タイトル:雇用保険部会の中間報告について 発 表:平成11年8月27日(金) 担 当:職業安定局雇用保険課 電 話 03-3593-1211(内線5763) 03-3502-6771(夜間直通)
中央職業安定審議会専門調査委員雇用保険部会(部会長 樋口美雄慶應義塾大学教 授)においては、平成11年6月1日以降、雇用保険を取り巻く状況が大きく変化する 中で、雇用保険制度の在り方について議論を重ねてきた。 今般、その結果を別添「雇用保険の見直しについて(中間報告)」としてとりまと め、8月27日、中央職業安定審議会(会長 西川俊作秀明大学教授)に報告した。 中央職業安定審議会は、本報告を踏まえ、次期通常国会に向けて、雇用保険制度の 見直しについて更に具体的に検討を深めることとし、引き続き雇用保険部会に検討を 委ねた。 これを受けて、9月以降、雇用保険部会において雇用保険制度の在り方について具 体的な検討が開始されることとなる。 (報告の概要) 第1 雇用保険事業の現状 1 雇用保険制度の概要 2 適用給付等の現状 3 雇用保険財政の現状 第2 雇用保険を取り巻く環境の変化 1 少子・高齢化の進展 2 雇用をめぐる状況の変化(労働移動の増加、雇用就業形態の多様化等) 3 失業率の高まり 第3 雇用保険の見直しに当たっての視点 1 基本認識(共通認識) ○ 雇用保険は、我が国労使の長期継続雇用慣行にも支えられ、財政的にも安定 した運営を行ってきたが、現下の厳しい雇用失業情勢等を反映して財政的に危 機的な状況にあることに加え、少子・高齢化の進展、雇用をめぐる状況の変化 など、構造的にも取り巻く状況が今後更に大きく変化することが見込まれ、制 度の安定的運営について予断を許さない状況。 ○ 雇用保険制度としては、こうした環境の激変に的確に対応し、雇用面におけ るセーフティネットの中核として、引き続き安定的に十分な役割を果たしてい くことができるよう、早急に制度の再構築を図ることが必要。 ○ こうした観点から、雇用保険の総合的な見直しを行い遅くとも平成13年度当 初までに必要な収支改善措置を実施しておくことが不可欠な状況にあり、その ための法律改正を次期通常国会で行うことが必要。 2 留意すべき事項(共通認識) ○ 雇用保険を取り巻く状況は、その創設時である昭和50年当時とは背景事情を 大きく異にしており、構造的に大きく変化している。雇用保険は、労働市場を 健全に機能させるためのいわば補完制度として重要な役割を担っているが、労 働需給が悪化している時にこそ、その真価が問われる。こうした観点から、雇 用保険が引き続きその役割を十全に発揮できるよう、しっかりとした理念の下 に再編整理することが肝要。 ○ 雇用保険は、失業時の対応にとどまらず、失業の予防、雇用の継続など、在 職中も含め職業生活の各段階において、幅広い機能を果たしている。しかしな がら、今後、労働移動の増加等が見込まれる中で、労働者の生涯を通じた職業 キャリアの形成を支援するための制度として再整理し、その機能が十分に果た されるようにしていくことが必要。 ○ 今後の雇用を取り巻く様々な状況変化に適切に対処していくためには、雇用 保険が雇用面でのセーフティネットの中核として引き続き十分な役割を果たし ていくことと併せ、労働力の適切な活用といった視点も重要であり、若年者に 偏った雇用指向を改めることも含め労働者募集や人事管理等における企業の主 体的な取組、教育の在り方など、幅広い視点からの取組が必要。また、公的年 金(基礎年金部分)の支給開始年齢が引き上げられていく中で、企業における 定年年齢の引上げも含め、60歳台前半層の労働力需要を高めていくことが重要。 ○ 雇用保険の財政状況や今後の状況変化を踏まえれば、「給付」と「負担の」 両面からの見直しが不可欠。 3 視点 雇用保険制度の見直しに当たっては、1の基本認識及び2の留意すべき事項と ともに、労使をはじめとする関係者の意見を十分に踏まえて対応することが必要 であるが、これまで雇用保険の在り方について、様々な意見が出されているとこ ろ。 (1) 適用の在り方について ○ 雇用就業形態の多様化に対応した一定の適用拡大を図るべきではないか。 等 (2) 失業等給付の在り方について ○ セーフティネットについては、給付水準について単に最低限の生活を確保 できるものとなっているかという視点だけではなく、人々の再挑戦しようと いう意欲を支える積極的なものとなっているかという視点にも立って制度を 構築することが重要ではないか。 ○ 雇用保険制度の抜本的な改革が必要であるとしても、現下の厳しい雇用失 業情勢下では混乱を招くおそれがあることから、失業給付については、当面 現行の水準を維持しつつ、むしろ給付期間の大幅延長や各種助成措置の維持 を図るべきではないか。 ○ 現行の収支状況や今後の環境変化を考えると、安易に負担の引上げで対応 するのではなく、まずもって給付の内容を抜本的に見直すべきではないか。 ○ 労働移動の増加等の状況変化を踏まえつつ、モラルハザードに留意し、本 当に必要としている人、困っている人に対して必要な給付がなされるという ことを徹底すべきではないか。 等 (3) 三事業の在り方について ○ 高齢者雇用対策、能力開発対策等の充実を図るべきではないか。 ○ 各種助成金の整理合理化を図るべきではないか。 等 (4) 負担の在り方について ○ 積立金の大幅取崩しなど、保険料率を暫定的に引き下げた当時とは前提が 大きく異なってきているのではないか。 ○ 給付の最大限の効率化努力の後に、それとパッケージで保険料率の見直し がなされるべきではないか。 ○ 保険料率を引き上げるのであれば、国庫負担率も引き上げるべきではない か。 等 4 今後の対応 現時点では基本的認識においては関係者が共有しあう部分もあるが、個別の検 討項目においては、関係者の意見に相当程度の乖離が見られ、中央職業安定審議 会(本審)から改めて検討指示を受けた上で、今後更に具体的に検討を深めるこ とが必要。