第9次雇用対策基本計画(案)の概要 〜今後の労働市場・働き方の展望と対策の方向〜 雇用対策基本計画は、雇用対策法に基づき、雇用の創出・安定や、労働者の就業 能力の向上等について、基本的な施策を定めるもの (今次計画の期間は、1999年から21世紀初頭までの10年間程度)
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(今次計画の課題) 労働市場の構造変化に的確に対応して、積極的に雇用の創出・安定を図り、 人々の意欲と能力が活かされる社会の実現を目指すこと 完全失業率については、できる限り低くするよう努める |
(今次計画の重点) 第1は、経済・産業構造の転換に的確に対応して、雇用の創出・安定を図ること 第2は、個々人の就業能力を向上させるとともに経済社会の発展を担う人材育成を推進 すること 第3は、人々の意欲と能力が活かされる社会の実現を目指すこと 第4は、国際的視野に立って雇用対策を展開していくこと |
◎ 以下のような具体的施策の強力な展開を図る。 1 雇用の創出・安定 政府全体で、新事業の創出、良好な雇用機会の創出のための支援に取り組むと ともに、新しい産業への円滑な労働移動への支援の強化を図る ・ 民需主導で経済成長を維持することが必要であり、構造改革に積極的に取り 組みつつ、機動的な財政、金融政策の実施など適切な経済運営に努める ・ 規制改革による新規事業創出の機会の拡大等雇用創出のために必要な環境の 整備 ・ 中小企業における雇用機会創出のための支援、新規開業支援、起業家支援、 NPOの活用、政労使一体となった雇用創出・安定の取組の推進等、新規事業 展開等による雇用創出を推進 ・ 成長分野における雇用創出の推進 ・ 国、地方公共団体による臨時応急の雇用・就業機会の創出 ・ 人材移動特別助成金の活用等による失業なき労働移動の支援 ・ 景気循環に対応した雇用の維持・安定対策の実施 ・ 介護分野における雇用創出・労働力確保対策 2 経済社会の発展を担う人材育成の推進 労働移動の増加が見込まれる中で、企業内部だけでなく企業外でも通用する能 力を修得できるよう個々人の就業能力の向上に努める ・ 労働者の自発的な職業能力開発のための環境整備 ・ 労働者の就業能力(エンプロイアビリティ)の向上を図るため、職業能力を 評価できる制度の整備を図ることが必要 ・ 労働者の職業能力開発に対する企業内の支援体制の整備等事業主が行う職業 能力開発の推進 ・ 産業構造の変化等に的確に対応した機動的かつ効果的な公共職業訓練の推進 3 労働力需給調整機能の強化 労働者の幅広い職業選択が可能となり、失業期間が短くなるよう官民一体とな った労働力需給調整機能の強化を図る ・ 民間労働力需給システムの整備、民間の職業紹介機関との連携、協力 ・ 公共職業安定機関の情報提供、カウンセリング・職場体験機会提供の機能の 強化 4 高齢者の雇用対策の推進 今後、我が国の経済社会の活力を維持するためには、できるだけ多くの高齢者 が社会を支える側へ回ることが重要 ・ 将来的には、意欲と能力がある限り年齢に関わりなく働き続けることができ る社会を実現 ・ 従来の人事管理制度の見直し等を行いながら、今次計画期間内において、65 歳に向けて定年年齢を引き上げていく ・ 当面は、再雇用による継続雇用、あるいは、他企業への再就職という方策も 視野に入れ、事業主に対する各種指導・援助を行いながら、何らかの形で65歳 まで働き続けることができることを確保 ・ シルバー人材センター事業の発展拡充や社会参加の促進 5 若年者の雇用対策 中長期的に構造的失業の増加を抑制するためには、若年者の適切な職業選択、 円滑な就職促進を図ることが重要 ・ 若年者の能力向上、高等学校における専門教育の充実等、学校教育も含めた 若年者対策の推進 ・ 若年者の職業意識啓発対策、新卒者、未就職卒業者、早期離転職者に対する 就職支援の実施 6 個人が主体的に働き方を選択できる社会の実現 個々人が主体的に行動できる社会を目指すとともに、多様な働き方を選択でき る環境整備を目指す ・ 雇用の分野における男女均等取扱いの確保対策の充実・強化、女性労働者の 能力発揮促進のための積極的取組(ポジティブ・アクション)の推進、真の男 女平等の実現に向けた取組の推進等、男女雇用機会均等確保対策の実施 ・ 育児・介護を行う労働者が働き続けやすい環境整備の推進、育児・介護等に より退職した者のための再就職対策の拡充及び再就職後の能力発揮促進のため の支援等、仕事と育児・介護との両立支援対策の実施 ・ パートタイム労働対策の推進、在宅就労対策の推進、派遣労働者が広範な分 野において安心して就業できるための制度運営等多様な働き方を可能とする環 境整備 7 安心して働ける社会の実現 労働者のゆとりのある生活の実現を目指すとともに、健康で安心して働けるよ うセイフティ・ネットの整備を図る ・ 個別労使紛争処理対策の検討 ・ 労働条件の明確化と法定労働条件の履行確保 ・ 雇用保険の見直し ・ 週40時間労働制の遵守の徹底、年次有給休暇の取得促進、所定外労働の削減 等による労働時間の短縮と、自律的、創造的かつ効率的な働き方の実現 ・ 労働災害防止対策の推進、高齢化の進展、産業構造の変化等を踏まえた労働 者の健康確保対策の推進 ・ 中小企業労働対策の総合的な推進 ・ 確定拠出型年金制度の導入に向けた取組の推進、勤労者財産形成制度の充実 、中小企業退職金共済制度の普及及び制度の安定的運営、中小企業勤労者総合 福祉推進事業の推進、勤労者のNPO活動、ボランティア活動等社会活動参加 のための環境整備 8 特別な配慮を必要とする人達への対応 すべての人が、意欲と能力に応じて働ける社会を実現 ・ 障害者雇用率制度の厳正な運用、職業リハビリテーションの充実、福祉等と の連携等による総合的な障害者雇用対策 ・ 日雇、ホームレス対策 9 国際化への対応 雇用問題は国際的な取組が必要な重要課題であり、また、国際的な人の移動が より活発化することが今後とも予想されることから、国際社会の変化に雇用政策 の面からも十分対応することが必要 ・ 国際協力等の推進、外資系企業対策、企業の海外進出対策 ・ 専門的、技術的分野の外国人労働者の受入れをより積極的に推進 ・ いわゆる単純労働者の受入れについては、我が国経済社会や国民生活に多大 な影響を及ぼすこと等から、国民のコンセンサスを踏まえつつ、十分慎重に対 応 (参考)2010年頃の完全失業率の見通し 本計画期間においては、労働市場が大きな構造変化に直面する中で、労働力需給 のミスマッチが拡大し失業がさらに増大する可能性。 こうした中、2010年頃の完全失業率は3%台後半〜4%台前半と見込まれるが、 適切な経済運営に努め、持続的、安定的な経済成長の実現を図るとともに、新規雇 用機会の創出、職業能力開発や職業能力評価の充実、労働力需給の調整機能の強化 を図ること等により、できる限り低くするよう努める。