な形態による雇用機会を確保すること 等が重要である。 ○ また、雇用だけに限られず、高齢者向けの多様な就業情報ネットワークの構 築やシルバー人材センター事業のような臨時・短期的な就業を促進したり、自 営業を行いやすくするための支援等を行うなど、多様な形態の就業を促進して いくことも必要である。 (2) ボランティア活動・NPO活動の促進 ○ ボランティア活動・NPO活動においては、いろいろな活動形態があり、ま た、住民参加型組織による活動も増えてきている。 ○ 高齢者の社会参加のためのきっかけを提供することが重要であり、情報提供、 入門講座、企業退職後の社会参加について意識啓発が必要である。このために は、企業OB会や労働組合の役割が重要である。 ○ ボランティア活動等を希望する者とボランティア等を必要としている者とを マッチングさせる場が必要であり、この場合にコーディネーターの役割が重要 である。 ○ より適切なマッチングを行うために、ボランティア団体やNPO団体と企業 OB会などボランティア希望者が多数加盟している団体とのネットワークの構 築が不可欠である。 ○ ボランティア活動等への参加促進のためには、ボランティア活動に対する社 会的評価を与えるような社会的風土を醸成することが必要である。 ○ ボランティア団体やNPO団体に対して行う寄付金の控除制度等の税制上の 優遇措置を与えることにより、ボランティア団体やNPO団体の活動資金の収 集を容易にすることが期待できる。 (3) 生涯学習、趣味・レクレーション活動の促進 ○ 高齢者が家に引きこもらずに、簡単に生涯学習や趣味・レクレーション活動 を行うことができるよう建築物や交通機関等のバリアフリー化の推進、高齢者 のニーズに合った様々な生涯学習や趣味・レクレーションの場の提供、施設等 の整備や高齢者の施設利用を容易にすることも必要である。 (4) その他 ○ 企業退職者の社会参加を促進するためには、組織内での肩書き社会からの脱 却を目指し、徹底的な「さん」付け運動を行うなどにより、個人ひいては社会 の意識を変えていく必要がある。 5 今後検討を深めるべき論点 ○ 企業退職者とボランティア団体等の間のマッチングをスムーズに行っていく ための方策については引き続き検討を行っていく必要がある。 ○ また、ボランティア団体やNPO団体は非営利の組織であるが、今後は活動 分野によっては、民間企業との間で競争関係が生じてくる場合がありうる。こ れをどのように考えるか検討が必要である。 ○ 有償ボランティアも拡大してきており、これを法制面も含めて、どのように 位置づけていくか検討を深める必要がある。アメリカにおける謝金(stipend )制度の運用実態や日本での適用可能性について検討していく必要がある。